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14.恋人のふりをすることになりました。
しおりを挟むヴェッセルさんとリャラスさん、そしてジークさんと4人で、今後のための対策会議をした結果、ジークさんの恋人主張をすることに決定した。
聞いたところ、ジークさんは現王の歳の離れた弟で、とにかく権力のある王弟公爵閣下だ。ほとんどの人の意見を退けられる。なので恋人役、ということで落ち着いたのだが、すでに恋人だと思っていたジークさんは、恋人役というのがお気に召さないようで不機嫌だった。
「私の心を弄んで、悪い子だねヨリコは。」
「は、はは。ごめんなさい。」
「いいよ。それでも、私のことは好きなんだろう?」
「まあ、あの、恋人的なそれとは違いますけど、好き……です。」
「ふふっ。それに、顔も好き?」
「あ、はい。どストライクです。」
「なら、この顔を使って存分に口説かせてもらうよ。」
あ、どストライクの意味通じた。この世界、野球あるんだ。と、迫るイケメンを前に思考だけはほかへ飛ばして平静を保つ。
こんな私の何がお気に召したのかわからないが、この日から、プレゼントの山に溺れて、過剰な愛の囁きを受けるという過酷な日々が始まった。
「ヨリコが欲しがっていたクジャラの羽根だよ。装飾に使うんだろう? さあ、受け取ってくれ。」
「わ! Sランクモンスターじゃないですか! ありがとうございますっ!!」
「ふふっ。喜んでくれてよかったよ。」
他の日。
「そろそろストックが無いのではないかと思って、各種木を切り倒してきたよ。」
「わあ! ありがとうございます! あっ、松にケヤキに竹まである!」
「ふふっ、たくさん使ってね。」
また他の日。
「虹色の彩花を試してみたいと言っていただろう? 君と何日も離れるのはつらかったけど、ほら、採ってきたよ。」
「わあ! あの、霊峰ビャダコルト山の頂上付近の断崖絶壁にあるっていう幻の彩花! しばらく顔を見ないと思っていたら、そんなところまで行っていたんですね。ありがとうございます!」
「寂しかったかい? ほら、会えなかった分も甘えていいんだよ?」
「あ、いや、結構です。……そのキラキラしい笑顔を近づけないでくださいっ」
プレゼントは主に、クラフト素材だった。ギルドに依頼したらいったい何万ギュルかかるのだろうという量の素材をプレゼントしてくれた。
「こないだ家具を持ってきてくれたときはすぐ帰ってしまったけど、今日は私の部屋でゆっくりしていかないか?」
「え、何故です?」
「それはもちろん、ああいや、婚姻前に過剰なスキンシップはしないよ? だけど――」
「ストーップ! 嫌な予感しかしないからお口チャック! 今日は行きませんっっ!!」
そのほかにも、カフェに行こう食事に行こうと連れ出されてはいるが、お家デートはなんとか防いでいる。身の危険を感じるから。
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