今から君を守るのに理由が必要ですか・・?(仮)

綾瑪 東暢

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最後の選択

冷静

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 「父さん。僕に会いにきてくれてありがとう。」

 白斗はくと真斗まさとの胸の中でそう言った。「それから」と白斗は続ける。
 「父さんと一緒に住みたいって言えなくてごめんなさい。黙ってごめんなさい。」
 
 涙声で言う。泣いているか分からない。でも、涙声だった。
 「あぁ。俺も暴力振って悪かった。」



 数分間、抱き合う時間が続いた。長く感じた。
 申し訳なさそうに直也なおやが「あの」と話しかける。

 「直也!」
 今気がついたのか声を上げた。もの寂しそうに真斗は白斗を離した。
 「今?!」
 「なんで直也とはつさんがいるの???そう言えば、なんでここにいるんだっけ?」
 「覚えてないの?」
 顔を覗くようにして直也が白斗を見る。 
 「うん。直也と円堂えんどう君を待ってるよう言われた後から思い出せない」

 その言葉に葉は良かったと安堵した。
 「あと、夜丘やおかがおかしいんだけど何か知ってる?」
 「・・・後で、本人に聞いた方が詳しく知れると思うわ。白斗君。無事で良かった。」
 「ありがとう?」
 「事情説明してやんないのか?」
 「そうだね・・・。白斗君。最初にてんを信じないでほしいんだ。今回、槇は選ぶ道を間違えた。白斗君のこと私は本当の息子だと思って今まで接してきた。でも、槇は違った・・・」
 白斗本人より葉の方が辛そうだ。
 「何があったか知らないけど、僕は葉さんと槇さんどっちも血は繋がらないけど大事な家族だと思ってるよ。槇さんが葉さんの言う間違えをしたなら、僕は、次の槇さんを信じるよ。だって間違えは人なら誰だってあるから。」

 葉の目に白斗は輝いていた。

 「そうだね。うん。そうだ。私もちゃんと槇を信じないとだよね?・・・ありがとう。」
 「そ、それで槇さんはなにを間違えたの?」
 聞いてもいいのか分からないのか、恐る恐る聞く。
 「槇が白斗君に飲ませた薬。あれ発情を抑える薬じゃなくて、発情を促進、起こす薬だったの。槇は校長に、この薬を飲ませなかったら、家族を男高から追い出すって、脅されたみたい・・・」
 「それなら仕方ないことだよ。」
 葉はもっと悲しむと思ってた。でも、目の前の白斗は本当になんとも思っていなかった。
 「僕はその薬を飲んで、文化祭を見ていたんだ。それで、直也達が飲み物を買いに・・直也。円堂君はどうしたの?」
 「爽は・・・」
 「?」
 「・・・帰ったよ。体調が悪くなっちゃったみたいで」
 「そ、うなんだ。」

 見るからに嘘っぽくてでも、聞くに聞けなかった。
 「待っている間、白斗は発情し始めた。そこに坂原さかはらと言う先生がきたんだ。」
 真斗が続きを説明する。
 「白斗に、その発情を止める薬を処方してあげようと唆して、白斗は坂原に着いて行った。で、坂原は白斗をベットに寝かせて襲おうとした。そこに3人がきたわけ。」
 所々言っていない箇所はあるが、葉は頷いた。
 「そっか。・・・思い出せないけど、分かった。」
 冷静過ぎて、違和感を感じる。
 「白斗君?」
 「な、どうしたの?葉さん。」
 「い、いえ。なんでもないわ。」

 「白斗。体大丈夫?」
 「うん。なんとも・・・ダメだこりゃ・・・

 そう言って真斗の方に倒れ込んだ。

 「はぁ。真斗。殴り過ぎ。」
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