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11 『魔女のポーション』1 ーマティアスside

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 その時の私はいきなり視線が低くなったことしかわからなかった。
 ポーションを飲み終わった途端、皆の足しか見えなくなったのだ。

「「「え? マ、マティアス団長? えーーーっ!」」」

 部下であるジャック、カイル、アルマンの戸惑ったような声が聞こえる。

「お前ら、足しか見えないぞ。どうなってるんだ?」

「どうなってるって、こっちが聞きたいですよ。団長ですよね」

「馬鹿なこと言ってないで、どうなっているのか説明しろ」

「どうなってるって、ネコ? 団長猫になってますよ!」

「ネコ???」

ふと足を上げてみれば、確かに猫の足だ。間違いない。
 だが認めたくない。
 何故猫になったんだ??

「私は普通にポーションを飲んだだけなんだぞ!」

「間違えて違うものを飲んでしまったのではないですか?」

「あの保存箱には魔女のポーションしか入ってないんだ。間違えようがないだろう」

 本日の業務中に魔物から怪我を負わされ、少々傷が深かったので冒険者ギルドで売っているポーションではなく魔女のポーション(中級)を飲んだ。 
 白い光が身を包んだのはいつもと同じだった。だがいつもと違って包まれた時間がほんの少し長かったような気がする。そして光がなくなった時には視界が変わっていたのだ。

「確かに。魔女印がついてますね」

 私が落としてしまった瓶を拾った部下のジャックが確かめてくれた。

「もしかしてこれが魔女の呪いじゃないですか?」

 アルマンが言う呪いとは、魔女マチルダとの契約を破棄した場合に降りかかるしれないと語り継がれていた呪いのことだ。

「あれは根拠のない噂に過ぎない、という結論がでている。その証拠に契約を破棄してから数ヶ月何もおこってないだろう」

「それはそうですが、猫になるなんて魔女の呪い以外考えられませんよ」

「そうですよ。絶対に魔女の呪いですって」

 確かに動物に姿を変える魔法など、魔女にしかできないような気がする。
 だがそれなら何故今になって? 魔女との契約が破棄されたのは一年近く前のことなのに。
 ああでもないこうでもないと意見を交わしていた時、またもや白い光に身体が包まれて、私は人間の姿に戻っていた。
 猫の姿になっていたのは、十分程度。

「どういうことだ?」

 猫の時は服を着ていなかったのに、人間に戻ると騎士団の服を着ていた。いったいどういった魔法なのか、検討もつかない。

「団長に分からないことが、私たちにわかるわけないでしょう」

 部下たちはいわゆる脳筋だ。考える気がそもそもないのか、

「猫の時も瞳の色は同じでしたね」

「毛並みも団長のイメージに合ってましたよ」

などと緊張感のかけらもないことを話している。
 他人事だと思ってのんきなものだ。これは同じ思いをさせないとな。




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