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ネギヲ

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誕生日

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夜7時。

仕事を終えて、会社を出る。

会社から徒歩3分の位置に駅があり、そこから3駅先の駅で乗り換え、更に5駅を過ぎたところに自宅の最寄駅がある。

最寄駅に着くのは大体7時半頃だ。

最寄駅に着き、スマホの時計を確認すると丁度7時半になっていた。

ほらね。

駅から自宅までは徒歩で10分くらい。

でも、直接家には向かわない。

いつも、途中のスーパーに寄るのが常だ。

カゴを手にしたら真っ先にお惣菜コーナーに向かう。

割引のシールが貼ってある商品を優先してカゴに入れて、缶チューハイを買って帰るのが恒例だ。

ちなみに今日の割引シールの貼ってある商品の中から選ぶのは、ポテトサラダと唐揚げだ。

ポテトサラダを手にしようとしたその時、本当にそれでいいのか?と、もう1人の自分が問いかけた。

本当にそれでいいのかって?

もう1人の自分に聞き返してみた。

今日は誕生日だろ。

それは知っていた。

今日は俺の誕生日。

30歳になりました。

祝われたのは、登録していたサイトからのクーポンメールくらいだ。

誕生日だろうが普段と変わらないさ。

でも、少しくらい贅沢したって構わないよな。

割引シールなんて気にせず、食べたい物でも買うとしよう。

その時、もう1人の自分がまた話しかけてきた。

ケーキが食べたい。

おいおい、ケーキだって?

1人でケーキを買って虚しく食べても、仕方ないじゃないか。

もう1人の自分は、続けてこう言った。

たまにはいいじゃないか。誕生日くらい、解放されようぜ。

解放という言葉が胸に刺さった。

確かに、俺はいつからか同じ毎日の繰り返しに慣れてしまっていた。

そうだった。

昔はいつか成功してやると、何に成功するかは決めていなかったが、それでも、この日常から抜け出したいと思っていた。

解放か。

俺はスマホを取り出し、ケーキ屋の営業時刻を調べた。

ここから自宅と離れる位置にはなるが、1番近いケーキ屋の営業時刻を見ると、20時まで営業してることが分かった。

今の時刻は19時40分。

カゴを戻し、何も買わずにスーパーを出て早足でケーキ屋に向かった。

途中、信号が変わりそうになったので走りもした。

普段なら、走ることなどせず、おとなしく待つが、営業時刻に間に合うかの不安と、どこか気持ちが高揚していた。

ケーキ屋が先に見えた。

まだ電気は付いているから、間に合ったみたいだ。

店に入ると、お客さんは誰もいないどころか、お店の人もいなかった。

少しして、奥から店の人が出てきた。

「いらっしゃいませ」

目が合ったので軽く会釈をした。

そして直ぐにショーケースに目を移し、ケーキの種類をチェックする。

あまり残っておらず、最後のショートケーキと2つ余っているチョコケーキを1つ買うことにした。

ケーキなんて何年振りだろうか。

最後に食べた日のことすら思い出せなかった。

この後は、またスーパーに戻るのも考えたが、ここからスーパーに戻るより、自宅に最短で帰ろうとすると、コンビニに寄る方が近いので、晩飯はコンビニで買うことに決めた。

普段、駅と自宅のルートしか歩かないので、この道を歩くこと自体久しぶりだ。

コンビニまでの道の途中に公園がある。

その公園を迂回するより、中を通った方が近いので、夜の公園を歩くことにした。

夜の公園はとても静かで、見渡す限り人はいなかった。

この公園に思い入れもないが、昔を思い出す。

そう、あれは俺がまだこの街に住んでいない頃。

小学生の頃。

俺は山奥にある村に住んでいた。

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