今から君を守るのに理由が必要ですか・・?(仮)

綾瑪 東暢

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最後の選択

この学校は地獄だ

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 七宮しちみやの退学が決まったのは文化祭の前の日だった。最後の文化祭は参加させてあげようと言う慈悲だった。退学を進めたのは兄の七宮こうだ。そして文化祭最後の日に2人に謝りに行くことを勧めたのも晃自身であった。

 「弘人ひろと。僕を恨んでも良い。恨んでもいいから神瀬かみせ君達に謝りに行きなさい。」

 「晃兄。俺を退学にしてくれてありがとう。このまま男高にいたくなかったから。謝りに行ってくる。八重やえがさ。『七宮。明日神瀬君家に行くの?』って聞いてきて『僕も謝りたいことがありから一緒に行く』って。晃兄。心配かけた。色々、迷惑もかけた。」

 「うんん。僕はなんにもできてない。退学した後が1番大変だよ。お母さんになんって言われるか・・。」

 「晃兄。心配しないで。」

 弘人は晃の手を取って、握った。

 「僕は大丈夫だから。それより晃兄はちゃんと智弘ともひろを見てあげて。俺のせいで、智弘は多分。辛い思いしてると思うから。」

 「分かった。」

 弘人は晃の手を離した。
 
 「先生は忙しいでしょう。帰った帰った。」
 
 外まで見送る。バイバイと手を振る。

 自分の寮まで戻ると弘人は壁に寄りかかりそのまま座り込んだ。




 謝りに行って、寮に帰って来た七宮は扉の前で立ち止まった。
 「バッカだな。俺は。退学。退学か。電話しておくか・・。」
 弘人はスマホを取り出して母親に電話をする要請をした。ものの数分で要請が承諾され、母親に繋がる。コールが2回、3回と待ってる時間が長く感じる。
 『もしもし。七宮です。』
 「お、お母さん。」
 『弘人?』
 「うん。」
 『どうしたの?久しぶりね。』
 「元気そうだね。」
 『もちろんよ。貴方達が。』
 「ッ。」
 『それでどうしたの?男高は電話できる時間が短いんでしょう。さっさと要件話しなさい。』
 「俺っ。たい・・
 『・・ちょっと、ちょっと待って。弘人。お父さんが』
 電話の向こうで何かがあったみたいで、父親の声が微かに聞こえる。
 「お母さん?」
 『弘人!凄いわね!』
 「えっ?」
 『今さっきお父さんのメールに研究員として男高に残ることが決まったって。名誉なことよ!さっすが私たちの子ね!』
 「待って、待って!」
 『なによ。嬉しくないの?』
 「だって俺、退学になったって電話しようと」
 『退学って生徒をってことじゃないの?』
 「そんなはず・・」
 『でも、残れるんだから良かったじゃない。』
 「お母さん!」
 『それじゃあ切るわよ。晃と智弘にもよろしくね。ふふ。みんなに自慢しないと』
 「お母さん!」

 とっくに切れているスマホに向かってお母さんと呼ぶ。

 「どう言うことだ?」 

 とにかくと部屋の荷物を片付けて寮を出た。
 「研究員?・・いや、俺はもう男高には」

 男高を出るため校門まで歩きながら呟く。

 めちゃくちゃ久しぶりな校門。受付場があり、近づいていく。
 「あの。七宮弘人と言います。退学になったんですが・・」
 「あぁ七宮君ね。聞いてるよ。ちょっと待ってね。おーい!」
 受付員が奥に声をかける。奥から「はいはいー」と軽めの返事が聞こえてきた。
 「七宮君。場所案内してあげて。」
 「おー。この子が~。よしっ!お姉さんに着いてきて。」
 「お姉さん?」
 「私、男高で唯一の。なんでここにいるかはご想像にお任せしまーす。」
 「はぁ、はぁ。」
 「七宮クン~。もしかして本当に退学できるって思ってる?」
 クススッと気味の悪い笑い方をしながら目の前の女は言う。
 「どう言う・・研究員のこと・・なのか?」
 「あっ、知ってるんだ~。研究員って何をする人だと思う?」
 「えーっと。薬だしたりとか」
 「うん。まぁ、そうだね。でも、それは、表面上だけって言うか。生徒が知ってる意味だけって言うか。簡単に言うと、他にもあるってこと。」
 女の言葉を聞いていると疲れて来る。
 「七宮クン~そんなジロジロ見ないでよー私。これでも女なんだよー照れちゃうわ~」
 「あっ、大丈夫。俺、恋愛対象男なので貴方・・女に興味ないから」
 「ちっ。つまんなぁい。男高にいる生徒みんな男になっちゃってるのかな~」
 「さぁ。」
 「まぁ、良いけど~私も恋愛対象は女だから~。さぁ~て。着いたよ。ここの5階に今から上がるの。」

 でっかい建物を目の前にする。女は建物の前の男に挨拶をする。
 「お疲れ~」「お疲れ~」
 すれ違う人に言っていく。

 「ハロハロ」
 女が向かったのは『受付』と書いてある場所だった。
 「あらぁ~また来たのぉ~。ほんとわたしが好きねぇ~」
 受付にいた漢が頬に手を当てて言う。
 「違うよー。今日は別件。5階に行きたいんだけど、職員証明書出してくれない?」 
 「要件を言って欲しいわぁ~」 
 「七宮弘人クン。」
 女が横に移動して七宮を紹介する。
 「退学者・・研究員に
 「・・・・はい。これ職員証明書」
 漢の言葉遣い、雰囲気がガラリと変わった。
 「ありがとう~また来るね~受付ちゃん」
 「あら嬉しいぃ~また来てちょうだいぃーその時は汚物は捨ててきてちょうだいねぇ~」

 紙をヒラヒラさせて返事をする。
 「あとは自分で行くんだよ。私はここまで。あっ、荷物は私が捨てて預かっておくね。それでは、」
 女がコホンっと咳払いをし
 「貴方のこれからの人生が報われること信じています。」
 機械みたい声で目を閉じて、胸に手を置いて女が呟いた。そのまま何も言わずに七宮の目の前はエレベーターの扉で女が消えた。


 「報われることのない。可哀想な退学者。」





 「受付ちゃん~仕事おわったぁ~。飲みに行こう。もちろん受付ちゃんのお店で!」

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