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最後の選択

怖い

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 五碌ごろくにしきが現れても、白斗はくと鵺瀬やせはまだ、話し合っていた。

 「・・・白斗。会いたくない?・・・会いたいけど、怖いの。」

 白斗の恐怖が鵺瀬に伝わる。鵺瀬は何が怖いのか分からない。でも、伝わってきてしまう。白斗は本当に怖がってる。

 「白斗。休憩していて。」
 

 鵺瀬はそう言って、首を横に振った。

 そして目をつぶってから開いた。目の前にいるはつと偉そうに足を組んでいる真斗まさとを見る。

 「・・・聞いた限りだと、会わないと白斗は言ってるみたいだけど?」

 睨んだ目を鵺瀬に向ける。
 「・・・白斗は貴方が怖い。だから」

 真斗は無言で立ち上がって鵺瀬に近づこうとするが、葉が目の前に立ち塞がる。

 「言ったはずよ。貴方に対するトラウマで白斗君は会ってくれないと。貴方が昔、白斗君にしていたことが、原因。自業自得。だから諦めて。」
 
 葉が腰に手を置いて真斗に言う。それでも真斗は無言のまま葉を突き飛ばす。葉は倒れるギリギリで堪え、真斗の腕を掴む。
 「真斗。いい加減にしなさい!離婚した時、会わないと約束したんじゃ無いの!」
 「・・・」
 真斗は葉に向き直る。
 「俺は、認めてない。白斗に会わないと約束したのは俺じゃ無い。白音しろねが勝手に言い出したことだ。」
 そう言ってまた鵺瀬の方に向いて鵺瀬の元に行く。手を離された葉の手は行き場を失っていた。
 
 鵺瀬に近づいた真斗はまた、鵺瀬の胸倉を掴んで顔を近づける。
 「とやかく言わないで白斗を出せ!」
 その瞬間、鵺瀬の体に異様な恐怖心が湧き上がって来た。これは白斗の感情だ。


 「私の前でよくそんな行動ができますね。八代やしろせん、せい。」

 いつの間にか話を聞いていた3人。五碌の腕の中には爽が顔を赤くしている。

 直也はどこか不貞腐れていた。

 五碌は爽を離して、足音をわざと立てるように歩きながら、真人に近づく。離された爽は寂しそうな表情をする。でも、それが逆に嬉しいのか手で頬を撫でる。

 「・・・五碌錦生徒会長。五碌爺さんは元気かい?」
 五碌はクスッと笑う。
 「八代先生がそれを言いますか。面白い冗談だ。お金だけむしり取り、持病を悪化させ、八代先生は逃げた。五碌爺さんは数日前に亡くなりましたよ。八代先生が悪化させた持病でね。」
 「それは愉快な話だ。じゃあ五碌ハゲは元気かな?」
 また笑うと思った真斗だったが、五碌は真顔に一瞬なった。でも、すぐに笑顔を作り
 「えぇ、元気だと伺っていますよ。」
 「・・・それは良かった。」

 2人は無言になった。一番にそれを壊したのは真斗だった。
 「五碌生徒会長は俺に何の用なんですか?」
 わざとらしい敬語を使う。
 「わが校の生徒をそのように扱うなど教師、研究員の風上にも置けない。そのような暴力ではなく、言葉の方が有意義ですよ。」
 そう五碌は呟いた。それを聞いた真斗は乱暴に手を離した。鵺瀬は小さく悲鳴を上げる。五碌は鵺瀬に近づく。耳元に近づいて何かを言う。誰も聞こえてない。五碌が鵺瀬の耳から離れた瞬間鵺瀬は耳を手で隠した。すぐに五碌を見上げる。そこにはニッコリ笑ってる五碌がいる。鵺瀬は怖いと思った。真斗なんかより五碌が。

 「白斗・・・お願い。変わって。僕は、今、もう、お願い、・・・あの、むりなんだ、」

 呂律が回ってない。言っていることに統一性がない。

 「夜丘やおか?・・・お願い、変わって、僕は、無理、白斗。夜丘。変わるから、変わるから何があったの?・・・後で、話すから、今は、僕はもう休みたい。分かった。休んでいいよ。」

 そう言った瞬間、鵺瀬は横に倒れた。数秒しないうちに起き上がった。その瞬間、研究室に大きな音が響いた。何が起こったのかわかる前に白斗は頬を触っていた。だんだん自覚した叩かれたのだと。頬が痛い。見上げると叩いた人物が視界に入る。
 「ご、五碌会長・・・・なんで」

 叩いたのは五碌だった。
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