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第十話「高飛車と純粋【制作中】」
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あなたを憎んだこと。
あなたを心の底から嫌ったこと。
全部、認める。
「幸せなんて、幻に過ぎないのよ」
高飛車ぶって今日もやな女でいよう。
あなたに、嫌われるために。
「……ティップ様、またお手紙です」
「ありがとうマルガネット。
またなのね。今日もまた、ラヴレター。」
手紙をひらひらと仰いで見せてから、ティップは手紙の裏を見た。
そこには、いつもよりなんだか濃いインクで
「ありったけの愛を込めて」と書かれていた。
「マルガネット、私はこれを読むべき?
幸せになって、ハッピーエンドになれる?」
「…ティップ様、残念ながらあちらのお父上様は貴方様のことを
よく思っておられません。
どんなにあの色男が貴方に溺れても未来はバットに染まるでしょう」
年をとった召使は、目線をそらす。
なにも間違ったことなど言っていないのに。
あぁ、マルガネットは優しいわとティップは思った。
「私、病気だから彼の子供も産めないでしょ?
だから、バッドエンドがねじ曲がって
メリーバッドエンドになったとしても……」
「そこから更にバッドエンドに叩き落とされる、ですか?」
「…えぇ」
手紙は読まれることもなく、くずかごに投げられた。
隣の豪邸の一人息子がティップに込めた
ありったけの愛が捨てられるのは、これでついに十年目だった。
「あの手紙はどう足掻いてもきっと物語を始めてしまうわ。
始まってしまうのなら、終わりが来る。
その終わりは……メリーバッドエンドに染まるんだわ」
棄てられた手紙は、彼がいつも直筆しているようだった。
それを毎日、十年、ティップだけのために。
それをティップは嬉しかったし、封を切って受け止めたかった。
でもその感動よりも始まりの方がティップは守り続けた。
チャイムを鳴らして、召使が応対してくれる。
ドアベルが鳴る…彼の家。
何年ぶりかに彼の家に訪れた。
召使が白い目でティップを見つめる。
「トランク…久しぶりね。
私あなたに今日こそは伝えようと思ってきたのよ。」
暫くの沈黙の後に、彼の部屋の中から弱々しい声が聞こえる。
「手紙の封を、切ったのかい?」
「切ってないわ」
「ならいい、帰ってくれないか」
「帰らないわ。貴方は何を恐れているの?」
そしてまた沈黙が続く。
さっきより、ずっと長い。
「始まりが怖い。
始まりなんて来なければ、終わることなんてないんだから」
じゃあなぜ私に手紙を送るの?
私があれに素直に答えてしまったら、
貴方の言う始まりが訪れてしまうというのに。
「…本当馬鹿ね!誰もあなたのこと好きじゃないわ。
何が始まりよ?気持ち悪いのよ、蛆虫が!!」
あなたを心の底から嫌ったこと。
全部、認める。
「幸せなんて、幻に過ぎないのよ」
高飛車ぶって今日もやな女でいよう。
あなたに、嫌われるために。
「……ティップ様、またお手紙です」
「ありがとうマルガネット。
またなのね。今日もまた、ラヴレター。」
手紙をひらひらと仰いで見せてから、ティップは手紙の裏を見た。
そこには、いつもよりなんだか濃いインクで
「ありったけの愛を込めて」と書かれていた。
「マルガネット、私はこれを読むべき?
幸せになって、ハッピーエンドになれる?」
「…ティップ様、残念ながらあちらのお父上様は貴方様のことを
よく思っておられません。
どんなにあの色男が貴方に溺れても未来はバットに染まるでしょう」
年をとった召使は、目線をそらす。
なにも間違ったことなど言っていないのに。
あぁ、マルガネットは優しいわとティップは思った。
「私、病気だから彼の子供も産めないでしょ?
だから、バッドエンドがねじ曲がって
メリーバッドエンドになったとしても……」
「そこから更にバッドエンドに叩き落とされる、ですか?」
「…えぇ」
手紙は読まれることもなく、くずかごに投げられた。
隣の豪邸の一人息子がティップに込めた
ありったけの愛が捨てられるのは、これでついに十年目だった。
「あの手紙はどう足掻いてもきっと物語を始めてしまうわ。
始まってしまうのなら、終わりが来る。
その終わりは……メリーバッドエンドに染まるんだわ」
棄てられた手紙は、彼がいつも直筆しているようだった。
それを毎日、十年、ティップだけのために。
それをティップは嬉しかったし、封を切って受け止めたかった。
でもその感動よりも始まりの方がティップは守り続けた。
チャイムを鳴らして、召使が応対してくれる。
ドアベルが鳴る…彼の家。
何年ぶりかに彼の家に訪れた。
召使が白い目でティップを見つめる。
「トランク…久しぶりね。
私あなたに今日こそは伝えようと思ってきたのよ。」
暫くの沈黙の後に、彼の部屋の中から弱々しい声が聞こえる。
「手紙の封を、切ったのかい?」
「切ってないわ」
「ならいい、帰ってくれないか」
「帰らないわ。貴方は何を恐れているの?」
そしてまた沈黙が続く。
さっきより、ずっと長い。
「始まりが怖い。
始まりなんて来なければ、終わることなんてないんだから」
じゃあなぜ私に手紙を送るの?
私があれに素直に答えてしまったら、
貴方の言う始まりが訪れてしまうというのに。
「…本当馬鹿ね!誰もあなたのこと好きじゃないわ。
何が始まりよ?気持ち悪いのよ、蛆虫が!!」
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