今から君を守るのに理由が必要ですか・・？（仮）

君のために

墓穴

　今日は弥生やよいではなく、校長に呼び出された。
　「失礼します。神瀬かみせです。」
　「入りたまえ。」
　扉を開ける。校長席に威厳たっぷりの男が座っていた。
　「お初目にかかるかな・・・篠秋しのあき　信秋のぶあきだ。」
　「こちらとしてはお名前も姿も把握しています。」
　「そうだろうな。座りたまえ。」
　「・・・失礼します。」
　直也なおやはソファに腰をかけた。
　「呼び出してしまって悪いね。神瀬君だったかな？聞きたいことがあってね。」
　「いえ、呼び出しは慣れているので」
　「そうか、良かったよ。では、本題だが・・・・都瀬《みやせ》君はどうだ？元気にしているか？」
　「・・・白斗はくとに何をしたんですか？」
　「簡単な話だよ。」
　校長はその質問が来るということを知っていたかのようにすぐに答えた。
　「都瀬　白斗はわしの実験体だ。彼には薬が切れない体質になってもらった。」
　「・・・・」
　「納得いっていないのかね？当たり前の話ではないか、都瀬　白斗の母親はわしに彼を売ったんだからな。わしが彼をどう扱ってもいいはずだ。」
　「そんなことは・・・
　「神瀬君。君はもう少し要領の良い生徒だと思っていたのだけど。わしは君を過大評価していたみたいだな。幻滅だ。」
　「・・・幻滅されても俺は気にしません。白斗を戻してください。」
　「はっはっはぁ」
　校長が笑う。楽しそうに笑っている。新しいおもちゃを買ってもらった子供のように楽しく。
　「何が面白いんですか？」
　「戻すための実験をしていいと君は言った。また、実験ができる。これは、君が言ったことだ。」
　「ッ・・・」
　「面白い！墓穴を掘ったな」
　「俺は帰ります。失礼します。」

　直也は急いで校長室を出ようとした。
　「大丈夫だ。まだ期間はある。したくなったらそっちに職員を向かわせよう。」
　校長室を出た。急いで校舎を出るために駆け足になっていた。