【完結】純血の姫と誓約の騎士たち〜紅き契約と滅びの呪い〜

来栖れいな

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第三章:堕ちた月、騎士たちの誓約

第28話・微かな反応

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ユリウスは、ルナフィエラの手にそっと触れたまま、魔力を流し込んだ。

彼の指先から、穏やかで精密な魔力の波が流れ込んでいく。

——吸収されるだけかと思われた。

しかし——

ルナフィエラの指が、わずかに動いた。

「……!」

ヴィクトルが息をのむ。
フィンとシグも驚き、ルナフィエラの手元を凝視した。

「……ルナ様……?」

ヴィクトルが そっと名前を呼ぶ。

——返事はない。

しかし、確かに指が微かに動いた。

ユリウスは、 その反応を見逃さず、さらに慎重に魔力を送り込む。

「……まだ、生きている」

彼の言葉に、フィンが 小さく息を吐く。

「魔力供給で、少しずつ意識を戻せるかもしれない……」

フィンはすぐにルナフィエラの額に手を当て、優しく魔力を送り込んだ。

「お願いだ……ルナ、目を開けて」

——静寂が支配する。

ルナフィエラの瞳は、まだ閉じたまま。

だが、わずかに指が動いたことで、4人の絶望の淵にわずかな光が差し込んだ。

「……まだ、間に合う」

ヴィクトルが強く言い切った。

彼の紅い瞳は、決してルナフィエラを諦めないという確固たる決意に満ちていた。


——————

ルナフィエラの指がわずかに動いたことで、4人の間に希望が生まれた。

「……まだ、間に合う」

ヴィクトルがそう言い切ると、フィンが静かにルナフィエラの額に手を当てた。

「なら……僕は……できる限りのことをする」

フィンの緑の瞳が静かに輝く。

そして——

彼は、自身の魔力を限界まで注ぎ込んだ。

穏やかで温かな治癒魔法が、 光の粒子となってルナフィエラの体に染み込んでいく。

「……フィン、無理をするな」

シグが 警告する。

「……ルナを救うためなら、僕の魔力なんて惜しくない」

フィンの 表情は決して揺るがない。

彼の魔力が、 淡い光となってルナフィエラの体を包み込む。

「……ッ」

だが、徐々にフィンの顔が青ざめていく。

視界が霞み、 手が震え始める。

(もう……少し……)

彼は耐えながら、魔力をさらに送り込む。

——その瞬間。

「フィン、もうやめろ」

シグが止めるよりも早く——

フィンの体が前のめりに崩れ落ちた。

「……ッ!」

ヴィクトルがすぐに支える。

フィンは完全に意識を失っていた。

「……魔力を、使いすぎたな」

ユリウスが 額に手を当てながら言う。

彼自身も魔力を消費しすぎていた。

ふらつく体を壁に預けながら、 深く息を吐く。

(それでも……ルナの呼吸は、少し安定してきた)

ルナの胸が、 微かに規則的に上下している。

今までか細かった呼吸が、ほんのわずかではあるが落ち着きを取り戻しつつあった。

「……あとは、待つしかないか」

シグが低く呟く。

魔力の限界を超えた2人を気遣いながら、ルナフィエラの回復を願う4人——。

今はただ、 彼女が再び目を覚ますことを祈るしかなかった。


それから 2日が経過した。

しかし、ルナフィエラの容体は変わらなかった。

呼吸は浅く、まるで眠り続けているかのように微動だにしない。

——ただ、悪化していないことだけが、唯一の救いだった。

それでも 彼女の顔色は依然として青白く、手足の冷たさも抜けない。

このままでは回復どころか、緩やかに衰弱していく可能性もあった。

「……お願いします。ルナ様」

ヴィクトルがそっとルナの手を握り、静かに囁く。

「どうか、目を覚ましてください……」

彼の紅い瞳はどこまでも切なく揺れていた。

この2日間——

フィンは魔力が回復するたび、何度もルナフィエラに注ぎ続けた。

「……何もできないなんて、嫌だ」

彼は何度魔力を枯渇させても、回復するたびにすぐ治癒魔法を施す。

「少しでも……少しでも、君が楽になるように……」

ルナフィエラに語りかけながら彼は己の魔力を惜しみなく注ぎ続けた。

——ヴィクトル、シグもまた、同じだった。

「……足りないなら、俺も使え」

シグは自身の魔力をフィンに分け与えながら、ルナフィエラの枕元に座る。

シグの温かい手がルナの額にそっと触れた。

「……お前がいないと、つまらないだろうが」

彼は不器用な言葉を紡ぎながらも、 ずっとルナフィエラのそばにいた。

——ユリウスもまた、静かにルナフィエラを見守っていた。

彼は魔法陣を展開し、ルナの体調を精査していたが、やはり決定的な打開策は見つからない。

「……お前らの献身的な魔力供給がなければ、すでに彼女は危険だったかもしれないな」

彼は軽くため息をつきながら、魔法の陣を解く。

「ただ……このままでは、ジリ貧だ」

ルナフィエラが目を覚まさなければ、いくら魔力を注いでも根本的な回復にはならない。

ユリウスはそれを誰よりも理解していた。

(……俺たちは、あとどれほど彼女を繋ぎ止められる?)

不安が募る中、それでも彼らは諦めなかった。

ルナフィエラの命の灯火を 決して消させないために——。
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