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1章

カサカサ……

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「モグモグ……ですからこんな感じです」

「いや、分かんないです……」

 何が「詳しいことを聞け」だ。言われた通りに話を聞こうとしたが、これは何だ。豆腐の味噌田楽をまた出された挙句、ろくに説明もされずに、ゲームとかによくあるステータス表を渡された。まさか本当にあるとは……

 つーかこの世界観にステータス表は無いだろ!どんだけ流行に乗っかりたいんだよ。

 ……まぁそんなことはさておき、ざっとこんな感じだ。

 ステータス

【名前】 酒井 冬馬

【能力】
時代度 幕末
戦闘Lv.0
パシリ度Lv.80(大丈夫、こき使ってあげます)
ツッコミ度Lv.100

【死亡理由】自殺

【Job】新微組局長

 アハハハ、なんだこれ。これがステータス表?頭の上に、ハテナマークが飛び散る。俺の知ってるステータス表は、魔法のLv.とかが書いてあると思うのだが……

 戦闘能力はまだ理解出来る。だがその他の時代度、パシリ度、ツッコミ度は何だ。パシリ度に至っては、もう誰かさんの心の声がダダ漏れだし。

「ところでこの、時代度って何ですか?パシリとツッコミは大体予想出来ますが、これは一体……」

「時代度は要するに『その時代の偉人を狩るのに適している』ということです。つまりあなたは、江戸時代後期~明治までの幕末の偉人を狩ることになります。ちなみに、魂はお金になります。集めた魂をエンマ様に持って行き、お金と交換するのがベストです。お金は地獄の競馬場、キャバクラ、オカマバーなどで使えます」

「キャバクラ……」

 その言葉に俺は胸が高鳴った。生前、死ぬことしか考えていない俺にとって唯一、キャバクラは憧れの存在だったからだ。

 ドンペリにテキーラボール。平凡な日常に飽き飽きしていた俺は、夜の社交場にロマンを感じていた。ドンペリにドンペリにドンペリ。キャバクラは俺にとっては聖域(サンクチュアリ)に見える。

「あのー、なに一人でにやけているのですか?」

 キョトンとした顔で、琴さんが顔を覗いてきた。

「別に、何でも無いです」

 作り笑いをしながら、俺は急いで誤魔化した。危ない危ない……この状況で俺の欲望を語ってしまったら、この小説で俺が演じたいミステリアスキャラが崩れる所だった。発言には気をつけないと。

 あれ?そう言えば、いつの間にかギャグ路線走ってるよな。なんかおかしくないか?最初の流れでは明らかにシリアスモードだったじゃねーか!いつから道を踏み外したんだ。

「なに一人で騒いでるんだ?そこのチェリーボーイ」

 突然、天井から声が降ってきた。俺が今いるのはさっきの大広間。なぜそんな所に人が……

「あ、ゴキブリ」

「ぎゃぁぁ~」

 間髪入れずに真顔で琴さんが、近くに飾ってあった壺を投げた。ゴキブリと呼ばれたその人物は、壺と共に砕け落ちる。

「あの、この方は一体……」

 呆気に取られながらも、俺は琴さんに聞いてみた。身につけている衣服はGの付くアレにしか見えないが、少なくとも虫ではないのは確かだ。

「僕の事かい……チェリーボーイ?僕は地獄の重鎮、池田響介だ。エンマ様に言伝を頼まれて参上した」

 これが地獄の重鎮?俺はあの何とも言えない、残念なG様コーデに目を見張った。こんなふざけたのが重鎮とは、人間界での地獄のイメージがよく正常に保てていたと、改めて関心する。

「待たせたな、マイハニー!寂しかっただろう?」

 俺がぶつぶつと独り言を言っていると、突然そのゴキブリは、頭から血を流しながら俺に抱きついてきた。

えっ? いや待て待て……ここでまさかのBとL展開はないだろ。この小説はそういう要素は盛り込んでねーぞ。お前、出る所間違ってんじゃねーのか……

引き攣った顔で、チラリと琴さんを見る。すると琴さんはメガネを持ちながら、ため息をついた。

「はやくメガネ掛けなさいよ、ゴキブリ君」

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