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第二十話 護衛と妹の仲がいいので兄は嫉妬している
しおりを挟む「いない?」
「っはい、すみません……っ」
魔装戦が始まり、2組目の試合の途中で、エリシャについている護衛騎士のリノ・カートナーが駆け込んできた。ここは国内の貴賓席なので、一番身分が高いのは私が護衛している王太子殿下だ。ギザーク様に断りを入れてリノの話を聞くと、こういうことだった。
控え室でエリシャと二人でお茶を飲んでいたが、魔装戦が始まったのでエリシャは観戦に行くと言い出した。しかしリノは動き出した食欲が止まらずまだお菓子を食べたいと言って、エリシャの出番は7番目なのだから、もう少し控え室で待つように言った。
しかし、2組目に出場するジオラルド・ハーティシャーの氷魔装が見たいからといって聞かないエリシャ。
ちょうどそのとき、控え室前の廊下を女生徒たちが、「次、ジオラルド様よね!」「ええ! きっとあの氷の魔装、素晴らしいのでしょうね!!」「知ってる? 今日は今までにない、特別な魔装をなさるそうよ!」「まあ! ほんとう? それは見なくてはいけないわね! 急ぎましょう!」と大声で話しながら通ったという。
それを聞いたエリシャは居ても立っても居られなくなり控え室を飛び出し、まだお菓子を食べている途中だったリノは、残してはいけないとすぐに席を立てなかったため出遅れた。きちんと皿を空にしてお茶も飲み干してから席を立ち部屋を出たときにはエリシャを見失っており、ジオラルトの戦いを観ているのだろうと闘技場をくまなく探すもその姿は見つからなかった、と。
「それで慌てて来たのか」
「そう、です」
「……ツッコミどころが満載だが、今は置いておこう」
「そうしてください」
まず、なぜ護衛騎士が主と一緒にお茶を飲み菓子を食べるのだ?
なぜ、主の指示より自分の食欲を優先したのだ?
なぜ主の命令を断り提案し直す??
いやお残しダメよ、と礼儀正しいのはいいがなぜすぐエリシャを追わなかった??
取り敢えずそれは置いておこう。昔からこの二人はこんな感じでやっているようだから、私が口を挟むことではない。
ない……が!
「とりあえずひと言だけ言わせてもらおう」
「え」
「ずるい!」
「はあ」
エリシャと二人でティータイムなど、5年前に王太子の近衛になってからは一度もない。それをこの超絶顔面偏差値撃髙騎士め。仲良くしやがって。
「まあいい、それもあとだ」
「お願いします」
私は探索魔法の使い手だ。直接攻撃や防御には向かないが、情報戦はそこらのものには負けない。早速エリシャをサーチする。
……
…………
………………
見つからない。
この会場から学園まで範囲を広げサーチしたが、エリシャは見つからない。
「防壁があるな」
「魔法の干渉を受けないっていうと」
学園長室は、そもそも学園長しか入れない仕様だ。職員室は、誰かしらがいるので例えばさらってきた人間を転がしておくわけにもいかない。そうすると残りはーー
「「生徒会室」」
「了解っ!」
「あっ、待てリノ! 私も行く!」
「私も連れていけ」
耳元で男に囁かれるというのは、気持ち悪いな、というのは思っただけなので不敬罪には問わないでくださいよ、ギザーク様。
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