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「今度の恋人はどんな人?」
特に興味はないけど、と心の中でつけ加えながら訊ねてみる。
「そうだな…」
奏汰は頭をかくと少し照れ臭そうにポツポツと語り出した。
「性格はまぁ…穏やかで、話してると楽しい…かな」
「そうなんだ」
「うん」
「いい人?」
「うん、いい人だよ」
兄の言葉を聞きながら新汰は心の中で違うだろと反論した。
兄がこれまで付き合ってきた人の中でいい人なんか一人たりともいなかった。
今年に入ってすぐにできた恋人は、医療事務をしているという兄と同じ歳くらいの女性だった。
一見すると清楚でおとなしそうな感じだったが、デートに行くたびに毎回ブランド物をせがむがめつい女だった。
次に紹介されたのはクラブで働く派手な見た目が特徴の女性だった。明るくて誰とでも打ち解けるような性格だったがとにかくだらしない女で、マナーや約束が守れないタイプだった。
その次に付き合った女性はアニメオタクのレイヤー。付き合う人に自分の推しキャラのコスプレを強要する迷惑な女だった。
その前の年にも数人似たような恋人がいた。
人にはそれぞれ好みというものがある。
それは新汰自身もわかっている。
だが、兄の奏汰が恋人にする女性はあまりにも最低でクズでレベルの低い女ばかりなのだ。
こういっては何なのだが、兄の鑑定士としての能力を疑ってしまうほどだ。
物は鑑定できるが、人間は鑑定できない。
つまりそういうことなのだろうか。
しかし、だからといって弟が兄の恋人を否定する権利があるはずもない。
兄なりの嗜好というものがあるし、新汰が苦言してどうにかなるような問題でもない。
そもそもそんなことをして兄との関係が気不味くなるのは嫌だ。
新汰にとって奏汰は憧れで完璧で唯一無二の存在。
奏汰がいなければこの世に生きている意味なんてないし、この世のどんなものにも価値はない。
けれどいい加減、胸糞が悪くなるような頭の足りない女ばかりを選んでくるのにはうんざりだった。
兄は基本努力家で真面目で優しい。
そして昔から情に弱いところがある。
泣いて縋られたりして断りきれなかったり、あるいは友人から頼みこまれたりなんかして仕方なく付き合っているに違いない。
そう思わないと、とてもじゃないが平静でいられない。
新汰は心の中のモヤモヤを隠すようにブラックコーヒーを流し込んだ。
特に興味はないけど、と心の中でつけ加えながら訊ねてみる。
「そうだな…」
奏汰は頭をかくと少し照れ臭そうにポツポツと語り出した。
「性格はまぁ…穏やかで、話してると楽しい…かな」
「そうなんだ」
「うん」
「いい人?」
「うん、いい人だよ」
兄の言葉を聞きながら新汰は心の中で違うだろと反論した。
兄がこれまで付き合ってきた人の中でいい人なんか一人たりともいなかった。
今年に入ってすぐにできた恋人は、医療事務をしているという兄と同じ歳くらいの女性だった。
一見すると清楚でおとなしそうな感じだったが、デートに行くたびに毎回ブランド物をせがむがめつい女だった。
次に紹介されたのはクラブで働く派手な見た目が特徴の女性だった。明るくて誰とでも打ち解けるような性格だったがとにかくだらしない女で、マナーや約束が守れないタイプだった。
その次に付き合った女性はアニメオタクのレイヤー。付き合う人に自分の推しキャラのコスプレを強要する迷惑な女だった。
その前の年にも数人似たような恋人がいた。
人にはそれぞれ好みというものがある。
それは新汰自身もわかっている。
だが、兄の奏汰が恋人にする女性はあまりにも最低でクズでレベルの低い女ばかりなのだ。
こういっては何なのだが、兄の鑑定士としての能力を疑ってしまうほどだ。
物は鑑定できるが、人間は鑑定できない。
つまりそういうことなのだろうか。
しかし、だからといって弟が兄の恋人を否定する権利があるはずもない。
兄なりの嗜好というものがあるし、新汰が苦言してどうにかなるような問題でもない。
そもそもそんなことをして兄との関係が気不味くなるのは嫌だ。
新汰にとって奏汰は憧れで完璧で唯一無二の存在。
奏汰がいなければこの世に生きている意味なんてないし、この世のどんなものにも価値はない。
けれどいい加減、胸糞が悪くなるような頭の足りない女ばかりを選んでくるのにはうんざりだった。
兄は基本努力家で真面目で優しい。
そして昔から情に弱いところがある。
泣いて縋られたりして断りきれなかったり、あるいは友人から頼みこまれたりなんかして仕方なく付き合っているに違いない。
そう思わないと、とてもじゃないが平静でいられない。
新汰は心の中のモヤモヤを隠すようにブラックコーヒーを流し込んだ。
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