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ここに住み始めてから一度も入った事がない兄の部屋。
入るなら今がチャンスだ。
新汰は弾かれたようにベッドから起き上がると、床に足を下ろす。
しかし、突然理性がブレーキをかけた。
いくら兄弟とはいえ、兄の留守中部屋に勝手に入るなんてマナー違反だ。
デリカシーのカケラもない。
ただでさえ、今は兄に相応しくない行動ばかりしているというのに、これ以上自分の首を絞めてどうする。
しかし、欲望に忠実なもう一人の新汰が囁いてきた。
勝手に部屋に入ったところでどうせ兄にはわからない。
何か物を盗るわけでもないし、ちょっと入るだけなら犯罪にはならないさ。
「そうだよ、ちょっと入るだけなら問題ないよな」
新汰は呟くと兄の部屋へと向かった。
新汰の部屋はリビングから近い場所にあるが、奏汰の部屋は玄関寄りの方にある。
扉の前は外へ出たりする時や帰宅してきた時の通り道だが、中を見たことは一度もない。
新汰は些か緊張しながら扉を開けた。
部屋の中は持ち主の性格を表すように、すっきりとしていて美しく整えられている。
新汰のベッドよりひとまわり大きなベッドが存在感を示しているが、奥にはパソコンデスクと本棚があった。
新汰は恐る恐る足を踏み入れる。
誰もいないのに息を潜め忍び足になってしまうのはやはりどこかに罪悪感があるからだ。
しわ一つなくピンと整えられたベッドに乗るのは躊躇いがあったため、新汰は本棚の方へ向かった。
棚に陳列されている本は、鑑定士に関わるような本や鉱石の専門書がたくさん並んでいた。
そういえば兄は米国宝石学会や英国宝石協会といった世界的に有名な鑑定士資格試験に合格している。
簡単に合格することはできないかなり難しい資格だと聞いた事がある。
この二つの資格を持っていれば世界中どこでも宝石鑑定士として働けるらしい。
やはり兄は完璧な人間だ。
賢く聡明で美しい人間だという事が改めてよくわかる。
「兄さんはやっぱりすごいな…」
新汰は呟くと本棚をまじまじと見渡した。
と、一番上の右端に他の本の背表紙とは異なるタイトルを見つける。
ゴールドの文字で「特殊性癖」と書かれたその本に新汰は妙に惹かれた。
少し背伸びをして本を引き抜く。
何か危険を訴えるような全面真紅の装丁だ。
新汰は思わず息を呑んだ。
特殊性癖…とはつまり一般的な対象以外に愛情や性的興奮を抱く嗜好の事。
新汰に専門的な知識は全くないが、SMや露出狂、盗撮などが思い浮かぶ。
しかし、なぜ兄がこんな本を所持しているのだろうか。
確かに今回で同性愛者でもある事はわかったが、こんな本を読むほど思い悩んでいたのだろうか。
と、その時本のページに僅かな隙間がある事に気づく。
新汰はその場所を開いてみた。
入るなら今がチャンスだ。
新汰は弾かれたようにベッドから起き上がると、床に足を下ろす。
しかし、突然理性がブレーキをかけた。
いくら兄弟とはいえ、兄の留守中部屋に勝手に入るなんてマナー違反だ。
デリカシーのカケラもない。
ただでさえ、今は兄に相応しくない行動ばかりしているというのに、これ以上自分の首を絞めてどうする。
しかし、欲望に忠実なもう一人の新汰が囁いてきた。
勝手に部屋に入ったところでどうせ兄にはわからない。
何か物を盗るわけでもないし、ちょっと入るだけなら犯罪にはならないさ。
「そうだよ、ちょっと入るだけなら問題ないよな」
新汰は呟くと兄の部屋へと向かった。
新汰の部屋はリビングから近い場所にあるが、奏汰の部屋は玄関寄りの方にある。
扉の前は外へ出たりする時や帰宅してきた時の通り道だが、中を見たことは一度もない。
新汰は些か緊張しながら扉を開けた。
部屋の中は持ち主の性格を表すように、すっきりとしていて美しく整えられている。
新汰のベッドよりひとまわり大きなベッドが存在感を示しているが、奥にはパソコンデスクと本棚があった。
新汰は恐る恐る足を踏み入れる。
誰もいないのに息を潜め忍び足になってしまうのはやはりどこかに罪悪感があるからだ。
しわ一つなくピンと整えられたベッドに乗るのは躊躇いがあったため、新汰は本棚の方へ向かった。
棚に陳列されている本は、鑑定士に関わるような本や鉱石の専門書がたくさん並んでいた。
そういえば兄は米国宝石学会や英国宝石協会といった世界的に有名な鑑定士資格試験に合格している。
簡単に合格することはできないかなり難しい資格だと聞いた事がある。
この二つの資格を持っていれば世界中どこでも宝石鑑定士として働けるらしい。
やはり兄は完璧な人間だ。
賢く聡明で美しい人間だという事が改めてよくわかる。
「兄さんはやっぱりすごいな…」
新汰は呟くと本棚をまじまじと見渡した。
と、一番上の右端に他の本の背表紙とは異なるタイトルを見つける。
ゴールドの文字で「特殊性癖」と書かれたその本に新汰は妙に惹かれた。
少し背伸びをして本を引き抜く。
何か危険を訴えるような全面真紅の装丁だ。
新汰は思わず息を呑んだ。
特殊性癖…とはつまり一般的な対象以外に愛情や性的興奮を抱く嗜好の事。
新汰に専門的な知識は全くないが、SMや露出狂、盗撮などが思い浮かぶ。
しかし、なぜ兄がこんな本を所持しているのだろうか。
確かに今回で同性愛者でもある事はわかったが、こんな本を読むほど思い悩んでいたのだろうか。
と、その時本のページに僅かな隙間がある事に気づく。
新汰はその場所を開いてみた。
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