キレイ キレイ

茶柱

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キレイ キレイ

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見えそうで見えないものが
僕の手を何回も洗わせるんだ
洗っても洗っても
拭いたタオルでまた違和感が出てきてしまって
また洗う
泡で洗ったら足りない気がして
液体ワンプッシュでも不安で
食器用洗剤で最後は洗うんだ

…僕だってわかってる
バカだって
意味ないって
でも どーしても気になっちゃうんだ

僕の手は血だらけで
白い粉がふいていて
しわくちゃで
かたくて 油がなくて
いつも痛いんだ

指からはいつもズキズキと音が聞こえる
それはとてもとても深くて
僕の心の音が
傷口からこぼれ出てくるんだ

ずーっと痛くて
ズキズキズキズキ
血はあふれ出てくるわけではないけれど
力を入れれば にじんで
ふさがるわけでもなくて
ずーっと痛い

隣の小さい子が
僕の手を握ったんだ
僕はびっくりしたんだけど
小さい子はもっとびっくりして手を離した
僕の手を手だと確認して
手ではないような感触を不思議そうに首を傾けながらも
もう一度 手を握ってきた
血がにじんだ
その子の手にも 僕の血が にじんだ
僕は痛みが走ったけれど
柔らかいその手を
僕の手を離さないその手を
僕は握り返したんだ

僕のこのガサガサの手は
小さい子の柔らかい手をも傷付けた
「痛い」と言いながらも小さい手は
それでもギュウっと握り続けてくれた

僕は泣いた
涙がポロポロ出た
僕の涙は傷にしみて 痛くて
弱い僕の心に じわぁっと
しみていく気がしたんだ
そして僕はその時 ほんの少しだけ
ほんの少しだけれでも……笑ったんだ

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