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第1話
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今日「私」は、最近流行のVR機器を手に入れた。商店街の「ハロウィン大セール福引き」で当てたのだ。
一等賞の海外旅行券を狙っていたため、必死に福引券を集めて挑んだのだが、当たったのは四等賞のVR機器のみだった。
よく分からないが、ヘッドセットに好きなシチュエーションを入力すると、希望に添った体験ができるらしい。
(四等賞だからたいしたものではなさそうだけれど、とりあえず、試してみるか。どんなのがいいかなあ)
VR体験といえば――ウェブ上で読めるエッチな小説によく登場するシチュエーションだ。これを枕詞よろしく導入に使えば、インモラルな内容も許容されてしまう。
VR機器を起動させると、シチュエーション設定画面が出てきた。
「ハロウィンの夜に、敬語の上司と職場で滅茶苦茶セックスする!」と、ごくごく軽い気持ちで入力する。
まったく期待はしていないが、もしかしたら面白い夢が見られるかもしれない――そう私は考えたのだ。
しかし、思えばこれが運の尽きだった。
私はヘッドセットを装着して、ベッドの上のシーツに寝転び、スタートを選択した。
するとオープニング映像とともに、ヴァーチャルながらもリアリティのある体験が始まったのだった――。
* * *
「う……ん?」
目を開けるとそこはオフィスだった。誰もいない。おそらく休日だ。
窓を見ると、ブラインド越しに西日が差している。季節は秋、時間帯は夕暮れと思われた。
ここはどこだろう? 私は一体どうしたのだろう? 頭がぼーっとしているせいか、状況がよく分からない。
とにかく起き上がろうとするが、上手く体が動かなかった。
「あ、あれ?」
そこでようやく自分が椅子に座っていることに気付いた。
白いワイシャツにグレーのチェックのベスト、紺色の膝丈タイトスカートという、事務員の制服を身につけている。
手を動かそうとするがやはり動かない。足はM字に開かれ拘束されており、同様に動かすことができない。
よくよく見れば、手は後ろ手に縛られ、脚も開かれた状態で椅子に拘束されている。
(ど、どういうこと?)
戸惑っていると、一人の男性が現れた。
その男は私を見てニヤリと笑った。
「ようこそ」
「えっ!? あっ! はい!」
いきなり呼ばれて驚く。どうして私の事を知っているのだろうか。
(この人は誰なんだろ……)
そう思いながら男の顔をじっと見る。整った顔立ちをしており、優しそうな印象を受ける。年齢は三十代前半といったところだろうか。
服装は紺色のスーツだ。髪の色は黒で肌は白い。切れ長の瞳に薄い唇。まるでこけしのようにきれいな男性である。
彼は私を見つめると、ゆっくりと口を開いた。
「ようやく目覚めましたね。あなたには、今から僕とセックスをしてもらいます」
「……へぇ?」
あまりにも唐突すぎる言葉に、思考が追いつかない。何が何だかさっぱり分からなかった。
「え? え? ちょ、ちょっと待ってください。あの……」
「はい、なんでしょう?」
「せ、セックスというのは、つまり、あの……そういうことで、合っていますよね?」
「もちろんですよ」
「じゃ、じゃあ私がこれからすることっていうのは……えっちなこと、ってことでしょうか?」
VRにエッチな指示をしたわりに、私は下ネタが苦手だ。
セックス、と口にするだけで、頬が赤くなるくらいに。
美しい顔をした男性から生々しい言葉が出ること自体に、私は早くもドキリとしてしまった。
「そうですね。まぁ簡単に言えばそうなります」
「で、でもっ、私……身動きができないんですけど!」
そう言うと、彼はニヤリと笑った。
「好都合じゃないですか。椅子に拘束されたあなたと、僕がセックスするんです。あなたは身動きが取れない。つまり、僕が好きなようにできるということです」
「そ、それはそうかもしれませんけど……」
「さて、それでは始めましょうか」
そう言って彼が近づいてくる。
「ふぇっ!? わ、分かりました。覚悟を決めます」
私はごくりと唾を飲み込んだ。
そうだ、これはVR。何も心配することはない。
今日「私」は、最近流行のVR機器を手に入れた。商店街の「ハロウィン大セール福引き」で当てたのだ。
一等賞の海外旅行券を狙っていたため、必死に福引券を集めて挑んだのだが、当たったのは四等賞のVR機器のみだった。
よく分からないが、ヘッドセットに好きなシチュエーションを入力すると、希望に添った体験ができるらしい。
(四等賞だからたいしたものではなさそうだけれど、とりあえず、試してみるか。どんなのがいいかなあ)
VR体験といえば――ウェブ上で読めるエッチな小説によく登場するシチュエーションだ。これを枕詞よろしく導入に使えば、インモラルな内容も許容されてしまう。
VR機器を起動させると、シチュエーション設定画面が出てきた。
「ハロウィンの夜に、敬語の上司と職場で滅茶苦茶セックスする!」と、ごくごく軽い気持ちで入力する。
まったく期待はしていないが、もしかしたら面白い夢が見られるかもしれない――そう私は考えたのだ。
しかし、思えばこれが運の尽きだった。
私はヘッドセットを装着して、ベッドの上のシーツに寝転び、スタートを選択した。
するとオープニング映像とともに、ヴァーチャルながらもリアリティのある体験が始まったのだった――。
* * *
「う……ん?」
目を開けるとそこはオフィスだった。誰もいない。おそらく休日だ。
窓を見ると、ブラインド越しに西日が差している。季節は秋、時間帯は夕暮れと思われた。
ここはどこだろう? 私は一体どうしたのだろう? 頭がぼーっとしているせいか、状況がよく分からない。
とにかく起き上がろうとするが、上手く体が動かなかった。
「あ、あれ?」
そこでようやく自分が椅子に座っていることに気付いた。
白いワイシャツにグレーのチェックのベスト、紺色の膝丈タイトスカートという、事務員の制服を身につけている。
手を動かそうとするがやはり動かない。足はM字に開かれ拘束されており、同様に動かすことができない。
よくよく見れば、手は後ろ手に縛られ、脚も開かれた状態で椅子に拘束されている。
(ど、どういうこと?)
戸惑っていると、一人の男性が現れた。
その男は私を見てニヤリと笑った。
「ようこそ」
「えっ!? あっ! はい!」
いきなり呼ばれて驚く。どうして私の事を知っているのだろうか。
(この人は誰なんだろ……)
そう思いながら男の顔をじっと見る。整った顔立ちをしており、優しそうな印象を受ける。年齢は三十代前半といったところだろうか。
服装は紺色のスーツだ。髪の色は黒で肌は白い。切れ長の瞳に薄い唇。まるでこけしのようにきれいな男性である。
彼は私を見つめると、ゆっくりと口を開いた。
「ようやく目覚めましたね。あなたには、今から僕とセックスをしてもらいます」
「……へぇ?」
あまりにも唐突すぎる言葉に、思考が追いつかない。何が何だかさっぱり分からなかった。
「え? え? ちょ、ちょっと待ってください。あの……」
「はい、なんでしょう?」
「せ、セックスというのは、つまり、あの……そういうことで、合っていますよね?」
「もちろんですよ」
「じゃ、じゃあ私がこれからすることっていうのは……えっちなこと、ってことでしょうか?」
VRにエッチな指示をしたわりに、私は下ネタが苦手だ。
セックス、と口にするだけで、頬が赤くなるくらいに。
美しい顔をした男性から生々しい言葉が出ること自体に、私は早くもドキリとしてしまった。
「そうですね。まぁ簡単に言えばそうなります」
「で、でもっ、私……身動きができないんですけど!」
そう言うと、彼はニヤリと笑った。
「好都合じゃないですか。椅子に拘束されたあなたと、僕がセックスするんです。あなたは身動きが取れない。つまり、僕が好きなようにできるということです」
「そ、それはそうかもしれませんけど……」
「さて、それでは始めましょうか」
そう言って彼が近づいてくる。
「ふぇっ!? わ、分かりました。覚悟を決めます」
私はごくりと唾を飲み込んだ。
そうだ、これはVR。何も心配することはない。
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