155 / 550
最後の選択
この学校は地獄だ
しおりを挟む
七宮の退学が決まったのは文化祭の前の日だった。最後の文化祭は参加させてあげようと言う慈悲だった。退学を進めたのは兄の七宮晃だ。そして文化祭最後の日に2人に謝りに行くことを勧めたのも晃自身であった。
「弘人。僕を恨んでも良い。恨んでもいいから神瀬君達に謝りに行きなさい。」
「晃兄。俺を退学にしてくれてありがとう。このまま男高にいたくなかったから。謝りに行ってくる。八重がさ。『七宮。明日神瀬君家に行くの?』って聞いてきて『僕も謝りたいことがありから一緒に行く』って。晃兄。心配かけた。色々、迷惑もかけた。」
「うんん。僕はなんにもできてない。退学した後が1番大変だよ。お母さんになんって言われるか・・。」
「晃兄。心配しないで。」
弘人は晃の手を取って、握った。
「僕は大丈夫だから。それより晃兄はちゃんと智弘を見てあげて。俺のせいで、智弘は多分。辛い思いしてると思うから。」
「分かった。」
弘人は晃の手を離した。
「先生は忙しいでしょう。帰った帰った。」
外まで見送る。バイバイと手を振る。
自分の寮まで戻ると弘人は壁に寄りかかりそのまま座り込んだ。
謝りに行って、寮に帰って来た七宮は扉の前で立ち止まった。
「バッカだな。俺は。退学。退学か。電話しておくか・・。」
弘人はスマホを取り出して母親に電話をする要請をした。ものの数分で要請が承諾され、母親に繋がる。コールが2回、3回と待ってる時間が長く感じる。
『もしもし。七宮です。』
「お、お母さん。」
『弘人?』
「うん。」
『どうしたの?久しぶりね。』
「元気そうだね。」
『もちろんよ。貴方達が卒業してくるのが楽しみでしょうがないわよ。』
「ッ。」
『それでどうしたの?男高は電話できる時間が短いんでしょう。さっさと要件話しなさい。』
「俺っ。たい・・
『・・ちょっと、ちょっと待って。弘人。お父さんが』
電話の向こうで何かがあったみたいで、父親の声が微かに聞こえる。
「お母さん?」
『弘人!凄いわね!』
「えっ?」
『今さっきお父さんのメールに研究員として男高に残ることが決まったって。名誉なことよ!さっすが私たちの子ね!』
「待って、待って!」
『なによ。嬉しくないの?』
「だって俺、退学になったって電話しようと」
『退学って生徒をってことじゃないの?』
「そんなはず・・」
『でも、残れるんだから良かったじゃない。』
「お母さん!」
『それじゃあ切るわよ。晃と智弘にもよろしくね。ふふ。みんなに自慢しないと』
「お母さん!」
とっくに切れているスマホに向かってお母さんと呼ぶ。
「どう言うことだ?」
とにかくと部屋の荷物を片付けて寮を出た。
「研究員?・・いや、俺はもう男高には」
男高を出るため校門まで歩きながら呟く。
めちゃくちゃ久しぶりな校門。受付場があり、近づいていく。
「あの。七宮弘人と言います。退学になったんですが・・」
「あぁ七宮君ね。聞いてるよ。ちょっと待ってね。おーい!」
受付員が奥に声をかける。奥から「はいはいー」と軽めの返事が聞こえてきた。
「七宮君。場所案内してあげて。」
「おー。この子が~。よしっ!お姉さんに着いてきて。」
「お姉さん?」
「私、男高で唯一の女。なんでここにいるかはご想像にお任せしまーす。」
「はぁ、はぁ。」
「七宮クン~。もしかして本当に退学できるって思ってる?」
クススッと気味の悪い笑い方をしながら目の前の女は言う。
「どう言う・・研究員のこと・・なのか?」
「あっ、知ってるんだ~。研究員って何をする人だと思う?」
「えーっと。薬だしたりとか」
「うん。まぁ、そうだね。でも、それは、表面上だけって言うか。生徒が知ってる意味だけって言うか。簡単に言うと、他にもあるってこと。」
女の言葉を聞いていると疲れて来る。
「七宮クン~そんなジロジロ見ないでよー私。これでも女なんだよー照れちゃうわ~」
「あっ、大丈夫。俺、恋愛対象男なので貴方・・女に興味ないから」
「ちっ。つまんなぁい。男高にいる生徒みんな男になっちゃってるのかな~」
「さぁ。」
「まぁ、良いけど~私も恋愛対象は女だから~。さぁ~て。着いたよ。ここの5階に今から上がるの。」
でっかい建物を目の前にする。女は建物の前の男に挨拶をする。
「お疲れ~」「お疲れ~」
すれ違う人に言っていく。
「ハロハロ」
女が向かったのは『受付』と書いてある場所だった。
「あらぁ~また来たのぉ~。ほんとわたしが好きねぇ~」
受付にいた漢が頬に手を当てて言う。
「違うよー。今日は別件。5階に行きたいんだけど、職員証明書出してくれない?」
「要件を言って欲しいわぁ~」
「七宮弘人クン。」
女が横に移動して七宮を紹介する。
「退学者・・研究員に成り下がった者」
「・・・・はい。これ職員証明書」
漢の言葉遣い、雰囲気がガラリと変わった。
「ありがとう~また来るね~受付ちゃん」
「あら嬉しいぃ~また来てちょうだいぃーその時は汚物は捨ててきてちょうだいねぇ~」
紙をヒラヒラさせて返事をする。
「あとは自分で行くんだよ。私はここまで。あっ、荷物は私が捨てておくね。それでは、」
女がコホンっと咳払いをし
「貴方のこれからの人生が報われること信じています。」
機械みたい声で目を閉じて、胸に手を置いて女が呟いた。そのまま何も言わずに七宮の目の前はエレベーターの扉で女が消えた。
「報われることのない。可哀想な退学者。」
「受付ちゃん~仕事おわったぁ~。飲みに行こう。もちろん受付ちゃんのお店で!」
「弘人。僕を恨んでも良い。恨んでもいいから神瀬君達に謝りに行きなさい。」
「晃兄。俺を退学にしてくれてありがとう。このまま男高にいたくなかったから。謝りに行ってくる。八重がさ。『七宮。明日神瀬君家に行くの?』って聞いてきて『僕も謝りたいことがありから一緒に行く』って。晃兄。心配かけた。色々、迷惑もかけた。」
「うんん。僕はなんにもできてない。退学した後が1番大変だよ。お母さんになんって言われるか・・。」
「晃兄。心配しないで。」
弘人は晃の手を取って、握った。
「僕は大丈夫だから。それより晃兄はちゃんと智弘を見てあげて。俺のせいで、智弘は多分。辛い思いしてると思うから。」
「分かった。」
弘人は晃の手を離した。
「先生は忙しいでしょう。帰った帰った。」
外まで見送る。バイバイと手を振る。
自分の寮まで戻ると弘人は壁に寄りかかりそのまま座り込んだ。
謝りに行って、寮に帰って来た七宮は扉の前で立ち止まった。
「バッカだな。俺は。退学。退学か。電話しておくか・・。」
弘人はスマホを取り出して母親に電話をする要請をした。ものの数分で要請が承諾され、母親に繋がる。コールが2回、3回と待ってる時間が長く感じる。
『もしもし。七宮です。』
「お、お母さん。」
『弘人?』
「うん。」
『どうしたの?久しぶりね。』
「元気そうだね。」
『もちろんよ。貴方達が卒業してくるのが楽しみでしょうがないわよ。』
「ッ。」
『それでどうしたの?男高は電話できる時間が短いんでしょう。さっさと要件話しなさい。』
「俺っ。たい・・
『・・ちょっと、ちょっと待って。弘人。お父さんが』
電話の向こうで何かがあったみたいで、父親の声が微かに聞こえる。
「お母さん?」
『弘人!凄いわね!』
「えっ?」
『今さっきお父さんのメールに研究員として男高に残ることが決まったって。名誉なことよ!さっすが私たちの子ね!』
「待って、待って!」
『なによ。嬉しくないの?』
「だって俺、退学になったって電話しようと」
『退学って生徒をってことじゃないの?』
「そんなはず・・」
『でも、残れるんだから良かったじゃない。』
「お母さん!」
『それじゃあ切るわよ。晃と智弘にもよろしくね。ふふ。みんなに自慢しないと』
「お母さん!」
とっくに切れているスマホに向かってお母さんと呼ぶ。
「どう言うことだ?」
とにかくと部屋の荷物を片付けて寮を出た。
「研究員?・・いや、俺はもう男高には」
男高を出るため校門まで歩きながら呟く。
めちゃくちゃ久しぶりな校門。受付場があり、近づいていく。
「あの。七宮弘人と言います。退学になったんですが・・」
「あぁ七宮君ね。聞いてるよ。ちょっと待ってね。おーい!」
受付員が奥に声をかける。奥から「はいはいー」と軽めの返事が聞こえてきた。
「七宮君。場所案内してあげて。」
「おー。この子が~。よしっ!お姉さんに着いてきて。」
「お姉さん?」
「私、男高で唯一の女。なんでここにいるかはご想像にお任せしまーす。」
「はぁ、はぁ。」
「七宮クン~。もしかして本当に退学できるって思ってる?」
クススッと気味の悪い笑い方をしながら目の前の女は言う。
「どう言う・・研究員のこと・・なのか?」
「あっ、知ってるんだ~。研究員って何をする人だと思う?」
「えーっと。薬だしたりとか」
「うん。まぁ、そうだね。でも、それは、表面上だけって言うか。生徒が知ってる意味だけって言うか。簡単に言うと、他にもあるってこと。」
女の言葉を聞いていると疲れて来る。
「七宮クン~そんなジロジロ見ないでよー私。これでも女なんだよー照れちゃうわ~」
「あっ、大丈夫。俺、恋愛対象男なので貴方・・女に興味ないから」
「ちっ。つまんなぁい。男高にいる生徒みんな男になっちゃってるのかな~」
「さぁ。」
「まぁ、良いけど~私も恋愛対象は女だから~。さぁ~て。着いたよ。ここの5階に今から上がるの。」
でっかい建物を目の前にする。女は建物の前の男に挨拶をする。
「お疲れ~」「お疲れ~」
すれ違う人に言っていく。
「ハロハロ」
女が向かったのは『受付』と書いてある場所だった。
「あらぁ~また来たのぉ~。ほんとわたしが好きねぇ~」
受付にいた漢が頬に手を当てて言う。
「違うよー。今日は別件。5階に行きたいんだけど、職員証明書出してくれない?」
「要件を言って欲しいわぁ~」
「七宮弘人クン。」
女が横に移動して七宮を紹介する。
「退学者・・研究員に成り下がった者」
「・・・・はい。これ職員証明書」
漢の言葉遣い、雰囲気がガラリと変わった。
「ありがとう~また来るね~受付ちゃん」
「あら嬉しいぃ~また来てちょうだいぃーその時は汚物は捨ててきてちょうだいねぇ~」
紙をヒラヒラさせて返事をする。
「あとは自分で行くんだよ。私はここまで。あっ、荷物は私が捨てておくね。それでは、」
女がコホンっと咳払いをし
「貴方のこれからの人生が報われること信じています。」
機械みたい声で目を閉じて、胸に手を置いて女が呟いた。そのまま何も言わずに七宮の目の前はエレベーターの扉で女が消えた。
「報われることのない。可哀想な退学者。」
「受付ちゃん~仕事おわったぁ~。飲みに行こう。もちろん受付ちゃんのお店で!」
0
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

なんで俺の周りはイケメン高身長が多いんだ!!!!
柑橘
BL
王道詰め合わせ。
ジャンルをお確かめの上お進み下さい。
7/7以降、サブストーリー(土谷虹の隣は決まってる!!!!)を公開しました!!読んでいただけると嬉しいです!
※目線が度々変わります。
※登場人物の紹介が途中から増えるかもです。
※火曜日20:00
金曜日19:00
日曜日17:00更新

越えられない壁で僕らの幸せは・・・
綾瑪 東暢
BL
繋家に産まれた繋 志飛(つなぎ しと)は男だった。残念なことに繋家に男は不要だった。両親は初めての子供だと言うことで志飛を女として育てることにし繋 志綾(つなぎ しあ)と名前を変えた。
繋家と違って女を不要としている要家。要家とはお隣同士の家であり両家の決まりで必ず繋家と要家の子供同士は結婚しないといけなかった。
それは伝統で昔からやって来ていること。誰も変えることの出来ない伝統。
要家の三男として要 荼泉(かなめ とい)が産まれた。
この流れで行くと荼泉と志綾は結婚することになる。が、どっちらも男。
伝統を守り、性別を隠しながら結婚するのか、伝統を破り、性別を明かして追い出されるか・・・

王道にはしたくないので
八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉
幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。
これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。



ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました
ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。
「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」
ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m
・洸sideも投稿させて頂く予定です

嫌われものの僕について…
相沢京
BL
平穏な学校生活を送っていたはずなのに、ある日突然全てが壊れていった。何が原因なのかわからなくて気がつけば存在しない扱いになっていた。
だか、ある日事態は急変する
主人公が暗いです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる