19 / 47
第十九話 脳内ピンク王子の失態
しおりを挟む
ピオミルは火魔法が使える。
侯爵家の血筋だし、魔装戦ではきっと赤い鎧姿が映えるだろうと思い、彼女を出場選手に推薦しておいた。
どうせならその実力で、エリシャをやっつけてほしい。
私が使える魔法は土魔法で、特に防御壁特化だから戦いには向かないのだ。
用意した王族用の控室に、ピオミルを連れてやってきた。
「あの、ギース様、ここは?」
「遠慮するな。王族用の控え室だが、お前は次期王子妃だからな」
「あの、控え室って……」
「ああ。ははっ、魔装戦の選手登録、しておいたぞっ」
グッとサムズアップしてウインクしてみせると、ピオミルの顔色がサーッと青ざめた。
「ど、どうした?」
「ギース様……魔装戦って魔法で戦う大会ですよね?」
「ああ、まあ厳密に言うと魔法を纏って戦う大会、だな」
「わ、わたしそんなことできませんっ」
「え?」
なんと、聞くところによると、ピオミルは火魔法が使えはするが、魔力が少ないらしい。魔力が少ないと、鎧や武器として纏い、それを持続する必要がある魔装には向かない。なんてことだ!
「そうなのか?! なんだ、エリシャをこてんぱんにしてやるいい機会だと思っていたのだが……」
魔装を維持できないとなれば、そもそも大会に出るのも厳しいだろう。私の下調べ不足だった。以前ピオミルが、いじめてくる姉を火魔法でやり返した、と言っていたからエリシャより強いのかと思ったが……、そうか、それも小さい子供の頃の話だったのだな。
「お姉様をこてんぱんに……」
「ああ、私は防御特化の土魔法だから、魔装戦には向いていないしな」
「それなら……」
「ん?」
ピオミルは俯いて、何やら考え込んでいる様子だ。とりあえず座らせ、側近にはピオミルの参加取り消しを申し出るよう伝えた。
「ギース様っ」
「!」
「お姉様をギャフンと言わせる、いい考えが浮かびましたわっ」
「なに! ほんとうか!」
「ええ、お耳を貸してください」
「あ、ああ」
そしてそっと私の耳に寄って話始めるピオミル。いっ、息が……や、やわらかいものがっ……!!
「――どうです?」
「っあ! ああ、す、素晴らしいと思う!」
「まあ! よかったわ! ではさっそく仕掛けてきますね!」
そういって素早く部屋を出ていくピオミルを、私は見送った。
しまった。
思考がピンクに支配され、ほとんど聞いていなかった。
侯爵家の血筋だし、魔装戦ではきっと赤い鎧姿が映えるだろうと思い、彼女を出場選手に推薦しておいた。
どうせならその実力で、エリシャをやっつけてほしい。
私が使える魔法は土魔法で、特に防御壁特化だから戦いには向かないのだ。
用意した王族用の控室に、ピオミルを連れてやってきた。
「あの、ギース様、ここは?」
「遠慮するな。王族用の控え室だが、お前は次期王子妃だからな」
「あの、控え室って……」
「ああ。ははっ、魔装戦の選手登録、しておいたぞっ」
グッとサムズアップしてウインクしてみせると、ピオミルの顔色がサーッと青ざめた。
「ど、どうした?」
「ギース様……魔装戦って魔法で戦う大会ですよね?」
「ああ、まあ厳密に言うと魔法を纏って戦う大会、だな」
「わ、わたしそんなことできませんっ」
「え?」
なんと、聞くところによると、ピオミルは火魔法が使えはするが、魔力が少ないらしい。魔力が少ないと、鎧や武器として纏い、それを持続する必要がある魔装には向かない。なんてことだ!
「そうなのか?! なんだ、エリシャをこてんぱんにしてやるいい機会だと思っていたのだが……」
魔装を維持できないとなれば、そもそも大会に出るのも厳しいだろう。私の下調べ不足だった。以前ピオミルが、いじめてくる姉を火魔法でやり返した、と言っていたからエリシャより強いのかと思ったが……、そうか、それも小さい子供の頃の話だったのだな。
「お姉様をこてんぱんに……」
「ああ、私は防御特化の土魔法だから、魔装戦には向いていないしな」
「それなら……」
「ん?」
ピオミルは俯いて、何やら考え込んでいる様子だ。とりあえず座らせ、側近にはピオミルの参加取り消しを申し出るよう伝えた。
「ギース様っ」
「!」
「お姉様をギャフンと言わせる、いい考えが浮かびましたわっ」
「なに! ほんとうか!」
「ええ、お耳を貸してください」
「あ、ああ」
そしてそっと私の耳に寄って話始めるピオミル。いっ、息が……や、やわらかいものがっ……!!
「――どうです?」
「っあ! ああ、す、素晴らしいと思う!」
「まあ! よかったわ! ではさっそく仕掛けてきますね!」
そういって素早く部屋を出ていくピオミルを、私は見送った。
しまった。
思考がピンクに支配され、ほとんど聞いていなかった。
146
お気に入りに追加
3,210
あなたにおすすめの小説

【完結】旦那様、わたくし家出します。
さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。
溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。
名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。
名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。
登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*)
第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中
お飾り王妃の愛と献身
石河 翠
恋愛
エスターは、お飾りの王妃だ。初夜どころか結婚式もない、王国存続の生贄のような結婚は、父親である宰相によって調えられた。国王は身分の低い平民に溺れ、公務を放棄している。
けれどエスターは白い結婚を隠しもせずに、王の代わりに執務を続けている。彼女にとって大切なものは国であり、夫の愛情など必要としていなかったのだ。
ところがある日、暗愚だが無害だった国王の独断により、隣国への侵攻が始まる。それをきっかけに国内では革命が起き……。
国のために恋を捨て、人生を捧げてきたヒロインと、王妃を密かに愛し、彼女を手に入れるために国を変えることを決意した一途なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:24963620)をお借りしております。

王侯貴族、結婚相手の条件知ってますか?
時見 靜
恋愛
病弱な妹を虐げる悪女プリシア・セノン・リューゲルト、リューゲルト公爵家の至宝マリーアン・セノン・リューゲルト姉妹の評価は真っ二つに別れていたけど、王太子の婚約者に選ばれたのは姉だった。
どうして悪評に塗れた姉が選ばれたのか、、、
その理由は今夜の夜会にて

【完結】王太子は、鎖国したいようです。【再録】
仲村 嘉高
恋愛
側妃を正妃にしたい……そんな理由で離婚を自身の結婚記念の儀で宣言した王太子。
成人の儀は終えているので、もう子供の戯言では済まされません。
「たかが辺境伯の娘のくせに、今まで王太子妃として贅沢してきたんだ、充分だろう」
あぁ、陛下が頭を抱えております。
可哀想に……次代の王は、鎖国したいようですわね。
※R15は、ざまぁ?用の保険です。
※なろうに移行した作品ですが、自作の中では緩いざまぁ作品をR18指定され、非公開措置とされました(笑)
それに伴い、全作品引き下げる事にしたので、こちらに移行します。
昔の作品でかなり拙いですが、それでも宜しければお読みください。
※感想は、全て読ませていただきますが、なにしろ昔の作品ですので、基本返信はいたしませんので、ご了承ください。
【完結】妹が欲しがるならなんでもあげて令嬢生活を満喫します。それが婚約者の王子でもいいですよ。だって…
西東友一
恋愛
私の妹は昔から私の物をなんでも欲しがった。
最初は私もムカつきました。
でも、この頃私は、なんでもあげるんです。
だって・・・ね

【完結】恋人との子を我が家の跡取りにする? 冗談も大概にして下さいませ
水月 潮
恋愛
侯爵家令嬢アイリーン・エヴァンスは遠縁の伯爵家令息のシリル・マイソンと婚約している。
ある日、シリルの恋人と名乗る女性・エイダ・バーク男爵家令嬢がエヴァンス侯爵邸を訪れた。
なんでも彼の子供が出来たから、シリルと別れてくれとのこと。
アイリーンはそれを承諾し、二人を追い返そうとするが、シリルとエイダはこの子を侯爵家の跡取りにして、アイリーンは侯爵家から出て行けというとんでもないことを主張する。
※設定は緩いので物語としてお楽しみ頂けたらと思います
☆HOTランキング20位(2021.6.21)
感謝です*.*
HOTランキング5位(2021.6.22)

結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。
真田どんぐり
恋愛
ー5年前、ストレイ伯爵家の美しい令嬢、アルヴィラ・ストレイはアレンベル侯爵家の侯爵、ダリウス・アレンベルと結婚してアルヴィラ・アレンベルへとなった。
親同士に決められた政略結婚だったが、アルヴィラは旦那様とちゃんと愛し合ってやっていこうと決意していたのに……。
そんな決意を打ち砕くかのように旦那様の態度はずっと冷たかった。
(しかも私にだけ!!)
社交界に行っても、使用人の前でもどんな時でも冷たい態度を取られた私は周りの噂の恰好の的。
最初こそ我慢していたが、ある日、偶然旦那様とその幼馴染の不倫疑惑を耳にする。
(((こんな仕打ち、あんまりよーー!!)))
旦那様の態度にとうとう耐えられなくなった私は、ついに離縁を決意したーーーー。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる