今から君を守るのに理由が必要ですか・・？（仮）

最後の選択

吐き出したかっただけ

　「先生・・・。」
　直也なおやは労りを込めて呼ぶ。　　
　「コウ！雪のこと知っていたのか。」
　「まぁね。ヤヨちゃんも僕が定期検診行ってるの知ってるでしょう？その時に似てたから気になって話しかけたの。そしたらまさかね。」
　「言ってくれたら。」
　「言っても何も起きなかったと思うよ。神瀬かみせ君に手伝ってもらわないとユキちゃんに会いに行けないヤヨちゃんなんだから。」
　
　会議室に静寂が来る。するとノックの音がした。晃こうが立ち上がって扉を開けた。
　
　「あ、先生。探してましたよ。七宮しちみやの件で話があるんですが・・・あ、すみません。話し合いの途中でしたか。」
　扉をノックした人は直也の学年の学年主任だった。
　「いいえ、大丈夫です。かみせ・・
　「先生。七宮どうなるんですか？」
　直也が立ち上がって聞く。
　「神瀬。お前の前で聞かせて悪かった。七宮先生。後で俺のところに・・・あっ、先生。後で声をかけてください。」
　何かに気がついた学年主任は慌てて言い直してから出ていった。扉を閉めた晃は気まずそうに直也達の方を見る。今まで何も喋っていなかった白斗はくとが「晃先生・・・」と呟いた。
　「先生。もしかして、」
　「わざと言わなかったわけじゃないんだよ。僕が担任になる前に起きた事件だったから言い出せなくて、前任の先生もあまり言わない方がって言ってたから。ごめんなさい。言っておけばよかった。僕は七宮晃。神瀬君の担任になった時篠秋しのあきって名乗ったよね。ヤヨちゃんが事情を知ってたから、借りたんだ。」
　「七宮のお兄さんですか？」
　「都瀬みやせ君・・・うん。兄弟なの。」
　「智弘ともひろ君と弘人ひろと、晃先生。」
　直也が名前を呼ぶ。
　「智弘ともあったの？」
　「はい。雪君と一緒にいました。」
　「ユキちゃんと。後で会いに行ってるよ。この学校に来てから会ってないから。でも僕とは会いたくないかな。」
　「そういえば、智弘君だけこの学校で育ったと言っていたんですが・・・いいえ、なんでもありません。」
　「うんん。神瀬君。僕は今とても吐き出した気分なんだ。全部聞いてくれる？都瀬君とヤヨちゃんも。」

　弥生以外は頷いた。弥生は嫌がっているように見えた。