21 / 55
21
しおりを挟む
今日の私は国立図書館に来ている。
ここは前世からの私のお気に入りの場所だ。でも前世の時は家から遠かったのであまり来ることができなかった。
今世はその点が違う。ミラー公爵邸は国立図書館と目と鼻の先にある。気軽にいつでも利用できるのだ。
侍女のメアリーを連れて今日も朝早くから図書館にこもっている。メアリーはいつものように私の傍から離れようとはしない。けれど今日はミスラ教のことを調べたいので遠慮してもらう。渋々だったが絶対に国立図書館からは出ないことを約束すると離れてくれた。彼女は大衆文学が好きなので、そちらで私を待ってくれることになった。この国立図書館からはその大衆文学が置かれている部屋を通らなければ外へ出ることは出来ないのでちょうど良いみたいだ。
「いつも来ているけどミスラ教関係の本は読んだことなかったわ」
ブツブツと呟きながら本を眺める。
この国立図書館には沢山のミスラ教関連の本がある。ほとんどがミスラ教から寄贈されたものらしい。長い歴史のあるミスラ教なので本の数が半端ない。
いったいどこから手を付けていけばいいのかしら。途方に暮れるとはこのことか。
「とにかく真名についてだから、その関係の本から読めばいいかな」
けれど、どれだけ探しても真名についての本は見つからない。これだけあるのにないなんて。端から端まで探して見つからない。探すだけで疲れてしまった。表紙に真名と書かれていないだけで中には書かれているのかもしれない。でもこれだけの量の本の中身を全部確かめるのは難しそうだ。
「あら? この本は……」
輪廻転生について書かれている本が端のほうにある。そういえば輪廻転生についての本も見当たらなかった。これ一冊だけかもしれない。
手に取ってみると、とても古い本だということがわかる。紙が最近の紙ではない。
真名の本がないのだから、この本を読むことにした。
古い本だけあって古語が使われている。習っているから読むことは出来るけど時間がかかる。
「うぅ……もっと勉強すればよかった」
輪廻転生をしたという人々の話も書かれている。私以外にも輪廻転生した人がいたんだわ。不思議な気がしたけど、当たり前だわと思う。私がいるんだから、他にもいておかしくはない。
「まさか、こんなところで会うとは....」
カイルの声が聞こえて顔を上げた。驚いた、ここでまたカイルと会うとは思わなかった。
「カイル伯爵はどうしてこちらに?」
「調べ物があってね。侍女はいないのか? 危ないだろう」
カイルは私の傍に誰もいないのを見て、訝しげな顔だ。
「侍女には入り口の近くで待ってもらってるの」
「そうか。それで君も私と一緒で真名について調べようとしてるのかい?」
「ええ、グレース王女に言われるまで、真名を知ってることがすごく困ることだと気づいてなかったの」
カイルは呆れたような顔で私を見る。そんな重要なことにも気づいていなかったのかという顔だ。
「それで何かわかりそうかい?」
「全然よ。こんなにたくさん本があるのに真名についての本はないみたい。輪廻転生について書かれた本もこれしかないのよ」
「やはりそうか」
カイルは残念そうではなかった。ここには無いだろうと思っていたようだ。
「どうして、ないのかしら」
「私は行ったことはないが、神殿図書館の方にあるのだろう」
「神殿図書館?」
神殿図書館? 初めて聞く。
「ああ、あまり知られてないが、ミスラ教の本神殿にある。専門書ばかりだから神殿関係者くらいしか利用しないと聞いている」
そんなところがあるのか。でも困ったわ。そこに行くには、さすがに親の許可がいる。
「困ったわ、どうやっていこうかしら」
「君が行くのは無理だよ。私が調べてくるから、待っていなさい」
なんだか子供に言い聞かせるような話し方だ。年齢差を考えたら仕方ないけど、子供扱いされるのはなんだか不満だ。
でもここはカイルに任せるしかない。私では手にあまる。これ以上何か問題を起こせば問答無用で結婚させらることは間違いない。
「カイル伯爵、それではお願いするわ」
「任せてくれ。きっと何か良い方法が見つかるさ」
ここは前世からの私のお気に入りの場所だ。でも前世の時は家から遠かったのであまり来ることができなかった。
今世はその点が違う。ミラー公爵邸は国立図書館と目と鼻の先にある。気軽にいつでも利用できるのだ。
侍女のメアリーを連れて今日も朝早くから図書館にこもっている。メアリーはいつものように私の傍から離れようとはしない。けれど今日はミスラ教のことを調べたいので遠慮してもらう。渋々だったが絶対に国立図書館からは出ないことを約束すると離れてくれた。彼女は大衆文学が好きなので、そちらで私を待ってくれることになった。この国立図書館からはその大衆文学が置かれている部屋を通らなければ外へ出ることは出来ないのでちょうど良いみたいだ。
「いつも来ているけどミスラ教関係の本は読んだことなかったわ」
ブツブツと呟きながら本を眺める。
この国立図書館には沢山のミスラ教関連の本がある。ほとんどがミスラ教から寄贈されたものらしい。長い歴史のあるミスラ教なので本の数が半端ない。
いったいどこから手を付けていけばいいのかしら。途方に暮れるとはこのことか。
「とにかく真名についてだから、その関係の本から読めばいいかな」
けれど、どれだけ探しても真名についての本は見つからない。これだけあるのにないなんて。端から端まで探して見つからない。探すだけで疲れてしまった。表紙に真名と書かれていないだけで中には書かれているのかもしれない。でもこれだけの量の本の中身を全部確かめるのは難しそうだ。
「あら? この本は……」
輪廻転生について書かれている本が端のほうにある。そういえば輪廻転生についての本も見当たらなかった。これ一冊だけかもしれない。
手に取ってみると、とても古い本だということがわかる。紙が最近の紙ではない。
真名の本がないのだから、この本を読むことにした。
古い本だけあって古語が使われている。習っているから読むことは出来るけど時間がかかる。
「うぅ……もっと勉強すればよかった」
輪廻転生をしたという人々の話も書かれている。私以外にも輪廻転生した人がいたんだわ。不思議な気がしたけど、当たり前だわと思う。私がいるんだから、他にもいておかしくはない。
「まさか、こんなところで会うとは....」
カイルの声が聞こえて顔を上げた。驚いた、ここでまたカイルと会うとは思わなかった。
「カイル伯爵はどうしてこちらに?」
「調べ物があってね。侍女はいないのか? 危ないだろう」
カイルは私の傍に誰もいないのを見て、訝しげな顔だ。
「侍女には入り口の近くで待ってもらってるの」
「そうか。それで君も私と一緒で真名について調べようとしてるのかい?」
「ええ、グレース王女に言われるまで、真名を知ってることがすごく困ることだと気づいてなかったの」
カイルは呆れたような顔で私を見る。そんな重要なことにも気づいていなかったのかという顔だ。
「それで何かわかりそうかい?」
「全然よ。こんなにたくさん本があるのに真名についての本はないみたい。輪廻転生について書かれた本もこれしかないのよ」
「やはりそうか」
カイルは残念そうではなかった。ここには無いだろうと思っていたようだ。
「どうして、ないのかしら」
「私は行ったことはないが、神殿図書館の方にあるのだろう」
「神殿図書館?」
神殿図書館? 初めて聞く。
「ああ、あまり知られてないが、ミスラ教の本神殿にある。専門書ばかりだから神殿関係者くらいしか利用しないと聞いている」
そんなところがあるのか。でも困ったわ。そこに行くには、さすがに親の許可がいる。
「困ったわ、どうやっていこうかしら」
「君が行くのは無理だよ。私が調べてくるから、待っていなさい」
なんだか子供に言い聞かせるような話し方だ。年齢差を考えたら仕方ないけど、子供扱いされるのはなんだか不満だ。
でもここはカイルに任せるしかない。私では手にあまる。これ以上何か問題を起こせば問答無用で結婚させらることは間違いない。
「カイル伯爵、それではお願いするわ」
「任せてくれ。きっと何か良い方法が見つかるさ」
20
お気に入りに追加
2,562
あなたにおすすめの小説
元王妃は時間をさかのぼったため、今度は愛してもらえる様に、(殿下は論外)頑張るらしい。
あはははは
恋愛
本日わたくし、ユリア アーベントロートは、処刑されるそうです。
願わくは、来世は愛されて生きてみたいですね。
王妃になるために生まれ、王妃になるための血を吐くような教育にも耐えた、ユリアの真意はなんであっただろう。
わあああぁ 人々の歓声が上がる。そして王は言った。
「皆の者、悪女 ユリア アーベントロートは、処刑された!」
誰も知らない。知っていても誰も理解しない。しようとしない。彼女、ユリアの最後の言葉を。
「わたくしはただ、愛されたかっただけなのです。愛されたいと、思うことは、罪なのですか?愛されているのを見て、うらやましいと思うことは、いけないのですか?」
彼女が求めていたのは、権力でも地位でもなかった。彼女が本当に欲しかったのは、愛だった。
目を覚ましたら、婚約者に子供が出来ていました。
霙アルカ。
恋愛
目を覚ましたら、婚約者は私の幼馴染との間に子供を作っていました。
「でも、愛してるのは、ダリア君だけなんだ。」
いやいや、そんな事言われてもこれ以上一緒にいれるわけないでしょ。
※こちらは更新ゆっくりかもです。
初恋の呪縛
緑谷めい
恋愛
「エミリ。すまないが、これから暫くの間、俺の同僚のアーダの家に食事を作りに行ってくれないだろうか?」
王国騎士団の騎士である夫デニスにそう頼まれたエミリは、もちろん二つ返事で引き受けた。女性騎士のアーダは夫と同期だと聞いている。半年前にエミリとデニスが結婚した際に結婚パーティーの席で他の同僚達と共にデニスから紹介され、面識もある。
※ 全6話完結予定
結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?
