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第十七話 魔装戦

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秋の園遊会でマゴールパティシエのケーキを堪能できたわたくしは、今度は学園の用事に追われていました。

『魔装戦』

間もなく卒業を控えた第三学年の、魔法が使える生徒の中から希望した者が出場して行われる大会です。
推薦も受け付けています。

魔法を、鎧のように纏い戦うのです。魔法で直接攻撃するのは禁止となっています。

鎧として纏い、武器として持つ。武器の形は剣・槍・斧が選べます。弓や鞭の形は使えません。

毎年、魔装戦では美しく華やかな戦いが見れることから、国内外から貴賓が訪れます。学園だけに留まらず、国内上げての行事と言ってもいいでしょう。

それを生徒会で取り仕切るのです。半端ない仕事量です。

それだというのに、名前だけですが生徒会長であるギース様は、生徒会室を仕事場ではなく私室と思っていらっしゃるのか、役員でない生徒、主にピオミルさんだったりピオミルさんを連れてきてはいちゃいちゃいちゃいちゃ……。嫉妬とかではありませんのよ? ただただイライラします。あなた様の分の仕事もこなしているというのに、長(ちょう)ですのよ、長(ちょう)、生徒会長。長が、仕事場でこんな状態で、生徒会の士気をまったく考えていません。ここに集うのは、副会長であるわたくしと会計バンテ・ジャックス子爵令息、書記のフィリアン・クイース伯爵令嬢、補佐をしてくれているハマメル・エーコラとモンド・ダックス、皆の表情は死んでいます。


「ギース様、よろしければお部屋でくつろがれては?」

「部屋? 私はここでくつろいでいるぞ」

「そうですわね、ずいぶんとくつろいでいらっしゃいますわね。生徒会室で」

「なんだエリシャ、混ざりたいのか?」

「…………」

「なななななんだその顔は!?」

    (い)」

「遠慮するな。混ざりたいというのなら、考えてやらないでもないぞ?」


あらあら、通じませんでしたわね。この方は、ハッキリきっぱり言わないとわからないのです。言ってもわからないことが多いですけどね! 王侯貴族は遠回しにとおまわしに、やわやわ~っと意思を伝えるものですが、汲み取る側が小物だと困ります。汲み取る気すらない方の相手はもっと困ります。


「『目障りだから自分の部屋に引っ込んでください』と申し上げているのです」

「は?」

「ここは生徒会の業務をするための部屋なので。出て、いって、ください」

「なっ!」

「仕事をしない人が来ていい場所ではありません。ピオミルさんとどうこうというのは、どうでもいいです。仕事の邪魔になるので、速やかにご退出ください」


不敬だ不敬だ、そーよそーよ嫉妬して見苦しい、などとのたまっていますが、相手にしていられるほど暇ではありませんでしたので、ハマメルとモンドに壁になってもらい、そのまま部屋から押し出しました。扉を閉じてしまえば、防音ですのでいくら廊下で騒がれても問題ありません。そのうち、なにを騒いでいるのだー、と教師に見つかり連行されることでしょう。まあ、腐っても王子殿下ですから、お話は応接室でお聞きしますよ、といってお茶もお菓子も出るVIP対応でしょうけれど。


「ごめんなさいね、迷惑をかけて」

「エリシャさんのせいじゃナイ」

「婚約者だからってアナタが謝ることナイヨ」

「ありがとう、ハマメル、モンド」


お二人は東のほうの大陸から来た留学生で、国では、ハマメルは第15王子、モンドはその側近だそう。子沢山で、王位継承に関係ない子供たちは放って置かれるので、15番目の王子であるハマメルは、鍛えに鍛えていたから今は筋肉が友達なんですって。モンドもそれに付き合っていたから同じような体系をしている。


「とにかく進めましょう。エリシャさん、学園内での屋台出店希望者リストですが、寄付金の多い順に並べてあります」

「ありがとうバンテ」

「昨年の警備配置図と、今年集められる警備の人数を比べて、その赤丸が省いても大丈夫そうなところです」

「ありがとうフィリアン。こっちはいいけれど、入場ゲートは増員する方向でみておいてちょうだい」

「毎年ゲート付近でのトラブルが上がってきますからね」

「そうね、バンテ。お願いねフィリアン」

「はいっ!」


皆、とても優秀で、人を使うのも上手いので、期間限定で発足されている魔装戦委員会に指示し、各々手分けして仕事に取り掛かります。ハマメルとモンドは、貴賓席の席順作成をしているようですわ。さすが、各国の情勢にも詳しく、誰それ夫人とどこぞの妃はとても仲が悪いので近づけるな、とか、なんとか伯爵はどこぞの王族に懸想しているからその国に命を狙われているとか、……そんな人が呑気に観戦していていいものかしら。まあ、二人に任せておけば、変なことにはならないでしょう。

さあ、邪魔な生徒会長を追い出したここからが本番ですわ。

ちゃっちゃか進めましょう!




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