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今日の私は国立図書館に来ている。
 ここは前世からの私のお気に入りの場所だ。でも前世の時は家から遠かったのであまり来ることができなかった。
 今世はその点が違う。ミラー公爵邸は国立図書館と目と鼻の先にある。気軽にいつでも利用できるのだ。
侍女のメアリーを連れて今日も朝早くから図書館にこもっている。メアリーはいつものように私の傍から離れようとはしない。けれど今日はミスラ教のことを調べたいので遠慮してもらう。渋々だったが絶対に国立図書館からは出ないことを約束すると離れてくれた。彼女は大衆文学が好きなので、そちらで私を待ってくれることになった。この国立図書館からはその大衆文学が置かれている部屋を通らなければ外へ出ることは出来ないのでちょうど良いみたいだ。

「いつも来ているけどミスラ教関係の本は読んだことなかったわ」

 ブツブツと呟きながら本を眺める。
 この国立図書館には沢山のミスラ教関連の本がある。ほとんどがミスラ教から寄贈されたものらしい。長い歴史のあるミスラ教なので本の数が半端ない。
 いったいどこから手を付けていけばいいのかしら。途方に暮れるとはこのことか。

「とにかく真名についてだから、その関係の本から読めばいいかな」

 けれど、どれだけ探しても真名についての本は見つからない。これだけあるのにないなんて。端から端まで探して見つからない。探すだけで疲れてしまった。表紙に真名と書かれていないだけで中には書かれているのかもしれない。でもこれだけの量の本の中身を全部確かめるのは難しそうだ。

「あら? この本は……」

 輪廻転生について書かれている本が端のほうにある。そういえば輪廻転生についての本も見当たらなかった。これ一冊だけかもしれない。
 手に取ってみると、とても古い本だということがわかる。紙が最近の紙ではない。
 真名の本がないのだから、この本を読むことにした。
 古い本だけあって古語が使われている。習っているから読むことは出来るけど時間がかかる。

「うぅ……もっと勉強すればよかった」


 輪廻転生をしたという人々の話も書かれている。私以外にも輪廻転生した人がいたんだわ。不思議な気がしたけど、当たり前だわと思う。私がいるんだから、他にもいておかしくはない。

「まさか、こんなところで会うとは....」

  カイルの声が聞こえて顔を上げた。驚いた、ここでまたカイルと会うとは思わなかった。

「カイル伯爵はどうしてこちらに?」
「調べ物があってね。侍女はいないのか? 危ないだろう」

  カイルは私の傍に誰もいないのを見て、訝しげな顔だ。


「侍女には入り口の近くで待ってもらってるの」
「そうか。それで君も私と一緒で真名について調べようとしてるのかい?」
「ええ、グレース王女に言われるまで、真名を知ってることがすごく困ることだと気づいてなかったの」

  カイルは呆れたような顔で私を見る。そんな重要なことにも気づいていなかったのかという顔だ。

「それで何かわかりそうかい?」
「全然よ。こんなにたくさん本があるのに真名についての本はないみたい。輪廻転生について書かれた本もこれしかないのよ」
「やはりそうか」

  カイルは残念そうではなかった。ここには無いだろうと思っていたようだ。

「どうして、ないのかしら」
「私は行ったことはないが、神殿図書館の方にあるのだろう」
「神殿図書館?」

  神殿図書館?  初めて聞く。

「ああ、あまり知られてないが、ミスラ教の本神殿にある。専門書ばかりだから神殿関係者くらいしか利用しないと聞いている」

  そんなところがあるのか。でも困ったわ。そこに行くには、さすがに親の許可がいる。

「困ったわ、どうやっていこうかしら」
「君が行くのは無理だよ。私が調べてくるから、待っていなさい」

  なんだか子供に言い聞かせるような話し方だ。年齢差を考えたら仕方ないけど、子供扱いされるのはなんだか不満だ。
  でもここはカイルに任せるしかない。私では手にあまる。これ以上何か問題を起こせば問答無用で結婚させらることは間違いない。

「カイル伯爵、それではお願いするわ」
「任せてくれ。きっと何か良い方法が見つかるさ」











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