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通過駅だが、一度も降りたことのない駅から徒歩で十分。
シャッターが閉まったアーケード通りから一歩入った静かな路地に目的の店はあった。
木製の洒落た扉には升谷から送られてきた店名があり、オープンと書かれた吊るし看板がぶら下がっている。
来慣れない場所に些か緊張しながらも、新汰は中に入った。
店内も随分洒落ていた。
カウンター席が四つとソファーがあるテーブル席が二つとこぢんまりとしているが、全体的に木材で統一されていて、そこに落ちるオレンジの照明が柔らかく居心地の良い空間を演出している。
主に酒を提供する店だと聞いていたが、変な気取り感がなくリラックスできそうな雰囲気だ。
だが、不思議なことに店内には誰もいなかった。
客どころか店員の姿もない。
もしかして店を間違えただろうか。
新汰がそう思ったとき、カウンターの向こうから人影があらわれた。
「あぁ、新汰くん来たんだ。いらっしゃい」
にこやかな笑みを向けてくる升谷。
彼は黒シャツにギャルソンエプロンという出で立ちだった。
「え?ここで働いてるんですか?」
驚いた新汰は訊ねる。
「働いてるっていうか、自分の店なんだよね」
升谷の言葉に新汰はさらに驚く。
まさか升谷の店だとは思っていなかったからだ。
確かに職種など聞いていなかったが、見た目のイメージでは普通の会社員かと思っていた。
だが以前新汰が酒の美味さがわからないと言ったとき、美味しい酒を知らないからだと言ったことに説明がつく。
なるほど、そういうことか。
新汰は改めて店の中を見回しながらへ~と感嘆した。
「自分の店を持ってるなんてすごいな。雰囲気も落ち着いててセンスがありますね」
「ありがとう。最初に来たとき奏汰もそう言ってくれたよ」
升谷はそう言うと、新汰の前を通過してなぜか入り口に向かって歩いていく。
外のオープンの吊るし看板をひっくり返しクローズに変えると、升谷は扉に鍵をかけた。
「今日は新汰くんのために貸切営業」
ふふ…と笑う升谷。
新汰も微笑み返しながら心の中で目を細めた。
今日は実行できるかもしれない。
いや、してみせる。
升谷のカラダ…あわよくばココロも奪うのだ。
シャッターが閉まったアーケード通りから一歩入った静かな路地に目的の店はあった。
木製の洒落た扉には升谷から送られてきた店名があり、オープンと書かれた吊るし看板がぶら下がっている。
来慣れない場所に些か緊張しながらも、新汰は中に入った。
店内も随分洒落ていた。
カウンター席が四つとソファーがあるテーブル席が二つとこぢんまりとしているが、全体的に木材で統一されていて、そこに落ちるオレンジの照明が柔らかく居心地の良い空間を演出している。
主に酒を提供する店だと聞いていたが、変な気取り感がなくリラックスできそうな雰囲気だ。
だが、不思議なことに店内には誰もいなかった。
客どころか店員の姿もない。
もしかして店を間違えただろうか。
新汰がそう思ったとき、カウンターの向こうから人影があらわれた。
「あぁ、新汰くん来たんだ。いらっしゃい」
にこやかな笑みを向けてくる升谷。
彼は黒シャツにギャルソンエプロンという出で立ちだった。
「え?ここで働いてるんですか?」
驚いた新汰は訊ねる。
「働いてるっていうか、自分の店なんだよね」
升谷の言葉に新汰はさらに驚く。
まさか升谷の店だとは思っていなかったからだ。
確かに職種など聞いていなかったが、見た目のイメージでは普通の会社員かと思っていた。
だが以前新汰が酒の美味さがわからないと言ったとき、美味しい酒を知らないからだと言ったことに説明がつく。
なるほど、そういうことか。
新汰は改めて店の中を見回しながらへ~と感嘆した。
「自分の店を持ってるなんてすごいな。雰囲気も落ち着いててセンスがありますね」
「ありがとう。最初に来たとき奏汰もそう言ってくれたよ」
升谷はそう言うと、新汰の前を通過してなぜか入り口に向かって歩いていく。
外のオープンの吊るし看板をひっくり返しクローズに変えると、升谷は扉に鍵をかけた。
「今日は新汰くんのために貸切営業」
ふふ…と笑う升谷。
新汰も微笑み返しながら心の中で目を細めた。
今日は実行できるかもしれない。
いや、してみせる。
升谷のカラダ…あわよくばココロも奪うのだ。
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