今から君を守るのに理由が必要ですか・・?(仮)

綾瑪 東暢

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最後の選択

一緒に周らない?

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 白斗はくとはカレーライスを、はつはグラタン、てんはシチューを選んだ。

 「「いただきます。」」

 「白斗君。カレーでよかったの?」
 「はい。葉さん、グラタン食べたいって呟いてたから。」
 「優しい。でも、直也なおや。よく分かったね。グラタンって」
 「えっ、ああ、うん。単に上から言っただけだけど」
 「一言余計だつーの」
 「あの・・・失礼を承知で聞くんですが、男性ですよね?」
 円堂えんどうそうが葉に聞く。すると葉は膝を叩きながら大笑いをした。
 「あったりまえよ!ここは男高だからね!」
 「俺は男高に入る前、普通に外で暮らしていたから、その時お母さんが男だと俺はいじめの対象になる可能性があるからって、女性として過ごしてくれていたんだ。それの名残りなのか気に入っているのかわからないけど、時々分からなくなる。」
 「別にそこまで深く考えていなかったわよ。私だってこそこそ言われるのは嫌なの。でも、まぁ、男高に家族で入ったって知られたからワンチャンバレているかもね。」

 少し照れたように視線を逸らす。

 「あの頃は、今みたいに白斗君がいて、直也の友達がいてってたまにご飯食べたよね。」
 「・・・はい。」

 「葉。」
 「あっ、ごめんなさい。」

 槇が一瞬葉を睨んだ。

 「直也。皆んな。手が止まってる。食べよう。直也も円堂君もまだ文化祭見に行きたいでしょう。行って来た方がいいよ。二年後って言っても高1での文化祭は最後だから。葉さんと槇さんだって、見に行って来ていいんだよ。文化祭を経験してるからって言ってても、文化祭の内容は毎回変わるから。楽しんできて。」

 そう言って白斗は黙々と食べる。

 「はく・・・都瀬みやせ君。君も直也と俺と周らない?」

 動いていた手が止まった。

 「うんん。僕は家から出れないから。いい。」

 「白斗君。手を出して」

 槇は白斗の手の上に一つの薬を置いた。

 「これは」
 「男性妊娠欲発抑制剤だんせいにんしんよくはつよくせいざい。前に飲んだことある薬の改造版。2日間の間白斗君。発情が止まる。」
 「でもっ!これのために槇さんは寝不足に?ごめんなさい。ごめんなさい。」
 
 「違うんだ。本当は渡すはずなかった。副作用が強くなってしまった。副作用は、1週間の強烈な発情。直也がもし、『欲発防止剤』を飲んでいたとて、その効果はないにも等しい。それでも文化祭を楽しみたいのなら、飲んで欲しい、それを決めるのは直也でも俺達でもない。白斗君だから。自分の体は自分で守って」

 槇さんの言葉に白斗は涙を流した。何度も何度も涙を拭うが目からは大量に出てくる。

 「槇さんと葉さんは僕にいっぱい、いっぱいしてくれる。僕は何も返せてない。ありがとうございます。ありがとうございます。何も返せてなくてごめんなさい。あのときだって、甘えてごめんなさい。本当は家族のことだって自分がなんとかしないといけないのに、ごめんなさい。」

 「謝らないで、白斗君は頑張ってる。もっともっと俺達を頼っていいんだよ。」


 
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