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扉が開き、顔をのぞかせたのは兄だった。
少しバツの悪そうな表情で
「待たせて悪いな」
と謝ってくる。
「そんなに待ってないよ」
新汰がそう返すと、兄はにこりと微笑む。
そして、背後にいる誰かに向かって先に入るよう促した。
「こんばんは」
軽快な挨拶とともに入って来たのは…男だった。
一瞬戸惑いながらも、新汰もこんばんはと挨拶を返す。
しかし頭の中はたちまちハテナマークでいっぱいになる。
どうして男が?
今日は兄の恋人が来る日のはずだ。
もしかして予定が変わって兄の友人でも呼んだのだろうか?
それとももう一人後にいるのか?
兄に促された男が新汰の目の前の席に腰を下ろす。
続いて兄も入ってくると個室の扉が閉められる。
どういうことだ?
新汰はこの状況を理解しようとなんとか考えを巡らせた。
今日は恋人を紹介される日。
兄もそれを了承してこの場をセッティングしたはずだ。
だが、目の前にいるのはどう見ても男。
男なのだ。
困惑する新汰に向かって兄が静かに切り出した。
「新汰、紹介するな。こちら升谷さんだ」
升谷と呼ばれた男が新汰に向かってにこりと微笑みを向けてくる。
そして男は少しも躊躇うことなく言った。
「はじめまして新汰君。お兄さんとお付き合いさせてもらっている桝谷糸史です」
驚きのあまり一瞬声を失った新汰だが、なんとか気を持ち直すと無理矢理笑顔をはりつける。
「弟の乾新汰です。いつも兄がお世話になってます」
しかし、笑顔とは裏腹に頭の中はおもちゃ箱をひっくり返したような状態だった。
これまで兄が連れて来た恋人は全員女。
別に決めつけていたわけではないが、てっきり兄はノーマルだと思っていた。
だから男というの全く予想外だったのだ。
新汰は必死に笑顔を作りながら、柔らかく微笑む男を心の中で観察する。
確かにきれいな顔はしている。
黒目がちな瞳とスッと通った鼻梁。
控えめだが全てのパーツが品良く細い輪郭の内側に正しくおさまっている。
しかし、胸や尻は平らだし筋張った腕や喉仏はしっかりと男だ。
どこでどうやってこの男と付き合うことになったのだろうか。
いつもだったら全く興味ないが、妙にそこが気になった。
少しバツの悪そうな表情で
「待たせて悪いな」
と謝ってくる。
「そんなに待ってないよ」
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そして、背後にいる誰かに向かって先に入るよう促した。
「こんばんは」
軽快な挨拶とともに入って来たのは…男だった。
一瞬戸惑いながらも、新汰もこんばんはと挨拶を返す。
しかし頭の中はたちまちハテナマークでいっぱいになる。
どうして男が?
今日は兄の恋人が来る日のはずだ。
もしかして予定が変わって兄の友人でも呼んだのだろうか?
それとももう一人後にいるのか?
兄に促された男が新汰の目の前の席に腰を下ろす。
続いて兄も入ってくると個室の扉が閉められる。
どういうことだ?
新汰はこの状況を理解しようとなんとか考えを巡らせた。
今日は恋人を紹介される日。
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だが、目の前にいるのはどう見ても男。
男なのだ。
困惑する新汰に向かって兄が静かに切り出した。
「新汰、紹介するな。こちら升谷さんだ」
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そして男は少しも躊躇うことなく言った。
「はじめまして新汰君。お兄さんとお付き合いさせてもらっている桝谷糸史です」
驚きのあまり一瞬声を失った新汰だが、なんとか気を持ち直すと無理矢理笑顔をはりつける。
「弟の乾新汰です。いつも兄がお世話になってます」
しかし、笑顔とは裏腹に頭の中はおもちゃ箱をひっくり返したような状態だった。
これまで兄が連れて来た恋人は全員女。
別に決めつけていたわけではないが、てっきり兄はノーマルだと思っていた。
だから男というの全く予想外だったのだ。
新汰は必死に笑顔を作りながら、柔らかく微笑む男を心の中で観察する。
確かにきれいな顔はしている。
黒目がちな瞳とスッと通った鼻梁。
控えめだが全てのパーツが品良く細い輪郭の内側に正しくおさまっている。
しかし、胸や尻は平らだし筋張った腕や喉仏はしっかりと男だ。
どこでどうやってこの男と付き合うことになったのだろうか。
いつもだったら全く興味ないが、妙にそこが気になった。
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