NSSO〈国家特別秘密組織〉

まっふん

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腹喰い事件1章

腹喰い事件3

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ガタンゴトンガタン……

翌朝、3人はチェストラからスティリンジット行きの列車に揺られていた。前日の夕方、チャーリーの言葉通り、越境許可証とメグに3人が来るという電報を入れたという手紙が届けられた。

「列車に乗るなんて、すごい久しぶり!NSSOに入ってから初めてだから、前に乗ったのは5年以上前か…」

ジュディが窓から見える景色を眺めながら言った。列車に乗ってからもう40分ぐらい経った。

「私もそれぐらい前かも。確か全寮制の学校を見学しに行った時かな…」

「わざわざ現地まで見に行ったの!?名前忘れたけど、知ってるよ…あのすごい勉強させられる学校でしょ?」

「うん、その学校。NSSOに入っていなかったら、入れられるところだったの…」

「えぇ…そうだったんだ…ジェシカって何でNSSOに入ったの?今更だけど。」

NSSOが設立されたのは、イザベラが15歳の時だった。入れる年齢も15歳からだったため、ほとんどのメンバーが同い年か1つ上である。15歳の様々な環境で育った彼女たちが同じ屋根の下で暮らし、毎日訓練を受けていく中で、様々な問題が生じた。最大の問題は、やはりいわゆる地区に住んでいる人間とスラム街出身のメンバーの格差である。その差は組織に入った時から明確であり、読み書きや身体付き・礼儀や持っている物・価値観など、多くの面で違いがあった。スラム街出身のメンバー内でも格差があったので、一般家庭から来たメンバーとの格差は歴然たるものだった。それを理解していたチャーリーは、一般家庭からは自ら選ぶことはしなかった。つまり、ジェシカもジュディも自らNSSOに入ったのだ。また、チャーリーは組織内での仲間割れが起きないようにするために、全員に同じものを同じ量与え、常に平等に接し、自らの過去や出身について話すことを19歳まで禁止とした。
だから、未だに出身がはっきりとしていないメンバーや、何故NSSOに入ったのか互いに分かっていないメンバーが多いのである。

「私は…イザベラに誘われたからだよ。全寮制の学校に入れられそうになっていた時期、私は親からの圧に堪えられなくて、初めて反抗したの…そしたら、大喧嘩になっちゃって。で、その足で家を飛び出しちゃったら、入り組んだところに行ってしまって迷子になったの。そこでまあ、色々とあって助けてくれたのがイザベラ。」

「おぉ~恩人ってやつだね」

「そうね。その時に誘われて、チャーリーさんに志願しに行ったなぁ…」

「じゃあ、イザベラに会っていなかったら、ここにいなかった訳なんだね。」

「まさに全寮制の学校で机にしがみついている所だったわ…イザベラは何でNSSOに誘われたんだっけ?」

「んー…あんまり覚えてないけど、寒さと飢えで路地でぶっ倒れてたら、チャーリー・フォーウェルという天使に助けられて、そのお礼に入ったかな。」

「天使か…すごい理由だね…」

ジェシカとジュディが苦笑した。

「ラベンダーとルージュみたいに何かの能力を見初められてとかじゃないからなぁ…そういうジュディは何だっけ?お兄ちゃんだっけ。」

「そう!お兄ちゃんが消防士をしているから、私も誰かを守りたいって思って…でも始めはそんな気持ちで訓練務まるの?ってすごく言われたけどね…」

「でもジュディを入れたのは正解だったね。ジュディより攻撃力が高い人はいないし。」

「うん。昔から怪力だったし、お兄ちゃんとよく喧嘩してたから鍛えられてたのかな~」

「絶対にそれだね…っていうか、まだ出発して40分しか経っていないのに本当にチェストラを離れると侘しいね。」

ジェシカがそう言って、窓の外を指さした。確かにチェストラからそう離れてはいないものの、草原と畑が広がっており、農業を営んでいるであろう人たちの家が数件立ち並んでいるぐらいだ。

「チェストラって本当にチェストラ国の首都ってことがすごくよく分かるよ…スティリンジットは第二の都市だよね?」

「そう、スティリンジットは芸術に長けた人が多い都市なんだよ!チェストラにもオペラ座があるけど、スティリンジットにはチェストラ最古のオペラ座があるし、音楽の有名専門学校があったり、住宅が少ない分、公園が多いから街のあちこちで絵の練習をしている人を見れるの!」

オペラに詳しいジュディが一気にまくし立てた。

「「へぇ~」」

「実はチェストラのオペラ座より、スティリンジットのオペラ座で舞台に立てることの方が芸術家達の間では名誉なことだから、メグさんは本当にすごいと思う!」

「メグさん、オーケストラの団員として活躍しているのに、どういう流れで創設者の一人になったんだろうね。」

ジェシカがメグの名前を聞いて、そう言った。

「確かに、あちこち行っているなら、チャーリーさんと接触する機会もなかなか無いはずだもんね」

「聞いてみたいけど、チャーリーさんとさえそんなに仲良くないのに、メグさんにはいきなり聞きづらいなぁ…」

「確かにね…」

ジェシカとイザベラはジュディの言葉にため息をついて、窓の外を見た。





「…えーっと、イーリス通り4の15番地…4の9、10、11……」

スティリンジットについた3人は事前にチャーリーから渡された地図を基に、メグが居候している場所に向かって歩いていた。

「14、15!ここだ!」

ジュディが15とドアに金文字で書かれた家を指さした。

「よし…じゃあ、入りますか。」

イザベラはそう言うと、2人の前に立ち、ドアノッカーで3回ドアを叩いた。

パタパタパタ…

「…どちら様?」

「おはようございます。昨日、メグ・ヴァイオレットさんに電報を送った者です。メグさんはいらっしゃいますか?」

「あぁ、メグから聞いたわ。電報にあった御三方なのね。どうぞ、入って。」

そう言うと、ドアを開けた人物は3人を招き入れた。

「朝から大変ね。私はメグの姉、マージよ、よろしく。」

「イザベラ・チャンです。朝から失礼します。」

「ジェシカ・マシューです。」

「ジュディ・ストマーです。」

3人は順にマージと握手していった。

「メグを呼ぶから、ちょっと待っててね。」

マージはそう言うと3人を居間に案内し、椅子に座るように勧め、メグを呼びに立ち去った。

「おねえさんがいるんだね…創設者って偉大なイメージだったから、家族がいることに普通にびっくりしてしまった…」

「そもそもおねえさんはNSSOのこと、知っているのかな?」

「さぁ…?」

ひそひそと話していたが、階段を降りてくる音がしたので3人は口をつぐんだ。

「あら3人とも、よく来てくれたね。お久しぶり。」

マージとは違う丸っこい声がし、3人が振り向くと茶髪をシニヨンにし、黒い縁取りの眼鏡をかけた小柄な女性が居間の入り口に立っていた。


※次話は2/23予定です。
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