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第一章
※第十三話 狂った王妃
しおりを挟む「ああ…なんということ……私の、王子……」
第一王子アスクレーが死去した。
この知らせは、すぐに城内に知れ渡る。
王妃の画策により、病弱のアスクレーに媚薬で無理矢理アンテノール侯爵令嬢を抱かせた。王位に就けないであろうアスクレーの代わりに、その子どもを王位にと考えてのことだった。しかし、すでにボロボロだった体に鞭打ってことに及んだものだから、耐えきれず、王子は命を落としてしまった。
「王妃様……」
「ええ、ええ……悲しいけれど、仕方ないわ。これも運命なのよ……」
「……子種はしっかりと、頂戴しました」
「そう……いい知らせを、待っているわ」
王妃の悲しみは本物だ。しかし、王位に就けない息子の役目は終わった、と子種を授かった令嬢に期待を寄せた。
第一王子の訃報は国中に知らされ、国葬も行われた。王妃は悲しみの分だけ、次代の誕生を心待ちにした。王は、もともと病弱だった王子には何の期待もしていなかったので、亡骸を見て「くたばったか」と、ただひと言投げかけるだけだった。
そんな中、第二王子は狼狽えていた。
王位継承権を放棄するつもりでいたのだが、第一王子が亡くなったことで継承権第一位に繰り上がってしまったのだ。王子は自分とジスだけ。平民の子か、神女の子か。考えるまでもなく、ジスが次の王だろうとこのときは思った。早く、継承権を放棄しなければ……と。
「子は、成りませんでした」
侯爵令嬢から、そう報告を受けた王妃は絶望し、「お前が我が子を殺したんだ」と令嬢をその手で殴り殺してしまう。
そして、自分が次代の王を操る立場に就けなくなったことに絶望し、次第に狂っていく。
「そう、そうよ。まだ手はあるわ……」
狂った王妃が思いついた手とは、第二王子を手中に収めるというものだった。
ある日の夜、王妃は静かな回廊を通って第二王子の寝所にやってきた。部屋の前に常駐している宮兵は深夜の来客を不審に思うが、相手が王妃であるなら何もできない。おとなしく部屋への扉を開放した。
「王子……ピノシス王子……」
「う……ん…?」
「私よ。エリス、よ」
「エリ、ス……王妃?!」
「ふふふ……」
思いもしない人物の来訪とその姿に驚愕するピノシス。寝台の上で、慌てて上体を起こしたが、起き上がることを遮られてしまう。
「王妃様、いったい……」
「私ね、欲しいものがあるのよ」
「は?」
「ふふふ……」
「ちょっ……!」
エリスはピノシスの上に跨って、動けないようにしている。片手で下半身を弄り、もう片方の手でピノシスの手を取り自身の豊満な胸に持っていく。
ピノシスは、こんなことはいけない、と思ったが相手は王妃である。強く出れないし突き飛ばすわけにもいかず、されるがままになるしかなかった。そしてだんだんと昂ってくる下半身をどうすることもでず、それを下履きから取り出されても抵抗できず、ついにはそこにエリスが腰を下ろすのを許してしまった。
「お、おう、ひ…さま」
「ふふふふふ……あははははは!!」
「っ!!」
狂ったように自分の上で腰を振りつづける王妃に戦慄するも、どうすることもできないピノシス。ついにはつながったまま、精を放ってしまう。
「ううっ…………」
「うふふっ」
エリスはまるで少女のように、嬉しそうにピノシスに口付けて部屋を後にした。
その日から、エリスは何度も何度もピノシスに抱かれた。
ピノシスはそれを拒むことができなかった。
そしてついに、それはゼシウスの耳にも届く。
「ははははは! ついに狂ったか!」
「もっ、あ……ゼシウスっ!」
こちらはこちらで、聖女ミアに腰を打ちつけている最中の王ゼシウス。報告を受けてずいぶんと愉快な気持ちになっているようだ。
「……いかがいたしますか」
「俺が行こう」
「えっ、ちょっ……っ!」
突然、ミアの中からずるりと自身を引き出すと、文句を言う聖女をあしらい床に落ちていたガウンを羽織って部屋を出た。
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