2 / 46
2
しおりを挟む
「今度の恋人はどんな人?」
特に興味はないけど、と心の中でつけ加えながら訊ねてみる。
「そうだな…」
奏汰は頭をかくと少し照れ臭そうにポツポツと語り出した。
「性格はまぁ…穏やかで、話してると楽しい…かな」
「そうなんだ」
「うん」
「いい人?」
「うん、いい人だよ」
兄の言葉を聞きながら新汰は心の中で違うだろと反論した。
兄がこれまで付き合ってきた人の中でいい人なんか一人たりともいなかった。
今年に入ってすぐにできた恋人は、医療事務をしているという兄と同じ歳くらいの女性だった。
一見すると清楚でおとなしそうな感じだったが、デートに行くたびに毎回ブランド物をせがむがめつい女だった。
次に紹介されたのはクラブで働く派手な見た目が特徴の女性だった。明るくて誰とでも打ち解けるような性格だったがとにかくだらしない女で、マナーや約束が守れないタイプだった。
その次に付き合った女性はアニメオタクのレイヤー。付き合う人に自分の推しキャラのコスプレを強要する迷惑な女だった。
その前の年にも数人似たような恋人がいた。
人にはそれぞれ好みというものがある。
それは新汰自身もわかっている。
だが、兄の奏汰が恋人にする女性はあまりにも最低でクズでレベルの低い女ばかりなのだ。
こういっては何なのだが、兄の鑑定士としての能力を疑ってしまうほどだ。
物は鑑定できるが、人間は鑑定できない。
つまりそういうことなのだろうか。
しかし、だからといって弟が兄の恋人を否定する権利があるはずもない。
兄なりの嗜好というものがあるし、新汰が苦言してどうにかなるような問題でもない。
そもそもそんなことをして兄との関係が気不味くなるのは嫌だ。
新汰にとって奏汰は憧れで完璧で唯一無二の存在。
奏汰がいなければこの世に生きている意味なんてないし、この世のどんなものにも価値はない。
けれどいい加減、胸糞が悪くなるような頭の足りない女ばかりを選んでくるのにはうんざりだった。
兄は基本努力家で真面目で優しい。
そして昔から情に弱いところがある。
泣いて縋られたりして断りきれなかったり、あるいは友人から頼みこまれたりなんかして仕方なく付き合っているに違いない。
そう思わないと、とてもじゃないが平静でいられない。
新汰は心の中のモヤモヤを隠すようにブラックコーヒーを流し込んだ。
特に興味はないけど、と心の中でつけ加えながら訊ねてみる。
「そうだな…」
奏汰は頭をかくと少し照れ臭そうにポツポツと語り出した。
「性格はまぁ…穏やかで、話してると楽しい…かな」
「そうなんだ」
「うん」
「いい人?」
「うん、いい人だよ」
兄の言葉を聞きながら新汰は心の中で違うだろと反論した。
兄がこれまで付き合ってきた人の中でいい人なんか一人たりともいなかった。
今年に入ってすぐにできた恋人は、医療事務をしているという兄と同じ歳くらいの女性だった。
一見すると清楚でおとなしそうな感じだったが、デートに行くたびに毎回ブランド物をせがむがめつい女だった。
次に紹介されたのはクラブで働く派手な見た目が特徴の女性だった。明るくて誰とでも打ち解けるような性格だったがとにかくだらしない女で、マナーや約束が守れないタイプだった。
その次に付き合った女性はアニメオタクのレイヤー。付き合う人に自分の推しキャラのコスプレを強要する迷惑な女だった。
その前の年にも数人似たような恋人がいた。
人にはそれぞれ好みというものがある。
それは新汰自身もわかっている。
だが、兄の奏汰が恋人にする女性はあまりにも最低でクズでレベルの低い女ばかりなのだ。
こういっては何なのだが、兄の鑑定士としての能力を疑ってしまうほどだ。
物は鑑定できるが、人間は鑑定できない。
つまりそういうことなのだろうか。
しかし、だからといって弟が兄の恋人を否定する権利があるはずもない。
兄なりの嗜好というものがあるし、新汰が苦言してどうにかなるような問題でもない。
そもそもそんなことをして兄との関係が気不味くなるのは嫌だ。
新汰にとって奏汰は憧れで完璧で唯一無二の存在。
奏汰がいなければこの世に生きている意味なんてないし、この世のどんなものにも価値はない。
けれどいい加減、胸糞が悪くなるような頭の足りない女ばかりを選んでくるのにはうんざりだった。
兄は基本努力家で真面目で優しい。
そして昔から情に弱いところがある。
泣いて縋られたりして断りきれなかったり、あるいは友人から頼みこまれたりなんかして仕方なく付き合っているに違いない。
そう思わないと、とてもじゃないが平静でいられない。
新汰は心の中のモヤモヤを隠すようにブラックコーヒーを流し込んだ。
0
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説

愛する者の腕に抱かれ、獣は甘い声を上げる
すいかちゃん
BL
獣の血を受け継ぐ一族。人間のままでいるためには・・・。
第一章 「優しい兄達の腕に抱かれ、弟は初めての発情期を迎える」
一族の中でも獣の血が濃く残ってしまった颯真。一族から疎まれる存在でしかなかった弟を、兄の亜蘭と玖蘭は密かに連れ出し育てる。3人だけで暮らすなか、颯真は初めての発情期を迎える。亜蘭と玖蘭は、颯真が獣にならないようにその身体を抱き締め支配する。
2人のイケメン兄達が、とにかく弟を可愛がるという話です。
第二章「孤独に育った獣は、愛する男の腕に抱かれ甘く啼く」
獣の血が濃い護は、幼い頃から家族から離されて暮らしていた。世話係りをしていた柳沢が引退する事となり、代わりに彼の孫である誠司がやってくる。真面目で優しい誠司に、護は次第に心を開いていく。やがて、2人は恋人同士となったが・・・。
第三章「獣と化した幼馴染みに、青年は変わらぬ愛を注ぎ続ける」
幼馴染み同士の凛と夏陽。成長しても、ずっと一緒だった。凛に片思いしている事に気が付き、夏陽は思い切って告白。凛も同じ気持ちだと言ってくれた。
だが、成人式の数日前。夏陽は、凛から別れを告げられる。そして、凛の兄である靖から彼の中に獣の血が流れている事を知らされる。発情期を迎えた凛の元に向かえば、靖がいきなり夏陽を羽交い締めにする。
獣が攻めとなる話です。また、時代もかなり現代に近くなっています。

過去を知られた兄は、弟の愛を拒めない
すいかちゃん
BL
かつて男娼として生きてきた聡一郎。その事は家族にさえ言っていない。ある日。外国から弟の久人が帰ってくる。大人の男になった久人は、聡一郎の過去を知っていて…。

美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない
すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。
実の親子による禁断の関係です。


若旦那からの甘い誘惑
すいかちゃん
BL
使用人として、大きな屋敷で長年奉公してきた忠志。ある日、若旦那が1人で淫らな事をしているのを見てしまう。おまけに、その口からは自身の名が・・・。やがて、若旦那の縁談がまとまる。婚礼前夜。雨宿りをした納屋で、忠志は若旦那から1度だけでいいと甘く誘惑される。いけないとわかっていながら、忠志はその柔肌に指を・・・。
身分差で、誘い受けの話です。
第二話「雨宿りの秘密」
新婚の誠一郎は、妻に隠れて使用人の忠志と関係を続ける。
雨の夜だけの関係。だが、忠志は次第に独占欲に駆られ・・・。
冒頭は、誠一郎の妻の視点から始まります。

令息だった男娼は、かつての使用人にその身を買われる
すいかちゃん
BL
裕福な家庭で育った近衛育也は、父親が失踪した為に男娼として働く事になる。人形のように男に抱かれる日々を送る育也。そんな時、かつて使用人だった二階堂秋臣が現れ、破格の金額で育也を買うと言いだす。
かつての使用人であり、初恋の人でもあった秋臣を拒絶する育也。立場を利用して、その身体を好きにする秋臣。
2人はすれ違った心のまま、ただ身体を重ねる。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
ド平凡な俺が全員美形な四兄弟からなぜか愛され…執着されているらしい
パイ生地製作委員会
BL
それぞれ別ベクトルの執着攻め4人×平凡受け
★一言でも感想・質問嬉しいです:https://marshmallow-qa.com/8wk9xo87onpix02?t=dlOeZc&utm_medium=url_text&utm_source=promotion
更新報告用のX(Twitter)をフォローすると作品更新に早く気づけて便利です
X(旧Twitter): https://twitter.com/piedough_bl
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる