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「そう言わないでよ。ね、動画ちゃんと観てくれた?」
升谷の言葉に新汰は内心ドキッとした。
升谷の言う動画とはもちろんあの動画のことだ。
「あんなの残しておくなんてどうかしてるんじゃないんですか?俺が兄さんに見せるとか考えなかったんです?」
新汰がそう言うと、升谷はふふ、と笑った。
「新汰くんはそんなことしないってわかってるからね。それよりどうして動画をまわしながら寝たフリなんてしてたんだろうね。まさか俺のこと盗撮しようとしてたとか?」
新汰はキッと隣を睨みつけた。
この男、やはり新汰のしようとしていたことをどこかで見ていたらしい。
新汰が黙って睨んでいると、升谷は世間話でもしているかのような和かな雰囲気のまま続けた。
「俺が新汰くんに触ったら、それをネタにして奏汰と別れさせようとしてたってわけか。面白いこと考えるよね」
まるで初めからお見通しだというような口振りに新汰はますます苛ついた。
確かにその通りだが、本人の目の前で明け透けもなく言うなんて一体どんな神経をしているんだろうか。
「動画は消しましたよ。さすがにあんなの見せたら兄さんがかわいそうなんで」
新汰は皮肉たっぷりに返した。
もちろん動画は消してはいない。
使うべき時が来るかもしれないからだ。
「新汰くんのそういうところ好きだな」
升谷が陽気な口調で言う。
新汰はギョッとして隣にいる男を見つめた。
男は新汰の視線に気づくと不敵な笑みを浮かべる。
そして再び繰り返した。
「そういうとこすごく好き」
一体どういうつもりなんだろうか。
何がどう繋がってそんな思考回路に行き着いたのか全く理解できない。
いつもだったら升谷の言葉は成功といえただろう。
新汰の目的は恋人の排除。
兄の恋人が新汰を好きになれば、それは成功といえる。
だが、升谷の場合それが成功だとは思えない。
この男のつかみどころのなさと、実家に招かれていることが引っかかっているせいだ。
「前から思ってたんですけど何考えてるんですか?動画もこないだも俺にキスしてきたことも。兄さんに知られたらどうするつもりなんです?俺が言わなくてもバレるとか思ったりしないんですか?」
新汰は顔を顰めると低い声で囁いた。
仲をとりもつつもりは更々ないが、升谷とキスしたことや彼の卑猥な姿を見てしまったことを奏汰に知られるわけにはいかない。
升谷の言葉に新汰は内心ドキッとした。
升谷の言う動画とはもちろんあの動画のことだ。
「あんなの残しておくなんてどうかしてるんじゃないんですか?俺が兄さんに見せるとか考えなかったんです?」
新汰がそう言うと、升谷はふふ、と笑った。
「新汰くんはそんなことしないってわかってるからね。それよりどうして動画をまわしながら寝たフリなんてしてたんだろうね。まさか俺のこと盗撮しようとしてたとか?」
新汰はキッと隣を睨みつけた。
この男、やはり新汰のしようとしていたことをどこかで見ていたらしい。
新汰が黙って睨んでいると、升谷は世間話でもしているかのような和かな雰囲気のまま続けた。
「俺が新汰くんに触ったら、それをネタにして奏汰と別れさせようとしてたってわけか。面白いこと考えるよね」
まるで初めからお見通しだというような口振りに新汰はますます苛ついた。
確かにその通りだが、本人の目の前で明け透けもなく言うなんて一体どんな神経をしているんだろうか。
「動画は消しましたよ。さすがにあんなの見せたら兄さんがかわいそうなんで」
新汰は皮肉たっぷりに返した。
もちろん動画は消してはいない。
使うべき時が来るかもしれないからだ。
「新汰くんのそういうところ好きだな」
升谷が陽気な口調で言う。
新汰はギョッとして隣にいる男を見つめた。
男は新汰の視線に気づくと不敵な笑みを浮かべる。
そして再び繰り返した。
「そういうとこすごく好き」
一体どういうつもりなんだろうか。
何がどう繋がってそんな思考回路に行き着いたのか全く理解できない。
いつもだったら升谷の言葉は成功といえただろう。
新汰の目的は恋人の排除。
兄の恋人が新汰を好きになれば、それは成功といえる。
だが、升谷の場合それが成功だとは思えない。
この男のつかみどころのなさと、実家に招かれていることが引っかかっているせいだ。
「前から思ってたんですけど何考えてるんですか?動画もこないだも俺にキスしてきたことも。兄さんに知られたらどうするつもりなんです?俺が言わなくてもバレるとか思ったりしないんですか?」
新汰は顔を顰めると低い声で囁いた。
仲をとりもつつもりは更々ないが、升谷とキスしたことや彼の卑猥な姿を見てしまったことを奏汰に知られるわけにはいかない。
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