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6.タイミング法とフーナーテストの失敗

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 というわけで、基本的な検査を進めつつ、クリニック主導でのタイミング法がスタートしました。
 方法としては、排卵日の少し前(私の場合は生理開始から11~13日目)に受診して血液検査と卵胞確認。
 排卵日を予測し、妊娠するために最適な性交渉のタイミングを教えていただくというものです。
 
 場合によってはクリニックで「36時間後に排卵する」注射を打つ場合もあります。
 
 スタートした月は13日目で受診。
 予約の30分前に来院して血液検査をして、予約時間に診察室で卵胞確認のためのエコーをして、結果を聞きます。
 「もうすぐ排卵しそうなので、今夜タイミングを取ってくださいね!」
 なんてことを先生から言われます。
 
 タイミングとは、要するに性交渉のこと。
 ・卵子が受精可能な時間は最大1日(もっと厳しくみると6時間程度という見方もあるとか)
 ・精子の寿命は2~3日
 成熟した卵子が卵巣から飛び出した(排卵した)瞬間に、子宮から卵管を泳いできた精子がすでに待ち構えている状態だとグッドタイミングみたいです。

 排卵される卵子はたった1個。
 でも精子の方は、人工授精の場合の調整後精液であっても、最低1100万が必要なのだとか。
 
 たった1個同士の卵子と精子の出会い……と昔、学校では習いましたが、精子は1000万以上が必要だなんて、現実は厳しいものですね。
 幸運にも授精が起こった場合、その受精卵は細胞分裂しながら卵管から子宮方面に戻っていき、約1週間後に子宮の壁に潜り始めます。
 これがいわゆる着床です。この時期には着床出血といって、薄いピンクや茶色のおりものが見られる場合があります。

 そしてフーナーテスト。
 これは性交渉の12時間後に頸管粘液を検査することで、
 1.精子が頸管粘液内で生存できるか
 2.頸管粘液が精子を受け入れる能力があるか
 をたしかめます。
(なお、この検査は精度がそれほど高くないとして実施しないクリニックも多いようです)

 つまり、クリニックの診察のちょうど12時間前に絶対に性交渉をしないといけないのです!

 これ、ものすごく大変でした。
 だって、クリニックの予約は火曜日の午前11時。つまり月曜日の23時に性交渉しないといけないのです。

 とはいえ私は30代の全てを妊活に捧げた、いわば「歴戦の妊活戦士」。
 絶対に指定日時に性交渉を持つのだという強い意志で、ティーンズラブ小説を日々読みまくり、またそこから得た貴重なインスピレーションで性癖をとことん煮詰めたような小説を執筆しています。
 だから絶対に大丈夫‼︎
 そう気合いを入れて指定日時に臨みました。

 ですが、夫は……。

 本当に残念なことに、プレッシャーがかかりすぎて、指定日時に性交渉をすることができなかったのです。

 翌日のクリニック。私は本当にどんよりとした表情で診察室に入りました。
 だって、予定では前夜に放たれた精子ちゃんたちが元気に泳いでいるかを検査してもらう予定だったんです。
 運動率が悪いから劇的に良い結果は得られないでしょうが、何匹くらい泳いでいるか、知りたかったです……!
 性交渉していないのだから、完全にゼロ匹です。私は一体、何をしにクリニックへ来たのでしょうか……!?

 明らかに落ち込んでいる様子の私を見て、先生は提案しました。
「気持ちを切り替えて、人工授精に進みましょう」と。
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