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小さなライブハウスに着くやいなや、先にバーカウンターでカシスオレンジを注文し、透明のカップを片手にそっとドアを開いた。
こもっていた音が解放されるように大音量で耳に届く瞬間が好きでたまらない。
たくさんの観客がざわめく中、一番後ろでステージを見つめる。
「こんばんはー!」
ちょうど隼人のバンドの演奏が始まる時だった。
隼人の呼びかけに観客達は拳と共に歓声を上げる。
……こんなに人気になるなんて。
圧倒されているうちに演奏が始まった。
スリーピースの構成で、隼人はギターとボーカルを担当している。
疾走感のあるドラムのリズムと、お腹に響くベース音、そして、隼人の激しいカッティングに、高揚感を煽られる。
ひとたび彼が歌い出した途端、女の子達から「きゃあ」と可愛い歓声が響いた。
ステージ上の隼人は、益々自分の知っている彼とはかけ離れている。
自信たっぷりで堂々としていて、何よりすごくイキイキしているのが眩しかった。
中学の時からギターを練習しているのを見てきたので、彼の才能には気づいていたけれど、まさかシャイな彼が、たくさんの人達の前で演奏し、歌まで歌ってしまうなんて。
彼の歌声は、話し声よりも凜としていてどこか色っぽく、聴いていると胸が自ずと熱を帯びてドキドキする。
彼の歌が鼓膜を震わす度に、身体の芯に響いて溶けてしまうような感覚に陥った。
そう感じているのは私だけではないようで、周りの女の子達も皆、うっとりとした眼差しで隼人を見つめている。
楽曲の中にはラブソングもあって、なかなか際どい歌詞もある。
それを作っている隼人は、やっぱり実体験から得たものを歌に昇華させてるんだろうか。
だからこんなに色っぽいの?
そう思う度に胸が締めつけられて、息をするのも苦しかった。
こうしてライブハウスに来る度に、変わっていく彼を目の当たりにする。
それはとても切ないことだけど、それでもこの空間で飲むカシスオレンジは、とても美味しく感じるのだった。
こもっていた音が解放されるように大音量で耳に届く瞬間が好きでたまらない。
たくさんの観客がざわめく中、一番後ろでステージを見つめる。
「こんばんはー!」
ちょうど隼人のバンドの演奏が始まる時だった。
隼人の呼びかけに観客達は拳と共に歓声を上げる。
……こんなに人気になるなんて。
圧倒されているうちに演奏が始まった。
スリーピースの構成で、隼人はギターとボーカルを担当している。
疾走感のあるドラムのリズムと、お腹に響くベース音、そして、隼人の激しいカッティングに、高揚感を煽られる。
ひとたび彼が歌い出した途端、女の子達から「きゃあ」と可愛い歓声が響いた。
ステージ上の隼人は、益々自分の知っている彼とはかけ離れている。
自信たっぷりで堂々としていて、何よりすごくイキイキしているのが眩しかった。
中学の時からギターを練習しているのを見てきたので、彼の才能には気づいていたけれど、まさかシャイな彼が、たくさんの人達の前で演奏し、歌まで歌ってしまうなんて。
彼の歌声は、話し声よりも凜としていてどこか色っぽく、聴いていると胸が自ずと熱を帯びてドキドキする。
彼の歌が鼓膜を震わす度に、身体の芯に響いて溶けてしまうような感覚に陥った。
そう感じているのは私だけではないようで、周りの女の子達も皆、うっとりとした眼差しで隼人を見つめている。
楽曲の中にはラブソングもあって、なかなか際どい歌詞もある。
それを作っている隼人は、やっぱり実体験から得たものを歌に昇華させてるんだろうか。
だからこんなに色っぽいの?
そう思う度に胸が締めつけられて、息をするのも苦しかった。
こうしてライブハウスに来る度に、変わっていく彼を目の当たりにする。
それはとても切ないことだけど、それでもこの空間で飲むカシスオレンジは、とても美味しく感じるのだった。
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