黒猫通れば、祓い屋あり

華蝶楓月

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一章

-伍- 噂の出所

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 次の日、私は再びあの神社へと足を運んだ。
 昨日来た時と同じ所から神社の方へ向かう。

「……階段」

 そしてあの長い階段を登るのであった。
 案の定、神社に辿り着く頃には疲れ果ててしまっていた。
 肩で息をしながら座り込んでいると、背後から近付いてくる影が見えた。
 振り返ってみると、そこに立っていたのは燐という男性だった。
 燐という男性は私を見るなり、いぶかしげな顔をする。

「何をしてるんだ?」

 私はゼーゼー言いながらも一言だけ伝える。

「……水、ください……」

 なんともデジャブな状況だと思いながら、私は倒れた。




 冷たい水を一気に喉へ流し込みながら、私は何とか生き返った。

(あぁー、助かったぁー……)

 昨日も死に掛け、今日も死に掛けるところだった。

「もう一杯お注ぎしますね」

 圭さんは空になったコップに水を注いでくれた。

「ありがとうございます。昨日と今日に続いてすみません」
「いいえ、あそこの石階段は急ですからね。私も配慮が足らず、申し訳ありません」

 体力の無い私の所為にも関わらず、何故か圭さんが謝る。何だか申し訳なくなって来た。

「あっ、いえ、私が運動音痴なだけなので気にしないでください!」

 そんなこんなでお互い気を使い合っていると、横でつまらなそうに私達の遣り取り見ながら座っている燐という男性が口を開いた。

「おい、お前らのその遣り取りは正直どうでもいい。取り敢えず、話進めるぞ?」
「「あっ、はい……」」

 私と圭さんは有無を言わさず黙るのだった。

「で、現地に向かう前に少しだけ聞きたい。呪いの鏡と言ったか? 肝試しで行ったのなら、そういった噂を耳にしたかやろうと思ったんだろう?」
「えっ、あっ、はい」
「なら、どこでその噂を耳にしたんだ?」

 噂のルーツを聞かれ、考える。
 噂は確かに知っていた。だが、人伝で聞いてる為、誰が発信源かまでは分からなかった。

「SNSでも噂話として広がってるから、誰がその噂を流したのか分からないんです」

 燐という男性は少し考えて、やがて頭の整理が出来たのか、立ち上がる。

「取り敢えず、今から現場に向かう。圭、この呪いの鏡の出所ついて詳しく調べてくれるか?」
「分かりました」
「何か分かったら連絡しろ」
「はい」

 圭さんは立ち上がり、奥の方へと消えていった。
 私はどうしたいいのか分からず、ただ動けずにいた。

「おい、何やってる。お前は俺と一緒に現場に向かうんだよ。さっさとしろ」

 そう言うなり、燐という男性は行ってしまった。
 私は慌てて立ち上がり、急いで後を追った。

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