上 下
8 / 20

8 ケイシーとリリア

しおりを挟む
 アルフォンスには二歳下のリリアと言う名の妹がいたので、一緒に雇うことにした。
 リリアには店番をお願いしている。
 売れるものは『魔女のラーメン』と『魔女のスープ』くらいなので、計算も簡単だから問題ないだろう。

「命を助けていただいた上に仕事まで世話していただいてありがとうございます」

 仕事場に案内するとアルフォンスの母親、ケイシーが頭を下げてきた。

「命だなんて大げさですよ。頭をあげてください」


「いいえ。咳が続いている時に同じようにして亡くなった母を思い出しました。ポーションを買うお金もなく、薬師から買った薬はほんの気休めにしかならなかった。私はアルフォンスとリリアを残して死んでしまうのだと、あの世であの子たちの父親になんて言って謝ればいいのかと布団の中でずっと考えてました。あの『魔女のラーメン』には魔女ポーションと同じものを感じました。生き返る力を後押ししてくれるなんとも言えないもの。なんというか身体が作り変えられたとでもいうのでしょうか」

「ケイシーさんは魔女のポーションを飲んだことがあるのですか?」

「ええ、私が飲んだのは中級ポーションでした。私はこれでも元冒険者なんですよ。アルフォンスの父親と一緒にダンジョンにもぐってました。一度大火傷をして死にかけた時に彼が魔女のポーションを手に入れてくれたんです。冒険者ギルドで売っているポーションではなく、高価な『魔女のポーション』ですよ。びっくりしました。でも彼がケイシーの命には変えられないと。ふふ、ラーメンを食べた時に彼とのことを思い出しました」

 ごちそうさまです。もうお腹いっぱいですよ。
 それにしてもモニターとして彼女はとても役に立ってくれた。『魔女のラーメン プレミアム』には特級ポーションくらいの効果がある事がわかった。アルフォンスに渡した『魔女のラーメン プレミアム』には特級ポーションを混ぜていたので、同じ効き目を感じたということだろう。ラーメンに混ぜても効果は落ちないことが証明された。
 ケイシーは大火傷で死にかけていたと言っていた。そこまで怪我していた場合、中級ポーションでは火傷の痕は残るはずなのにみたところ全く残っていない。おそらくアルフォンスの父親は特級を中級と言って飲ませたのだろう。特級ポーションは白金貨10枚(100万エール)。命がかかっていてもなかなか手を出せないものだ。アルフォンスの父親は男前だよね。
 

 
 今回作るのはプレミアムではなく普通の『魔女のラーメン』と『魔女のスープ』。
 ケイシーには袋詰めをお願いした。時間がないので簡単に説明しただけだったけど、無駄がなく在庫のラーメンを次から次へと袋に詰めてくれる。
 それを横目で確認してから、私の方は魔法でラーメンを作る。
 麺を作るための材料を用意して、時間を短縮するために魔法を使う。あっという間に細く切られた麺ができる。これを一つずつまとめていくのは手作業。これは私がまとめているとケイシーが手伝いを申し出てくれたので、お願いする。麺を保存するための瞬間湯熱乾燥は魔法でパパッと仕上げていく。一つ一つ油で揚げていたら時間が足りないからね。
 麺を作った時にスープになる味もちょっとだけ元気になるものも入れてある。
 栄養満点即席ラーメンの出来上がり。これを『魔女のラーメン』と書かれている袋に入れていく。昔は騎士団にポーションをおさめていたので、その時に使用していた木の箱に入れていく。
 この調子でいけば間に合いそうだ。

 問題は『魔女のスープ』だよね。どうしようかなぁ。



 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈 
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

精霊に転生した少女は周りに溺愛される

紅葉
恋愛
ある日親の喧嘩に巻き込まれてしまい、刺されて人生を終わらせてしまった少女がいた 。 それを見た神様は新たな人生を与える 親のことで嫌気を指していた少女は人以外で転生させてくれるようにお願いした。神様はそれを了承して精霊に転生させることにした。 果たしてその少女は新たな精霊としての人生の中で幸せをつかめることができるのか‼️ 初めて書いてみました。気に入ってくれると嬉しいです!!ぜひ気楽に感想書いてください!

転生したので猫被ってたら気がつけば逆ハーレムを築いてました

市森 唯
恋愛
前世では極々平凡ながらも良くも悪くもそれなりな人生を送っていた私。 ……しかしある日突然キラキラとしたファンタジー要素満載の異世界へ転生してしまう。 それも平凡とは程遠い美少女に!!しかも貴族?!私中身は超絶平凡な一般人ですけど?! 上手くやっていけるわけ……あれ?意外と上手く猫被れてる? このままやっていけるんじゃ……へ?婚約者?社交界?いや、やっぱり無理です!! ※小説家になろう様でも投稿しています

私はモブのはず

シュミー
恋愛
 私はよくある乙女ゲーのモブに転生をした。   けど  モブなのに公爵家。そしてチート。さらには家族は美丈夫で、自慢じゃないけど、私もその内に入る。  モブじゃなかったっけ?しかも私のいる公爵家はちょっと特殊ときている。もう一度言おう。  私はモブじゃなかったっけ?  R-15は保険です。  ちょっと逆ハー気味かもしれない?の、かな?見る人によっては変わると思う。 注意:作者も注意しておりますが、誤字脱字が限りなく多い作品となっております。

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

二度目の人生は異世界で溺愛されています

ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。 ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。 加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。 おまけに女性が少ない世界のため 夫をたくさん持つことになりー…… 周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

処理中です...