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一章
-弐- 黒猫
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SNSで投稿されてた三丁目に着いた私は噂の骨董品店を探した。
私自身、三丁目はあまり来た事がなく、こんな場所があったとは知らなかった。
(なんか昔の雰囲気がする街並みね)
周りの建物は古く、お店も寂れた感じでやっているのかも分からない状態だ。まるでタイムスリップでもしたかのような錯覚だ。
(本当、こんな所に骨董品店なんてあるの?)
少し不安になりながらも目的の店を探し回る。
そしてあるお店の前で私は足を止めた。
(なんだろう? このお店だけ周りの店とは少し雰囲気が違う気がする……)
自分でも何でそんな風に思うのか分からなかった。けど何となくだが此処が例の骨董品店だと思った。
私は昔ながらのガラス製の引き戸に近付く。緊張して生唾を飲む。ゆっくりと手を伸ばし、引き戸に手を掛ける。そしてゆっくりと手に力を入れ、戸を開けた。
──ガラガラッ!
中を覗くと周りは色々な骨董品が飾られていた。
私は恐る恐る中へ踏み込む。
「あっ、あのぉー……すみませぇーん……」
思い切って声を発したが、返事はない。
「誰かいませんかぁー……?」
もう一度声を発してみたが、やはり返事はなかった。
(居ない……のかなぁ?)
取り敢えず、店内を見て回る事にした。
周りにある骨董品はどれも古く、埃が被ってあった。
(うーん、どれもガラクタにしか見えない)
骨董品の価値なんて私にはさっぱりで、正直見ただけでは分からない物ばかりだった。
「所詮、噂話に過ぎなかったみたいね」
私は諦めて帰ろうとした、その時だった。
──にゃーん。
フッと声のした方へ振り返る。
すると目の前に黒猫が座っていた。
──にゃーん。
黒猫はじーっと見詰めた後、振り返り、奥の方へと歩いて行った。
「あっ、待って!」
私は咄嗟に追い掛ける。
黒猫はレジの横を通り、更に奥へと進んで行く。奥には少し開いたドアがあり、黒猫はその隙間に入って行った。どうやらお店の勝手口で外に繋がっているようだった。
私は黒猫を見失わない様に、急いでドアを開け、外に出た。
そして、目の前に現れた光景に私は驚愕した。
「えっ!? なっ、何でぇ!?」
そこに現れた光景とは大きな山だった。
(お店の裏に山なんて無かった筈なのに……)
そう、私がこの町に来た時、周りには山なんて一切見当たらなかったのだ。だが、今実際に目にしている。
「……どういう事?」
唖然としていると、追い掛けていた黒猫の鳴き声で我に返る。
そして周囲を見渡すと、黒猫は山を境にして掛っている石橋の先いた。
──にゃーん。
黒猫は追い掛ける私をまるで待っているかのように座って見詰めていた。そして私が気付いた事を確認すると、また歩き始めた。
急いで石橋を渡り、追い掛ける。
すると黒猫の歩く先を見て愕然した。
「うっ、嘘、でしょう……」
そこには遥か先へと続く石階段であった。
呆然と上を見上げていると、黒猫は早く登れと言わんばかりな目をして見下ろしていた。
「のっ、登るわよ! 登ればいいんでしょッ!」
私は鼻息を荒くし、ヤケクソ半分な思いで登り始めた。
黒猫は私が登って来るのを確認した後、身軽に石階段を駆け上って行った。
もしあの噂が本当だとしたら、この黒猫に着いて行けば、きっと海斗を助ける手掛かりがあるかもしれない。私は最後まで諦めずに一歩一歩登って行った。
そして、最後の石階段を登った所でやっと頂上に着いたのだった。
「ちょっ、ちょっと、はぁー、はぁー、もう、むっ、無理ぃ……」
私は息が上がり、その場にへたり込んだ。
そう、何を言おう私は大の運動音痴なのであった。今まで体力的なスポーツが苦手で避けていたが、私の通う中学校は帰宅部が存在せず、強制的に運動部に入らないといけない学校だった。悩みに悩んだ末、唯一私の出来るスポーツが弓道であった。弓道は精神面的なスポーツで運動音痴な私でも出来る運動だった。だから精神面は強くても体力面に関しては、まるで駄目なのであった。
「はぁー、はぁー、みっ、水が、ほっ、欲しい……」
汗が止めどなく出る所為か、喉がカラカラになっていた。
すると俯いてへたり込んである私の頭上に影が射した。
「大丈夫ですか?」
透き通る様な優しい声に、顔を上げる。
「……え?」
見上げた先には長い白銀の髪を後ろで緩く結われ、淡い菫色の着物を着た男性が立っていた。顔立ちがとても綺麗で見惚れてしまうぐらい整っていた。
惚けてる私に、男性は少し困った様な顔を見せる。
「何処か怪我でもなさいましたか?」
その言葉にハッと我に返る。
「あっ、えっと、怪我はないです。ただ……」
「ただ?」
「……お水を一杯、頂けないでしょうか?」
男性はキョトンとした顔を見せる。
しーんとした静けさが余計に恥ずかしい。
「すっ、すみません……」
私は顔を真っ赤にさせ、俯いく。
すると、頭上からクツクツと笑い声が聞こえた。
上を向くと男性がお腹を抱え、堪えるように笑っていた。
私は益々恥ずかしくなり、赤面する。
そんな私の様子に気付いた男性はハッとなる。
「これはすみませんでした。笑うのは失敗でしたね」
男性は申し訳ない面持ちで頭を下げた。
「いっ、いえ、大丈夫です……」
本当は凄く恥ずかしいのだが、気を使わせてしまってはいけないと思い、堪えた。
そんなやり取りをしている内に、奥の方で猫の鳴き声がして、お互い鳴き声の方へと視線を移した。
「どうやら、あちらは待ちくたびれているようですね」
「みたいですね」
「立ち話もあれなんで中へどうぞ。あなたの抱えている悩みをお聞きしますので。勿論、冷たいお水も用意致します」
男性は優しく微笑み、境内の一角にある社務所へと案内された。その際、黒猫も私達と一緒に中へと入って行ったのだった。
私自身、三丁目はあまり来た事がなく、こんな場所があったとは知らなかった。
(なんか昔の雰囲気がする街並みね)
周りの建物は古く、お店も寂れた感じでやっているのかも分からない状態だ。まるでタイムスリップでもしたかのような錯覚だ。
(本当、こんな所に骨董品店なんてあるの?)
少し不安になりながらも目的の店を探し回る。
そしてあるお店の前で私は足を止めた。
(なんだろう? このお店だけ周りの店とは少し雰囲気が違う気がする……)
自分でも何でそんな風に思うのか分からなかった。けど何となくだが此処が例の骨董品店だと思った。
私は昔ながらのガラス製の引き戸に近付く。緊張して生唾を飲む。ゆっくりと手を伸ばし、引き戸に手を掛ける。そしてゆっくりと手に力を入れ、戸を開けた。
──ガラガラッ!
中を覗くと周りは色々な骨董品が飾られていた。
私は恐る恐る中へ踏み込む。
「あっ、あのぉー……すみませぇーん……」
思い切って声を発したが、返事はない。
「誰かいませんかぁー……?」
もう一度声を発してみたが、やはり返事はなかった。
(居ない……のかなぁ?)
