6 / 9
一章
-伍- 噂の出所
しおりを挟む次の日、私は再びあの神社へと足を運んだ。
昨日来た時と同じ所から神社の方へ向かう。
「……階段」
そしてあの長い階段を登るのであった。
案の定、神社に辿り着く頃には疲れ果ててしまっていた。
肩で息をしながら座り込んでいると、背後から近付いてくる影が見えた。
振り返ってみると、そこに立っていたのは燐という男性だった。
燐という男性は私を見るなり、訝しげな顔をする。
「何をしてるんだ?」
私はゼーゼー言いながらも一言だけ伝える。
「……水、ください……」
なんともデジャブな状況だと思いながら、私は倒れた。
冷たい水を一気に喉へ流し込みながら、私は何とか生き返った。
(あぁー、助かったぁー……)
昨日も死に掛け、今日も死に掛けるところだった。
「もう一杯お注ぎしますね」
圭さんは空になったコップに水を注いでくれた。
「ありがとうございます。昨日と今日に続いてすみません」
「いいえ、あそこの石階段は急ですからね。私も配慮が足らず、申し訳ありません」
体力の無い私の所為にも関わらず、何故か圭さんが謝る。何だか申し訳なくなって来た。
「あっ、いえ、私が運動音痴なだけなので気にしないでください!」
そんなこんなでお互い気を使い合っていると、横でつまらなそうに私達の遣り取り見ながら座っている燐という男性が口を開いた。
「おい、お前らのその遣り取りは正直どうでもいい。取り敢えず、話進めるぞ?」
「「あっ、はい……」」
私と圭さんは有無を言わさず黙るのだった。
「で、現地に向かう前に少しだけ聞きたい。呪いの鏡と言ったか? 肝試しで行ったのなら、そういった噂を耳にしたかやろうと思ったんだろう?」
「えっ、あっ、はい」
「なら、どこでその噂を耳にしたんだ?」
噂のルーツを聞かれ、考える。
噂は確かに知っていた。だが、人伝で聞いてる為、誰が発信源かまでは分からなかった。
「SNSでも噂話として広がってるから、誰がその噂を流したのか分からないんです」
燐という男性は少し考えて、やがて頭の整理が出来たのか、立ち上がる。
「取り敢えず、今から現場に向かう。圭、この呪いの鏡の出所ついて詳しく調べてくれるか?」
「分かりました」
「何か分かったら連絡しろ」
「はい」
圭さんは立ち上がり、奥の方へと消えていった。
私はどうしたいいのか分からず、ただ動けずにいた。
「おい、何やってる。お前は俺と一緒に現場に向かうんだよ。さっさとしろ」
そう言うなり、燐という男性は行ってしまった。
私は慌てて立ち上がり、急いで後を追った。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
SSSランクの祓い屋導師 流浪の怪異狩り
緋色優希
ファンタジー
訳ありの元冒険者ハーラ・イーマ。最高峰のSSSランクにまで上り詰めながら、世界を巡る放浪の旅に出ていた。そして、道々出会う怪異や魔物などと対決するのであった。時には神の領域にいる者達とも。数奇な運命の元、世界を旅するハーラと旅の途中で出会う人々との物語。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる