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心臓がどくどくと早鐘を打つ。
頭の中には升谷が放った言葉が繰り返しリピートされていた。
血の繋がった兄弟同士でも愛し合っている…
それは決して新汰と奏汰を指しているわけではない。
そもそも、新汰の兄への気持ちは憧れや尊敬であって、色恋の類ではないと思っていた。
兄は新汰の尊者であり崇高な存在。
穢してはいけない存在だ。
だからこそ兄に近づく人間たちのよこしまな気持ちが許せなかったし、それを排除するのが自分の役目だと思っていた。
なのに今、新汰は図星を突かれたような気持ちになっている。
血の繋がった兄弟でも愛し合っているという升谷の言葉に、明らかに動揺してしまっているのだ。
「どうかした?」
升谷がメニューの向こう側から訊ねてきた。
新汰はハッとすると心の中で唱える。
落ち着け。
升谷はただ、例えばの話をしただけだ。
この男と会ったのは今日がはじめて。
新汰の気持ちなんか知っているわけがない。
そもそも、新汰は兄と愛し合っているわけではない。
一緒に生活をしているが、表面上はごくごく普通の兄弟。
怪しいところなど一切ない。
あるはずがないのだ。
その時、個室の扉が開いて兄がトイレから戻ってきた。
メニューから顔を出すと、升谷は兄に向かっておかえりと声をかけている。
「なんの話をしてたんだ?」
兄の言葉に、落ち着かせたはずの心臓が再びイヤな鼓動を刻み出す。
升谷は笑みを浮かべると、チラリと新汰の方に目配せしてきた。
含みのある視線に背中からドッと汗が噴き出してくる。
ほんの少し、当たり障りのない会話をしただけでやましいことなど何一つ言っていないはずだ。
なのになぜかこの男の仕草に心がかき乱されてしまう。
同性だからだろうか。
それともこの升谷という男の雰囲気がそうさせているのだろうか。
理由は全くわからない。
だが、これだけはわかった。
この男は危険だ。
そばに置いておくと何かとんでもないことを引き起こしそうな気がする。
新汰は升谷が答えるより先に口を開いた。
「今度飲みに連れて行ってくださいってお願いしてたんだ。升谷さんと連絡先交換してもいい?」
全くそんな話はしていなかったが、新汰は升谷に向かってね?と笑いかける。
升谷は一瞬驚いた表情をしながらも、新汰の嘘にあわせて頷く。
何を考えているのか読めない男だ。
そんな二人の関係など全く知らない奏汰は嬉しそうに
「もちろん。糸史と新汰が仲良くなってくれると俺も嬉しいよ」
と言ったのだった。
頭の中には升谷が放った言葉が繰り返しリピートされていた。
血の繋がった兄弟同士でも愛し合っている…
それは決して新汰と奏汰を指しているわけではない。
そもそも、新汰の兄への気持ちは憧れや尊敬であって、色恋の類ではないと思っていた。
兄は新汰の尊者であり崇高な存在。
穢してはいけない存在だ。
だからこそ兄に近づく人間たちのよこしまな気持ちが許せなかったし、それを排除するのが自分の役目だと思っていた。
なのに今、新汰は図星を突かれたような気持ちになっている。
血の繋がった兄弟でも愛し合っているという升谷の言葉に、明らかに動揺してしまっているのだ。
「どうかした?」
升谷がメニューの向こう側から訊ねてきた。
新汰はハッとすると心の中で唱える。
落ち着け。
升谷はただ、例えばの話をしただけだ。
この男と会ったのは今日がはじめて。
新汰の気持ちなんか知っているわけがない。
そもそも、新汰は兄と愛し合っているわけではない。
一緒に生活をしているが、表面上はごくごく普通の兄弟。
怪しいところなど一切ない。
あるはずがないのだ。
その時、個室の扉が開いて兄がトイレから戻ってきた。
メニューから顔を出すと、升谷は兄に向かっておかえりと声をかけている。
「なんの話をしてたんだ?」
兄の言葉に、落ち着かせたはずの心臓が再びイヤな鼓動を刻み出す。
升谷は笑みを浮かべると、チラリと新汰の方に目配せしてきた。
含みのある視線に背中からドッと汗が噴き出してくる。
ほんの少し、当たり障りのない会話をしただけでやましいことなど何一つ言っていないはずだ。
なのになぜかこの男の仕草に心がかき乱されてしまう。
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それともこの升谷という男の雰囲気がそうさせているのだろうか。
理由は全くわからない。
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何を考えているのか読めない男だ。
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「もちろん。糸史と新汰が仲良くなってくれると俺も嬉しいよ」
と言ったのだった。
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