【第二章連載中】妹?義妹ですらありませんけど?~王子様とは婚約破棄して世界中の美味しいものが食べたいですわ~

井上 佳

文字の大きさ
上 下
31 / 48

第三十話 帰宅した当主、息子に捕まる

しおりを挟む

「そこで聞いたのだ。エリシャに命の危機が迫っている……と」

「命の危機、ですか……」

「あ、ああ……」

「そう、だったかしら?」

「まあ結構危機はありますけどね」

「やはりそうなのか!」

「あーいや、まあ、俺らで防げる程度のちっちゃいやつですけど」

「ちっちゃい……」


私は、ギルテシュに言われとにかく早く帰らねば、とジダール海峡から王都のエストルム邸までの道を急いだ。
だいぶ前からギルテシュは、エストルム邸での話を私にしようとしていた。だが、どうしてもメルセデュースの顔が浮かび、あの時の喪失感がまだすぐ隣にあるようで、それを振り払うように逃げるしかなかった。

そうして数年が経ち、しびれを切らしたギルテシュが、いきなり声を張って言ったのだ。それこそ戦場で指揮をする時のようなよく通る声だった。


「このままではエリシャ様が殺されます!」

「!”#$%&’()=PL………………え?」

「このままでは! あなたがアドゥアナから連れ帰った娘に! エリシャ様が殺されます!」

「アドゥアナの、娘?」


殺される?

どういうことだ……。

アドゥアナは駐屯地のある町だが、連れ帰った娘? 

反射的に逃げ出そうとした足を戻して、考えた。

そう、確かに、ボルティ国から逃げてきたという親子をあの辺りで保護したのは覚えている。元々、ボルティの貴族家でメイドをやっていたがひどい扱いだったと聞いて、娘のほうがエリシャと年齢も近いことから、エストルム邸で下働きでもしたらいい、と連れ帰ってヴァルデマールさんに面倒を見るよういいつけた、ことはあったが……。


「その娘、か?」

「え? 下働き??」

「あ、ああ。そのつもりだったが」

「そんな馬鹿な!」


そこで、珍しく声を張り上げ話すギルテシュから、今のエストルム邸の現状を聞いた。









「それで慌てて……」

「下働き……? 愛人ではなくて??」

「愛人!? とんでもない! そんなもの私に必要ないだろう!」

「……今でも、お母様を……愛していらっしゃいますか?」

「っ!…… もちろんだ」

「お父様……」


ああ、エリシャ……エリシャ…………久しぶりに見た娘は、亡き妻にそっくりだった。


「………………っ!!!」

「逃がしませんよ、父上」

「はっきりしてもらいましょうか」

「エレン……エドガー……見ないうちに、立派になったな……」


勢いでここまできたが、エリシャを前にしていることに気づいた私は、やはり耐えられず逃げ出そうとしたのだが……立派に育ちすぎた息子たちからは、逃げる術がなかった。




しおりを挟む
感想 79

あなたにおすすめの小説

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました

常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。 裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。 ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

元婚約者は戻らない

基本二度寝
恋愛
侯爵家の子息カルバンは実行した。 人前で伯爵令嬢ナユリーナに、婚約破棄を告げてやった。 カルバンから破棄した婚約は、ナユリーナに瑕疵がつく。 そうなれば、彼女はもうまともな縁談は望めない。 見目は良いが気の強いナユリーナ。 彼女を愛人として拾ってやれば、カルバンに感謝して大人しい女になるはずだと考えた。 二話完結+余談

ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?

ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。 一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?

ある愚かな婚約破棄の結末

オレンジ方解石
恋愛
 セドリック王子から婚約破棄を宣言されたアデライド。  王子の愚かさに頭を抱えるが、周囲は一斉に「アデライドが悪い」と王子の味方をして…………。 ※一応ジャンルを『恋愛』に設定してありますが、甘さ控えめです。

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。

西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。 私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。 それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」 と宣言されるなんて・・・

妹と婚約者が結婚したけど、縁を切ったから知りません

編端みどり
恋愛
妹は何でもわたくしの物を欲しがりますわ。両親、使用人、ドレス、アクセサリー、部屋、食事まで。 最後に取ったのは婚約者でした。 ありがとう妹。初めて貴方に取られてうれしいと思ったわ。

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?

リオール
恋愛
両親に虐げられ 姉に虐げられ 妹に虐げられ そして婚約者にも虐げられ 公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。 虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。 それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。 けれど彼らは知らない、誰も知らない。 彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を── そして今日も、彼女はひっそりと。 ざまあするのです。 そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか? ===== シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。 細かいことはあまり気にせずお読み下さい。 多分ハッピーエンド。 多分主人公だけはハッピーエンド。 あとは……

処理中です...