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腹喰い事件1章
始まりの事件
しおりを挟むゴロゴロゴロゴロ…
少年は口から血を吐いた。
「グッ…ヴッ…ゲホッゲホッ…」
「おい!ここに血があるぞ!まだこの近くにいるはずだ、探せ!」
雨の中、数人の男たちの足音と怒号がする。少年はふらつく足取りでできる限り男たちの反対方向に進んだ。誰か助けてくれ、誰か、、少年はだんだんと遠のいていく意識の中、必死で歩いた。
「あいつはまだ完全に傷が治っていない。今は見つからなくても時期にすぐ見つかる。躍起になるな」
すぐ近くで声が聞こえた。少年は自分の運命がどうなるのか悟った。もう助かる見込みはない。それならば、奴らに見つからずにそっと死んでしまいたい。少年は暗い路地を見渡した。どこか隠れられる場所はないか、奴らに見つかりそうにないところ……あった。少年は開いてきた腹の傷の血がこれ以上流れないように、抑えながらゴミ箱に近づいた。少々生臭いがあまり使われていないゴミ箱そうだ。彼は、最後の力を振り絞って、中に入った。そしてふたを閉めた。きっとこの雨で血は流れるだろう。嫌な死にざまだが、彼らに殺されるよりましだ。少年は、消えゆく意識にあらがわずにそっと目をつむった。
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「ふあぁぁぁぁあぁあ~~」
差し込む朝日と上の騒がしさから、イザベラは目を覚ました。確か上はケリーの部屋だ。何をしても行動が大きいので、存在が分かりやすい。今日は休日。のんびりしたい。久しぶりに朝から散歩でも行こう。そう考えたイザベラはパジャマのまま、階段を降りて朝ご飯を食べに行った。
「おはよう」
もう着替えて新聞を読んでいたキーラが声をかけた。
「おはよう、コーヒーまだ残ってる?」
「あるよ、私飲めないから多めに飲んでもいいよ。」
ありがとうと言うと、イザベラはマグにコーヒーを注いで、パンを切って、チーズをのせて焼いた。しばらくするとチーズの香ばしい匂いがしてきたのでパンを引き上げた。数人しかいない大人数用の長テーブルに座って、朝食を食べるのは少し寂しいが、1人でのんびりするにはもってこいだ。
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朝食を終えて2階に戻ったイザベラが、着替えて玄関に向かうとジュディが出てきた。おはようと軽く挨拶するとイザベラは外に出た。秋に入ったチェストラは多少寒い。コートを着たイザベラは広場に向かう道を歩き出した。NSSOの館は広場に向かう通りに面しているため、広場でやっている朝市に向かう人が多い。人の流れに沿いながら、イザベラは広場まで出てきた。チェストラの広場は大きな朝市を行っても余裕なほど広い。広場の周りには、観光に訪れた人のためのホテルやおしゃれなカフェなどが立ち並んでいる。そして中央奥には美術館と博物館が合併した巨大な建物がある。チェストラ中の有名な絵画や他国のものも展示されているので、あちこちから観光客が来るのだ。イザベラは広場を横目に見ながら、真ん中までいったところで右に大通りを曲がっていた。この通りは人が集まる建物が無いので、落ち着いていて紅葉をゆっくりと楽しめるのだ。二つ目の角にある新聞社の横を曲がろうとしたとき、イザベラは左に大勢の人がいるのを見た。黒色のパンツに赤い線が入ったジャケット。金色の紋章がついた帽子。警察だ。あの人数は殺人事件レベルだ。余ほどのことがない限り、NSSOに仕事が回ってくることはないだろう…そう考えたイザベラが足早に去ろうとしたとき、
「ベラじゃん、何してんのここで」
「ナルシッサさん…あ、おはようございます。」
NSSOの訓練を行っていたナルシッサ・ドッグウェルが声をかけてきた。茶髪のショートカットに制服がよく似合っている。イザベラはナルシッサさんなら仕方がないと腹をくくった。
「朝から多いですね…何があったんですか?」
「ゴミ箱に捨てられた少年の遺体が見つかったんだよ…かわいそうに腹に傷があったんだ」
「傷…ですか、何者かに刺されたんですかね?」
「いやそうだとしても奇妙なんだよね、普通刺してゴミ箱に捨てる?あのゴミ箱は近くのアパートの人たちが使っているゴミ箱らしいし。川に流すとか、人気のない山に捨てるとかあるじゃん。」
「あ~、犯人がこの地域について詳しく無かったかですね」
「そう、その説が一番高いよ。でも昨日はひどい雨だったから、少年がどのようにして逃げたのかもわからないし、目撃者もいないんだ。」
「捜査が難航しそうってことですね」
「そういうこと。この事件が続けば、NSSOに依頼するかもね」
「強盗ならまだしも、凄惨な事件は免疫ないんで来ないことを祈ってます」
「私も君たちに依頼しないことを祈ってるよ、せっかくの休日なのに現場に立ち会うことになってしまって申し訳ないな、他の捜査官に目を付けられる前に帰りな。」
「そうですね、ありがとうございます。これで失礼します」
イザベラは軽く会釈すると足早にその場を去った。こんな日に殺人事件課の人に目を付けられたら、捜査に参加されられるに決まっている。さすがはナルシッサさんと心の中で思いながら、帰路をたどった。
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「ただいま~」
「おかえりー、どこ行ってたの?」
ダイニングルームの机を拭いていたリリーが声をかけてきた。
「おはようリリー、散歩にいってたんだけどさ、捜査中のナルシッサさんにあったから、秒で帰ってきた」
「そうなんだ、また事件起こった感じか。土曜なのに大変だね」
「そうね、脱帽だわ」
イザベラはそう返すと自室に戻るための階段を上がった。二階ではユリエとジェシカが何やら話し合っている。部屋に帰ったイザベラはコートをかけて、月曜日にチャーリーに提出しないといけない予定表を取り出した。イザベラにはNSSOが担当した方がよい事件の見極めの他にも、NSSOの1週間の予定を提出しないといけない。彼女たちにこのように厚い待遇があるのは、警察が個人への給料以外にも税金の一部を回して、NSSOが機能するように手助けしてくれているからだ。優遇してもらうにはNSSOがどのようにお金を使うかなどを明白にしておかなければならないというチャーリーのアドバイスの下で、イザベラや他の数人に書類作成を手伝ってもらっている。イザベラはペンとインクを取り出すと、いつも行なっている各々の訓練の内容から書き始めた。
※イザベラの人物情報を更新しました。
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