秋月一花
恋愛
本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。
……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。
彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?
もう我慢の限界というものです。
「離婚してください」
「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」
白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?
あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。
※カクヨム様にも投稿しています。
貴方の事を愛していました
ハルン
恋愛
幼い頃から側に居る少し年上の彼が大好きだった。
家の繋がりの為だとしても、婚約した時は部屋に戻ってから一人で泣いてしまう程に嬉しかった。
彼は、婚約者として私を大切にしてくれた。
毎週のお茶会も
誕生日以外のプレゼントも
成人してからのパーティーのエスコートも
私をとても大切にしてくれている。
ーーけれど。
大切だからといって、愛しているとは限らない。
いつからだろう。
彼の視線の先に、一人の綺麗な女性の姿がある事に気が付いたのは。
誠実な彼は、この家同士の婚約の意味をきちんと理解している。だから、その女性と二人きりになる事も噂になる様な事は絶対にしなかった。
このままいけば、数ヶ月後には私達は結婚する。
ーーけれど、本当にそれでいいの?
だから私は決めたのだ。
「貴方の事を愛してました」
貴方を忘れる事を。
【完結】新婚生活初日から、旦那の幼馴染も同居するってどういうことですか?
よどら文鳥
恋愛
デザイナーのシェリル=アルブライデと、婚約相手のガルカ=デーギスの結婚式が無事に終わった。
予め購入していた新居に向かうと、そこにはガルカの幼馴染レムが待っていた。
「シェリル、レムと仲良くしてやってくれ。今日からこの家に一緒に住むんだから」
「え!? どういうことです!? 使用人としてレムさんを雇うということですか?」
シェリルは何も事情を聞かされていなかった。
「いや、特にそう堅苦しく縛らなくても良いだろう。自主的な行動ができるし俺の幼馴染だし」
どちらにしても、新居に使用人を雇う予定でいた。シェリルは旦那の知り合いなら仕方ないかと諦めるしかなかった。
「……わかりました。よろしくお願いしますね、レムさん」
「はーい」
同居生活が始まって割とすぐに、ガルカとレムの関係はただの幼馴染というわけではないことに気がつく。
シェリルは離婚も視野に入れたいが、できない理由があった。
だが、周りの協力があって状況が大きく変わっていくのだった。
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
悪役令嬢の腰巾着で婚約者に捨てられ断罪される役柄だと聞いたのですが、覚悟していた状況と随分違います。
夏笆(なつは)
恋愛
「ローズマリー、大変なの!わたくしは悪役令嬢で、あなたはその取り巻き。そして、わたくしたち断罪されてしまうのよ!」
ある日、親友の公爵令嬢リリーにそう言われた侯爵令嬢ローズマリーは、自分達が婚約破棄されたうえに断罪されるゲームの登場人物だと説明される。
婚約破棄はともかく、断罪は家の為にも避けなければ。
そう覚悟を決めたローズマリーだったが、物語のヒロインに見向きもしない婚約者にやたらと甘やかされ、かまわれて、もしかして違う覚悟が必要だったのでは、と首を傾げることになる。
このお話は、自分が悪役令嬢の腰巾着の役どころだと思っていた侯爵令嬢ローズマリーが、自身の婚約者に依ってゲームのストーリーの主人公のような扱いを受ける、溺愛ラブコメです。
小説家になろうに掲載しているもの(100話まで)を、加筆修正しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる