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第十五話 立場
しおりを挟む「なあピオミル、さっき叔父上が言っていたことなんだが」
「ええ……」
「お前は、エストルムなんだよな?」
「そうですよ。ピオミル・エストルムです」
「叔父上は――」
「何か、勘違いされているのでは? それかもしかしたら……王弟殿下にはお姉様が、そういう意地悪を言っているのかも」
「ああ、エリシャが。なるほどな」
エリシャは余程私に惚れているのだろう。妹と仲良くしているのが気に食わない、そうつまり嫉妬か。んん、悪くないな。
しかし叔父上がエリシャに騙されているようなら、放っておくわけにいかないな。現王弟で学園長でもある叔父上は、国内でも学園内でも多大なる影響力がある人だ。私の敵の味方になられては困る。ここはひとつ、釘を刺しておくとしよう。
「皆、楽しんでいるか」
父上と兄上が入場したようだ。高位の貴族から順に、次々と挨拶に向かう。叔父上と、エリシャ? なぜそこに……私の婚約者だろう! しかもなぜそのまま王族席に並ぶんだ! 私のエスコート無しで!!
私は慌てて、ピオミルを連れて父上のもとへ向かった。
「父上!」
「ああ、ギース。楽しんでいるか?」
「はい。ご覧ください、この美しい姿を! グリーンのガーデンに咲く大輪の花を!」
「ああ、そうか。やはりお前はその娘を連れてきたのだな」
「……っ! 父上もお分かりでしたか!」
やはり、ということは、私の最愛がこのピオミルだということを御存知なのだろう。認めてくださっているというのなら、エリシャとの婚約破棄はスムーズにいきそうだな。
「私がデザインして贈った、彼女に似合うだろう最高級のドレスです。ご堪能下さい」
「いや、俺はいい」
「え?」
「私も結構よ、ギース」
「は、母上?」
なぜだ? こんなに美しいピオミルを、皆が愛でたいはずだろう??
「ギース様、早くお並びください」
「い、言われなくてもわかっている」
エリシャにうながされ、ピオミルを伴い兄上の横に並ぼうと足を進める。と、壇上を警備する兵たちが、ピオミルの前で槍を組んで行く手を阻んだ。
「きゃっ」
「なっ、何をする!」
「こちらは王族席です」
「なにっ? だったらエリシャだってそうだろう!」
侯爵家のエリシャだって王族ではない。同じ侯爵家で、王子である私が直々に伴ってきたピオミルがここに入れないなんておかしいだろう!
「こんなところで無知をひけらかしてどうする。恥をさらすなギース」
「あ、兄上!」
「エリシャ嬢は一応今はお前の婚約者だ。次期王族としてここにいる。いいから早くお前も並べ。皆が待っているだろう」
「っ!」
会場を見ると、皆が注目している。ピオミルと並べないのは残念でならないが、ここで駄々をこねても仕方がないだろう。父上は、私たちのことを分かってくれたのではないのか? まあいい、ピオミルのことはあとできちんと話そう。
そう思い、私はピオミルに戻るよう言って兄上の横に並び、挨拶してくる家臣たちに目をやった。
「皆のもの、本日の園遊会よく参加してくれた。秋の実りの祝い、存分に楽しんでくれ」
「「「わっ!」」」
会場から歓声が上がる。
今年も我が国は、豊作らしい。
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