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序章
-零- 呪いの鏡
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深夜二時。丑の刻と呼ばれる時刻。
辺りが静まり返る中、私、陽乃宮琴音と隣に立つ同級生の天海みゆき、そして私の幼馴染である石倉海斗は懐中電灯を持って、廃墟となった小学校へ集まっていた。
何故、こんな時間帯に集まったかと言うと、それはある噂話が切っ掛けで始まった。
そして、その噂話が本当かどうかの真偽を確認する為にこの廃校に集まったのだ。
正直、そう言った類の話は信じないのだが、中学で夏休み最後の思い出にと思い、参加してみたのだ。
「よし、二人共集まったな」
海斗は私達が集まった事を確認し、今回立てた肝試しの内容を説明した。
「まず、この噂のあった理科室へ向かう。噂では理科室で夜な夜な奇妙な現象が次々に起こっているらしい。手だけが這いずり回ったりとか、赤いワンピースを着た女が襲って来たりとか、人体模型が動いたりとか、色々噂はあるけど、一番良く聞く噂は《呪いの鏡》だ」
「確か、深夜二時から三十分の間にその鏡を覗いた時、映る自分の後ろにナニかが居たら呪われるって話よね」
「ナニかって何なのよ」
「私も詳しくは知らないけど、でも、映り込んでいたら確実に呪われるって聞いたよ」
「なっ、何だか、少し怖くなって来たかも……」
「兎に角、真偽を確かめに行こうぜ! 理科室は二階の左端にあるらしいから」
私達はこの暗く薄気味悪い廃校の中に入り、例の噂である理科室へと向かった。
中は所々老朽化が進んでいる所為か、崩れてる部分もあり、廊下を歩く度に、ギシギシと嫌な音が鳴り響いていた。
「……やっぱり、ちょっと怖い感じだね」
「まぁ、見た目も雰囲気もあるからねぇ」
「琴音は怖くないの?」
「んー、少し怖いけど、所詮噂話でしょう?」
そう、所詮噂話である。実際に呪われた人を見たとかなら分かるが、ただ噂として聞いただけの話に信憑性を感じられなかった。
平気な顔をして淡々と歩いていると、例の理科室に着いた様で、皆扉の前で止まった。
「ここが噂の呪われた鏡がある理科室だ」
「ねぇ、やっぱりやめない?」
「はあぁ!? 今更何言ってんだよ!!」
「でも、もし本当に呪われたりしたらどうするの?」
「それを確かめる為にここまで来たんだろう? 俺は辞めないぜ」
そう言って、理科室の扉を開けた。
扉は引戸になっていて、開ける際、ギシギシと音が鳴っていた。
理科室の扉を開けた瞬間、独特な臭いが鼻に付いた。恐らく、古くなった薬品や埃の臭いだろう。
「鏡は何処だ?」
薄暗い中を懐中電灯で照らしながら、例の鏡を探す。
床には色々な物が散乱していて足の踏み場も無い。
そんな中、例の鏡を探していると、奥の壁際に漆黒でシルク素材の布が掛けられてる物を見付けた。
先頭を仕切っていた海斗がその布の近くまで行く。
「……取るぞ」
布がゆっくりと引っ張られていく。そして布から現れたのは、大きなアンティーク調の鏡だった。
「これだ!」
鏡を見付けたことへの嬉しさか更に海斗は近付く。
「ちょっ、待ちなさいよ! 私達もそっちに向かうから!」
私達は足場の無い床を何とか進み、鏡の方へ近付く。目の前にした鏡は思ったよりも大きく、人一人分映すような姿見であった。ただ、やはり何処か薄気味悪さを感じた。
「……ねぇ、やっぱりやるの?」
「やる! 大丈夫だって! あくまで噂なんだし!」
恐れなど一つ無く、ただ好奇心という文字だけで鏡の前に立つ海斗。呪いなんてある筈がない。ただの噂であって、皆話を大きくしているだけだ。そう軽い気持ちだった。
私の隣でしがみ付いてるみゆきが怖気付いてしまってたので、鏡の前に立っている海斗の後方で見守る。
時刻は二時半に差し掛かろうとしていた。
海斗の映す鏡は何も変化が無い。
やはり、ただの噂だった様だ。
何もないと分かると一気に緊張感が解けた。
「何も、起こらなかったね」
「そうね」
横にしがみ付いていたみゆきが安堵し、しがみ付いている手の力を緩めた。
「ねぇ、もういいでしょう? 早く帰ろうよ」
しかし、海斗は何故かその場を動かない。
「海斗?」
私とみゆきは顔を見合わせて首を傾げる。
不思議に思いながらも海斗に近付き、肩を叩く。
「ねぇ、海斗ってばぁ……」
その瞬間、海斗の身体がぐらりと傾き、うつ伏せに倒れた。
一瞬何が起きたか分からず、私もみゆきも硬直する。
「……え? 海斗?」
みゆきは倒れてピクリとも動かない海斗を揺さぶる。
「ねぇ、冗談はやめてよ。ねぇ、海斗!」
何も反応がない海斗にみゆきは涙目になりながら必死に揺さぶる。
そして、うつ伏せになって倒れた海斗の身体が揺さぶった拍子にひっくり返り、全貌が露わとなった。
「っ!?」
「あっ……うっ……やっ……いやぁぁぁぁぁぁぁぁ────!!!!」
海斗の腕や手は火傷したみたいに赤黒く爛れ、目も赤く充血し、まるで魂が抜けたみたいに顔が青白くなっていた。
みゆきはその場にしゃがみ込み、手で顔を覆い泣き叫ぶ。私は脳が停止したかの様に頭の中が真っ白になっていた。
時刻は午前二時半過ぎ。
こんな事になるなんて、誰が思うだろうか。
私達は何も出来ず、ただその場を動けずにいたのだった。
辺りが静まり返る中、私、陽乃宮琴音と隣に立つ同級生の天海みゆき、そして私の幼馴染である石倉海斗は懐中電灯を持って、廃墟となった小学校へ集まっていた。
何故、こんな時間帯に集まったかと言うと、それはある噂話が切っ掛けで始まった。
そして、その噂話が本当かどうかの真偽を確認する為にこの廃校に集まったのだ。
正直、そう言った類の話は信じないのだが、中学で夏休み最後の思い出にと思い、参加してみたのだ。
「よし、二人共集まったな」
海斗は私達が集まった事を確認し、今回立てた肝試しの内容を説明した。
「まず、この噂のあった理科室へ向かう。噂では理科室で夜な夜な奇妙な現象が次々に起こっているらしい。手だけが這いずり回ったりとか、赤いワンピースを着た女が襲って来たりとか、人体模型が動いたりとか、色々噂はあるけど、一番良く聞く噂は《呪いの鏡》だ」
「確か、深夜二時から三十分の間にその鏡を覗いた時、映る自分の後ろにナニかが居たら呪われるって話よね」
「ナニかって何なのよ」
「私も詳しくは知らないけど、でも、映り込んでいたら確実に呪われるって聞いたよ」
「なっ、何だか、少し怖くなって来たかも……」
「兎に角、真偽を確かめに行こうぜ! 理科室は二階の左端にあるらしいから」
私達はこの暗く薄気味悪い廃校の中に入り、例の噂である理科室へと向かった。
中は所々老朽化が進んでいる所為か、崩れてる部分もあり、廊下を歩く度に、ギシギシと嫌な音が鳴り響いていた。
「……やっぱり、ちょっと怖い感じだね」
「まぁ、見た目も雰囲気もあるからねぇ」
「琴音は怖くないの?」
「んー、少し怖いけど、所詮噂話でしょう?」
そう、所詮噂話である。実際に呪われた人を見たとかなら分かるが、ただ噂として聞いただけの話に信憑性を感じられなかった。
平気な顔をして淡々と歩いていると、例の理科室に着いた様で、皆扉の前で止まった。
「ここが噂の呪われた鏡がある理科室だ」
「ねぇ、やっぱりやめない?」
「はあぁ!? 今更何言ってんだよ!!」
「でも、もし本当に呪われたりしたらどうするの?」
「それを確かめる為にここまで来たんだろう? 俺は辞めないぜ」
そう言って、理科室の扉を開けた。
扉は引戸になっていて、開ける際、ギシギシと音が鳴っていた。
理科室の扉を開けた瞬間、独特な臭いが鼻に付いた。恐らく、古くなった薬品や埃の臭いだろう。
「鏡は何処だ?」
薄暗い中を懐中電灯で照らしながら、例の鏡を探す。
床には色々な物が散乱していて足の踏み場も無い。
そんな中、例の鏡を探していると、奥の壁際に漆黒でシルク素材の布が掛けられてる物を見付けた。
先頭を仕切っていた海斗がその布の近くまで行く。
「……取るぞ」
布がゆっくりと引っ張られていく。そして布から現れたのは、大きなアンティーク調の鏡だった。
「これだ!」
鏡を見付けたことへの嬉しさか更に海斗は近付く。
「ちょっ、待ちなさいよ! 私達もそっちに向かうから!」
私達は足場の無い床を何とか進み、鏡の方へ近付く。目の前にした鏡は思ったよりも大きく、人一人分映すような姿見であった。ただ、やはり何処か薄気味悪さを感じた。
「……ねぇ、やっぱりやるの?」
「やる! 大丈夫だって! あくまで噂なんだし!」
恐れなど一つ無く、ただ好奇心という文字だけで鏡の前に立つ海斗。呪いなんてある筈がない。ただの噂であって、皆話を大きくしているだけだ。そう軽い気持ちだった。
私の隣でしがみ付いてるみゆきが怖気付いてしまってたので、鏡の前に立っている海斗の後方で見守る。
時刻は二時半に差し掛かろうとしていた。
海斗の映す鏡は何も変化が無い。
やはり、ただの噂だった様だ。
何もないと分かると一気に緊張感が解けた。
「何も、起こらなかったね」
「そうね」
横にしがみ付いていたみゆきが安堵し、しがみ付いている手の力を緩めた。
「ねぇ、もういいでしょう? 早く帰ろうよ」
しかし、海斗は何故かその場を動かない。
「海斗?」
私とみゆきは顔を見合わせて首を傾げる。
不思議に思いながらも海斗に近付き、肩を叩く。
「ねぇ、海斗ってばぁ……」
その瞬間、海斗の身体がぐらりと傾き、うつ伏せに倒れた。
一瞬何が起きたか分からず、私もみゆきも硬直する。
「……え? 海斗?」
みゆきは倒れてピクリとも動かない海斗を揺さぶる。
「ねぇ、冗談はやめてよ。ねぇ、海斗!」
何も反応がない海斗にみゆきは涙目になりながら必死に揺さぶる。
そして、うつ伏せになって倒れた海斗の身体が揺さぶった拍子にひっくり返り、全貌が露わとなった。
「っ!?」
「あっ……うっ……やっ……いやぁぁぁぁぁぁぁぁ────!!!!」
海斗の腕や手は火傷したみたいに赤黒く爛れ、目も赤く充血し、まるで魂が抜けたみたいに顔が青白くなっていた。
みゆきはその場にしゃがみ込み、手で顔を覆い泣き叫ぶ。私は脳が停止したかの様に頭の中が真っ白になっていた。
時刻は午前二時半過ぎ。
こんな事になるなんて、誰が思うだろうか。
私達は何も出来ず、ただその場を動けずにいたのだった。
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