取り敢えず、店内を見て回る事にした。
周りにある骨董品はどれも古く、埃が被ってあった。
(うーん、どれもガラクタにしか見えない)
骨董品の価値なんて私にはさっぱりで、正直見ただけでは分からない物ばかりだった。
「所詮、噂話に過ぎなかったみたいね」
私は諦めて帰ろうとした、その時だった。
──にゃーん。
フッと声のした方へ振り返る。
すると目の前に黒猫が座っていた。
──にゃーん。
黒猫はじーっと見詰めた後、振り返り、奥の方へと歩いて行った。
「あっ、待って!」
私は咄嗟に追い掛ける。
黒猫はレジの横を通り、更に奥へと進んで行く。奥には少し開いたドアがあり、黒猫はその隙間に入って行った。どうやらお店の勝手口で外に繋がっているようだった。
私は黒猫を見失わない様に、急いでドアを開け、外に出た。
そして、目の前に現れた光景に私は驚愕した。
「えっ!? なっ、何でぇ!?」
そこに現れた光景とは大きな山だった。
(お店の裏に山なんて無かった筈なのに……)
そう、私がこの町に来た時、周りには山なんて一切見当たらなかったのだ。だが、今実際に目にしている。
「……どういう事?」
唖然としていると、追い掛けていた黒猫の鳴き声で我に返る。
そして周囲を見渡すと、黒猫は山を境にして掛っている石橋の先いた。
──にゃーん。
黒猫は追い掛ける私をまるで待っているかのように座って見詰めていた。そして私が気付いた事を確認すると、また歩き始めた。
急いで石橋を渡り、追い掛ける。
すると黒猫の歩く先を見て愕然した。
「うっ、嘘、でしょう……」
そこには遥か先へと続く石階段であった。
呆然と上を見上げていると、黒猫は早く登れと言わんばかりな目をして見下ろしていた。
「のっ、登るわよ! 登ればいいんでしょッ!」
私は鼻息を荒くし、ヤケクソ半分な思いで登り始めた。
黒猫は私が登って来るのを確認した後、身軽に石階段を駆け上って行った。
もしあの噂が本当だとしたら、この黒猫に着いて行けば、きっと海斗を助ける手掛かりがあるかもしれない。私は最後まで諦めずに一歩一歩登って行った。
そして、最後の石階段を登った所でやっと頂上に着いたのだった。
「ちょっ、ちょっと、はぁー、はぁー、もう、むっ、無理ぃ……」
私は息が上がり、その場にへたり込んだ。
そう、何を言おう私は大の運動音痴なのであった。今まで体力的なスポーツが苦手で避けていたが、私の通う中学校は帰宅部が存在せず、強制的に運動部に入らないといけない学校だった。悩みに悩んだ末、唯一私の出来るスポーツが弓道であった。弓道は精神面的なスポーツで運動音痴な私でも出来る運動だった。だから精神面は強くても体力面に関しては、まるで駄目なのであった。
「はぁー、はぁー、みっ、水が、ほっ、欲しい……」
汗が止めどなく出る所為か、喉がカラカラになっていた。
すると俯いてへたり込んである私の頭上に影が射した。
「大丈夫ですか?」
透き通る様な優しい声に、顔を上げる。
「……え?」
見上げた先には長い白銀の髪を後ろで緩く結われ、淡い菫色の着物を着た男性が立っていた。顔立ちがとても綺麗で見惚れてしまうぐらい整っていた。
惚けてる私に、男性は少し困った様な顔を見せる。
「何処か怪我でもなさいましたか?」
その言葉にハッと我に返る。
「あっ、えっと、怪我はないです。ただ……」
「ただ?」
「……お水を一杯、頂けないでしょうか?」
男性はキョトンとした顔を見せる。
しーんとした静けさが余計に恥ずかしい。
「すっ、すみません……」
私は顔を真っ赤にさせ、俯いく。
すると、頭上からクツクツと笑い声が聞こえた。
上を向くと男性がお腹を抱え、堪えるように笑っていた。
私は益々恥ずかしくなり、赤面する。
そんな私の様子に気付いた男性はハッとなる。
「これはすみませんでした。笑うのは失敗でしたね」
男性は申し訳ない面持ちで頭を下げた。
「いっ、いえ、大丈夫です……」
本当は凄く恥ずかしいのだが、気を使わせてしまってはいけないと思い、堪えた。
そんなやり取りをしている内に、奥の方で猫の鳴き声がして、お互い鳴き声の方へと視線を移した。
「どうやら、あちらは待ちくたびれているようですね」
「みたいですね」
「立ち話もあれなんで中へどうぞ。あなたの抱えている悩みをお聞きしますので。勿論、冷たいお水も用意致します」
男性は優しく微笑み、境内の一角にある社務所へと案内された。その際、黒猫も私達と一緒に中へと入って行ったのだった。
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