悪役令嬢は双子だった

小鳥遊郁

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悪役令嬢は見た

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「君は.....」

  第ニ王子のエリオットはヒロインである男爵令嬢のアリスの手を取って尋ねてる。

「アリス・アンダーソンです。助けてくれてありがとうございます」

  


「お姉さま。これは何ですか?」

  双子の妹のクララが聞いてくる。私たちは手を取り合って木の陰から二人を見てる。

「見てわからないの?  第二王子とヒロインの出会いのイベントよ。ここで出会ってからエリオットはヒロインが気になりだすの」

 「それは見てたらわかります。どうして私たちがそれを出歯亀してるのかということです」

「気になるからよ。私の未来がどうなるか見ておきたいでしょう?」

  クララは頭が良いと聞いてたけど間違いだったかしら。

「でもお姉さまの婚約者は第一王子のアンドリュー様でしょう?  これは関係ないのでは...というか、彼と付き合ってくれたら被害もなくて良いのではないですか?」

  ようやくイベントも終わりそうなので皇子たちから目を離してクララと向き合う。

「甘い、甘いわよクララ。悪役令嬢を舐めたらダメよ。ヒロインが誰を選んでも断罪されるのが悪役令嬢の宿命なのよ。ただ誰を選ぶかによって死刑は避けられるのよ。できればこの国からの追放が良いけど.....」

「一番良いのが追放なんですか? お姉さまが庶民として暮らしていけるとは思えませんよ」

「処刑されたり、60歳の5人も妻がいる男との結婚よりマシよ。転生前の私は六畳一間で暮らしてたんだから大丈夫よ。今は魔法も使えるし8歳の頃から頑張ってるのよ、お金は稼げるわ」

  クララは本当に優しい。こんな私のこと心配してくれるなんて、いい子だわ~。
  彼女のことを知ってから、お茶会(子供達の社交界)とかでいつもクララを見てた。身分違いということで話はできなかったけどこっそり眺めることは出来た。彼女には幸せになって欲しかった。私の宿命にクララを巻き込みたくなかった。下手をすればお家まで潰される可能性もあるのだ。
  それなのに.....、まさか家出が3日で終わることになるなんて。逃げ切れることもできたが、私を捕まえに来た男の手紙で帰ることにした。

『このままではクララ・グレゴリーは好色家で有名なゴートン・ギュンターの後妻に決まりそうだ』

  父上からの手紙だった。私の弱点を突いて....本当に嫌になる。狡猾な男だから家が没落することはないと思いたい。

「でも本当に便利な魔法ですね。《かくれんぼう》だったかしら、こんな魔法きいたこない。全然気づかれないなんて」

  クララが感心したように言う。目の前をアリスと第二王子とその取り巻きが通ったが誰にも気づかれない。ちょっとドキドキするけどね。

「ひいおばあ様からの遺伝よ。でもこの魔法のことはお父様とあなたしか知らないから黙っててね」

「わかったわ。でもこれを使ったら家出も成功しそうだけどどうして失敗したの?」

「まだ1日2時間しか使えないの。もう少しレベルを上げないとダメね。卒業イベントまでにもっと使えるように磨かないと......。万が一の時はこれを使って逃亡よ」

  クララは羨ましそうな顔で私を見てる。何か羨ましがられるような事言ったかしら?

「どうしたの?」

「魔法が使えていいなって思ったの」

  クララは魔法を習ったことがないみたい。同じ遺伝子なんだから使えるんじゃないかな。子爵家はお金がなかったから、魔法の家庭教師は雇えなかったのね。そうだわ。いいこと思いついた。

「クララ、今日から私があなたに魔法を教えるわ。家庭教師代は気にしないで。最悪な状況になった時に魔法で助けてくれたらいいから」

  私は可愛い妹に何かしたかった。魔法を教える事にすれば一緒にいる時間が増える。条件をつけたのは彼女が気にしないようにするためで本気ではない。ーー最悪の時は自分1人で乗り越えないとね。

  

  
  

  

 



  


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