1 / 3
1-Revival
Underground Strategy
しおりを挟む母国に殺される。
この気持ちが分かるだろうか。
ー AM2:40 第4シェルター管轄地域 ルタ
荒廃した空間。機械の残骸が至るところに廃棄され、ここに生物は存在しない。
現代においては見放された地域であるが、常に輝き続ける人工太陽が凹凸だらけの地上を照らしていた。
ここで、二人分の息が切れそうになっていた。
第4シェルターを出発して、走り続けておよそ1時間が経過しようとしていた。
地下の世界では太陽の動きによる朝と夜の区別が付かない。体感と数字が示す時間を頼りにするしかない。
地上の世界を知らない国民にとっては差が分からないが、地上に比べて空気の濃度も低い。
この数ヶ月の間で遂に国家は地下シェルターへの侵攻を始めていた。
国家との抗争に打ち勝つため、ウル・リズナエルは国家に徴兵された幼なじみのジョニー・アクセラと共に地下荒野ルタを走り続けていた。
目的は、この地に眠る伝説の戦士の力を借りることであった。
今の地下シェルターに住む国民、そしてウルにとってこれが生き延びるための最後の手段であった。
「ウル!やはり危険だ!たった今上官からの連絡があった。既に第3シェルターの制圧が完遂したらしい。お前と家族の安全は必ず守る。だから、これ以上進むな!」
鉄鋼並みの強度を誇りながらも、超軽量化された黒い武装を身にまとう青年は、ゴーグルを外してウルに警告をする。
彼の名はジョニー。彼は元々第4シェルター出身の青年であり、徴兵制度により国家に仕えることとなった。
しかし、あくまで第4シェルターの監視役として採用されただけであり、上級国民とは根本的に身分が異なる。
彼もまたウルと同じく地下での生活を強いられてきて育ってきたのだ。
ウルの強い意志によって同行させられて、二人はこの地域を訪れたのである。
ここは管轄地域とはいえ、国家から見放された場所である。旧式の自律型“テクノ”が跋扈しているのだ。
当然安全地帯ではなく、身体が危ぶまれる可能性は大いに有る。
ジョニーの言葉に応える。その言葉には確固たる決意があった。
「私たちは...戦わなければならないの。これ以上、国家の思うようにはさせないわ!」
ウルは肩まで伸びた茶褐色の髪をなびかせ、淡い桃色の衣服は汗を滲ませ、転倒したことで土色が移っていた。
地下荒野とはいえ、この地域は千年前、まだ国民が二つに分かれる前に繁栄していた。
現在は地下に埋められ、ゴーストタウンと化している。
そして、二人は千年前に竣工された“テクノ”の研究開発ラボに到着した。
ウル達が幼少期より言い伝えられた伝説と同じ光景がそこには広がっていた。
千年前、当時世界規模の大戦が行われていた。史実では第二次テクノ大戦と呼ばれ、大量の自律型“テクノ”が世界各国で開発されていた。
そして、このラボで一体のテクノが開発された。そのスペックは当時の汎用的なモデルを圧倒的に凌駕するものであった。
今となっては、テクノは軍事のみならず政治経済、そして生活においても必要不可欠なものである。
当時第二次テクノ大戦後、長らく各国は冷戦状態を貫いてきた。それにより数多くのテクノが処分され、追放されてきた時代もあった。
この地に眠る戦士もその内の一体なのだ。
ウル、ジョニーはラボのエントランスを抜けて、内部へと進入する。
内部には、開発資料、工作機械等がそのまま放置されており、その当時の光景を彷彿とさせる。
「…カイラスの理論。随分古い書物ね」
「この機械もほこりを被ってるぞ…本当にこんな物が残っていたんだな」
この施設の中は、時間が止まっていたようである。今となっては実際に見たことのない設備が多く並んでいた。
奥へと進むと、更に内部へと続くゲートがあり、横には開閉用のスイッチが設けられていた。
しかし、電源が落とされており機能していない。
「...メインブレーカーを探しましょう」
「お、おい!…ったく…」
ジョニーは彼女の勢いに押されて、渋々ながらも共にブレーカーを探索することにした。
ウルは昔から知る仲である。ジョニーがサーベランサーとなった今となっては立場が違うが、内心どこかで彼女を放っておけないのだ。
二人は手分けして内部を散策し始めた。
ー 薄暗い部屋に入ると、そこにはほこりを被ったままの機械設備がいくつか置かれていた。
部屋をくまなく探していると、施設内の電気を管理するメインブレーカーを発見する。
それに手を伸ばそうとした時である。四足歩行体のテクノが崩れるように大きな音を立てて倒れる。
「きゃっ!?」
思わず声を漏らして驚き、後ろを振り返ると長い年月を経て朽ち果てた電子基板が露出していた。
どんな事が起きるか分からない。不安な気持ちを必死に押し殺すまでに10秒ほど要した。
彼女は気を取り直して、メインブレーカーを操作することで、施設内は時間が動いたように、照明に明るさが戻っていく。
ー メインブレーカー ログイン。
機能を再開致します。
単調で無機質な音声が流れた後、ウルはジョニーと合流する。
先程のゲートの前に向かいスイッチを起動させると、閉ざされていた道が姿を現した。
「…行きましょう」
ー 通路を歩き続けると、そこには先程までとは打って変わり苔が生えたカプセルが立ち並んでいた。
その最深部に一台のカプセルが置かれていた。二人は恐る恐る内部に顔を近付ける。
そこには、赤みを帯びた長髪、鼻が高く端正な顔をした人間が眠っていた。まるで、生身の人間が休息しているように横たわっていた。
「…赤い髪のテクノ。間違いないわ。
彼が…伝説の戦士“ラヴァン”!!」
彼女は焦る気持ちが抑えきれなくなり、カプセルの横に設置されていたコンピュータを操作する。
ウルはシェルターにおいて、テクノに関するエンジニアとして従事している。そのためこの手の操作は難なくこなせるのである。
数分ほど操作すると、再び機械音声によってアナウンスされる。
ー テクノコードACG751-3019 ラヴァン
インストールを開始致します。
トラップシステムA 発動。
アナウンスが終了すると、天井部から巨大な人型型テクノが地が揺れるほどの衝撃と共に出現する。
そのテクノには強硬な鋼の武装が施されており、ボディが摺動音を立てると、二人に接近してくる。
ラヴァンを再起動させるために必要なプログラムをインストールすると同時に、仕掛けられていたトラップが発動されてしまったのである。
大型テクノは全長5mを超えるほどの巨体であり、指を折り曲げて鉄球のごとく大きな拳を振り下ろしてくる。
規格外のサイズの敵を目の前にしたウルは、腰を抜かしてしまう程恐怖を覚える。ジョニーは彼女の手を引いてその場から距離を置く。
「そこにいろ!ここは俺が何とかする!」
ジョニーも恐れを抱きながらも、ウルを守るために国家から支給された電磁銃を手に取る。
トリガーを引いてテクノへとレーザーを放つ。しかし、それはテクノのボディには通用しない。
少しばかりボディを押し退けるが、ほとんど効力が無いように伺える。二人は思わぬ刺客に生命の存続が危ぶまれていた。
0
あなたにおすすめの小説
本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~
bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる