推しと俺はゲームの世界で幸せに暮らしたい!

花輝夜(はなかぐや)

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4章

大樹

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昨日も朝まで飲んでろくに寝ておらず、今日は一日出かけたのだから眠くもなるだろう。

「ルイ、先に風呂入ってくればどうだ」

「うーん、そうする……」

声をかけるとルイは素直に風呂場へと向かった。
残ってキッチンに立つ片喰にアスクはじりじりと距離を詰めた。

「ねぇ~どうだったのぉ?ドクターのご機嫌が伝わってくるし、うまくいったんでしょお?」

アスクの血よりも赤い瞳がウキウキに揺れている。
恋バナがしたくてしたくて仕方がないようだ。
今回の功労者はアスクであるため、片喰はいつも通り茶化されることが分かっていても素直にそうだと頷いた。

「アスクのおかげで色々わかった。仲直りできたよ」

「別に喧嘩してたわけではないけどねぇ、ドクター凹んでたからぁ」

アスクの目はもうキラキラとルビーよりも輝いている。心なしか七色に揺らめく白銀の鱗もいつも以上に艶がいい。
片喰は今日の出来事を掻い摘んでアスクに説明した。

「……で、そうだ、アスクに聞きたいことがあって」

「なになに?今いいとこなのにぃ」

腕から生やしたネギを手早く刻みながら片喰は簡単に観覧車のところまでを話し、そこでふと会話を切り上げた。
思春期の乙女のような顔で聞いていたアスクはじれったそうにしながらもご機嫌に笑う。

「そこで、ルイに来月同じ日に大樹に来てほしいって言われたんだ。大樹って何のことだ?うっかり聞き忘れてな……」

「た、た、た、たいじゅ!?」

片喰の問いかけにアスクは片喰が想像した数倍驚いてのけぞり、ひっくり返った。巨大な蛇の横転に屋敷が振動する。
ネギを刻んでいた片喰はその手を思わず止めてひっくり返ったアスクを見下ろした。

「なんだ!?どうした!?そんなにまずいことなのか!?」

「たい…たい、たいじゅ…えっ!?ど、ど、ドクター!本気なんだ……!」

「何がだ!?大樹ってなんなんだ!?徒歩圏内なのか!?」

アスクの呆然とした表情に片喰はひたすら困惑する。うわごとのように「ドクター…本気なんだな…」を繰り返すだけのからくり人形と化したアスクに好物のニコの実を近付けても反応はない。

「大樹?の場所だけ教えてくれ。デカい木なのか?公園か?」

「大きな木だよ…中央街の南門から出て馬車で少し行った丘の上に一本だけある、綺麗な花のつく木だ……」

「ふぅん……?」

なぜ、そんなところで待ち合わせをする必要がある?珍しい花を見せたいだけなら別に家でも構わないだろう。そんな片喰の疑問に答えてくれる人は誰もいなかった。
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