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夢咲はるか

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 ――今から2年前――。

「「「ねえ。一緒にお喋りしない?」」」

 以前から仲が良かった3人が独りぼっちだった由香に声をかけたのは、友達になろうとしたからではありません。彼女達は、飯田由香で遊ぶために――見下したり小馬鹿にしたり等々、ストレスの捌け口にするために声をかけ、この関係を築いたのです。
 なのでこの3人だけの世界は、由香の悪い話題で一杯。
 教室で隠し撮りをした一際ブサイクに映った写真をアップしてみたり、似合わない服を着せて撮った写真を上げてみたり、首から上をアプリで加工して生首を作ってみたり。露見すれば即大問題になってしまうことが、ずっとずっと行われていたのです。

《今朝ママと喧嘩してイライラしてたけど、アレで全部吹っ飛んだわ。あの顔にあの服は、破壊力ありすぎ」
《逆にどーやったら、あそこまで酷くなれるんだろーね。もしミサが由香ちゃんだったら、100%自殺してるー》
《耐えられない、よね。あんな顔で生きてくなんて地獄で、ふつー転生して次のチャンスを狙うよね》
《はいはい注目。ここでユカ先生から、有難いお言葉があります》

『ブスは努力でカバーできます。みんな死なないで!』

 由香の写真に文字を合成したものがアップされ、奈々はベッド上で転げ回って大笑い。しばらくヒーヒー言ってベッドを叩き、笑い涙を拭ってタブレットに再び触れます。

《アンタ、カバーできてないからっ! ブスのままだからっ! 一番先に死なないといけないヤツだからっっっ!》
《この由香ちゃん、なんでこんなに強気なのーっっ! 自分は脱ブサイクしてると思ってるトコも最高ーっ!》

『私はこのサプリメントで、ブスから卒業できました。これが今と昔の写真です』

《ぶっ。どっちもブスじゃんっ! 全然卒業できてないじゃんっ!》
《広子ちゃん、もーやめてーっ! ミサたち笑い死にしちゃうからーっ!》
《しょうがないわね、今日はこの辺にしといてあげるわ。アンタらが死んだら笑い合う仲間がいなくなるし、丁度面白い企画が成立したことだしね》
「面白い、企画? なになに……?」

 ベッドで仰向けになっていた奈々は、呟きながらフリックとタップ。何があるの? と、文字で尋ねました。

《今日の帰り道でさ。ユカが、『明日両親がいなくて一人なんですよ』って言ってたでしょ?》
《あー。言ってたねーっ》
《だから泊まりに行ってあげるよって送ってて、『お願いします』と来たワケ。んでその結果、『ユカのお宅訪問~勝手に部屋を物色しましょう~』という企画を出来るようになったワケ』
《部屋を物色!? なにそれ最高じゃんっ!》
《そういやあたし達って、一回もアイツの家に泊まったことがなかったでしょ? だからこの機会に、攻めてみようかなって思ったの》
《広子ちゃん、アナタは天才かあっ! ミサ、今からワクワクしてきたよ……っ!》
《パジャマとか部屋着とか下着を、できるだけ撮ってくるわ。明後日のこの時間をお楽しみに》

 こうして3人にとって大イベントの開催が決まり、この日も1時間ほどSNSの空間に滞在。3人はそれぞれ好きな形でストレスを解消し、充実した一日が終わったのでした。

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