今から君を守るのに理由が必要ですか・・?(仮)

綾瑪 東暢

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やっぱりこの学校は

再会は別れ

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 「直木なおき!」

 抱きつかれ、おかあさんはワタシを離さない。顔を上げると奥に知らない男がワタシにお辞儀をした。家の扉は開けっぱなしで、急いで来たことがわかる。

 「おかあさん。」
 「なに?直木。」
 「もう行かないと。」
 「また会えるよね?会ってくれる?」
 「ボスに聞かないと。」
 「じゃあ、元気でね。直木。」
 「おかあさんも。」

 人の温もりが消えていく。おかあさんの暖かさが体から抜けた。

 「おかあさん。なんでワタシにおかあさんと言う漢字を教えてくれなかったの?」

 「直木が私を呼ぶおかあさんって言い方好きなの。幼くて。だから、私は貴方に教えなかった。」

 「表記の違いだけなのに」
 「そうね。でも、私には分かるわ。だってお母さんだもん。」
 「また私をおかあさんって呼んで。貴方に呼ばれたらどこにいたって駆けつける。約束よ。」

 小指と小指を重ねる。おかあさんは『指切った』と声に出して言う。

 「直木。今度は約束破らないよ。」





 「うん!」



 これが涙か。ワタシは初めて涙を流した。悲しかったのかな?嬉しかったのかな?分からないけど、ワタシは泣いた。




 おかあさん。おかあさんは約束、守れない。もう。守ってくれない。


 「お、おかあさん!」


 「お母さん!」


 やっぱり表記の違いだけ。



 「おかあさんの方が呼ばれて嬉しいわ。」


 「おかあさん!」
 

 「お母さん!」

 「またね!直木!」

 「お母さん!!」

 おかあさんはワタシに背を向けて奥にいる男の元に行く。
 男の胸を借りてきっと泣いている。声を殺して泣いている。

 男はワタシを見てもう一度お辞儀をした。

 家の扉を見て首を横に振る。そして、おかあさんの背に手を回して一緒に家の中に消えていった。

 ワタシはまた残された。置いて行かれた。

 おかあさん。おかあさんは今幸せ?

 ワタシは幸せじゃない。


 「助けてよ。お母さん。」


 やっぱり。守れない。きてくれない。



 「嘘つき」
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