【第二章連載中】妹?義妹ですらありませんけど?~王子様とは婚約破棄して世界中の美味しいものが食べたいですわ~

井上 佳

文字の大きさ
上 下
11 / 84

第十一話 王弟は学園長に就任した

しおりを挟む
近隣諸国を周り国内も隅々まで視察して王宮へ帰ると、兄は、すべてを放棄して飛び出したにもかかわらず、私を笑顔で迎えてくれた。

そして、自身も卒業した王立のセントリュッツ学園の学園長の椅子に収まり、青春を謳歌する学生たちを日々眺めて過ごしていた。兄が「しばらく何も考えずゆっくり過ごすといい」といったので、ほんとうにぼーっとして過ごしていた。すると、ある日視界によく知っている顔が映った。


「ギースか?」

「叔父上?」

「えっイケメン……」


昼食時に裏庭で、頭を無にして兄に持たされた弁当を食べていた時、甥の現第二王子ギースが女生徒を腕にくっつけて歩いていた。
私の最愛の人を奪った……いや、知らなかったんだ。私がエリシャを想っていることは、エドガーしか知らなかった。ギースは悪くない。ぐずぐずしていた私が悪いのだ。恨むのはお門違い、と言いたいが、エリシャという婚約者がありながら何だその女は。やたらこちらを見ているが……私は今は学園長として学園にいるが、そもそも王族の顔を凝視するなど不敬ではないか。


「お久しぶりです」

「ああ、久しいなギース。学園ではどうだ?」

「やば、声もいい……」

「つつがなく」

「そうか、何よりだ」

「え、笑顔もいい」


ひとりごとかなんだか知らないが、こちらを凝視したまま言葉を挟んでくるとはうっとおしい。私は視線で、ギースに説明を求めた。


「ああ、この娘はピオミルといいます」

「ピオミル?」

「あっ、私、ピオミル・エストルムです」

「……エストルムだと?」

「あっ、はいっ」

「エリシャ・エストルムの妹ですよ」

「エリシャの……」


あの、シュナイダー殿が連れてきた女の連れ子、というわけか。しかしエストルム姓を名乗るとは、いったいどうなっている? 私が冒険者としてここを離れていた間に、ついに入籍したというわけか? いや、だとしても義姉の婚約者の腕にひっついているのはおかしいだろう。いや、元が平民だからその辺の距離感が……いやしかし、エストルム邸にきて何年だ? 4年か5年くらいは経つのか? そもそも入籍することを目的としていたのならば、そのあたりの教育もされているはずでは?? 侯爵家だぞ? …………私は頭を傾げた。


「久しぶりにお会いできてよかったです。お元気そうで」

「ああ、戻った時以来だな。何かあったら言ってくれ」

「はい。それでは」

「あっ、私まだ」

「ん? 行くよ、ピオミル」

「あっ、あ……は、はーい」


ギースは腕に女を引っ付けたまま、その場を去っていった。

あれがエリシャの義妹? だとしても、婚約者である姉を差し置いてその距離感で接するなど……いや未婚ならあのようにベタベタにくっついてのエスコートなどしないだろう。いやエリシャ……え? 婚約……?? ん? 居候ではなく妹?? エストルム?


……どこから考えたらいいかわからないほどの情報量だ。




しおりを挟む
感想 81

あなたにおすすめの小説

伯爵令嬢が婚約破棄され、兄の騎士団長が激怒した。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

姉妹の中で私だけが平凡で、親から好かれていませんでした

四季
恋愛
四姉妹の上から二番目として生まれたアルノレアは、平凡で、親から好かれていなくて……。

この国では魔力を譲渡できる

ととせ
恋愛
「シエラお姉様、わたしに魔力をくださいな」  無邪気な笑顔でそうおねだりするのは、腹違いの妹シャーリだ。  五歳で母を亡くしたシエラ・グラッド公爵令嬢は、義理の妹であるシャーリにねだられ魔力を譲渡してしまう。魔力を失ったシエラは周囲から「シエラの方が庶子では?」と疑いの目を向けられ、学園だけでなく社交会からも遠ざけられていた。婚約者のロルフ第二王子からも蔑まれる日々だが、公爵令嬢らしく堂々と生きていた。

修道女エンドの悪役令嬢が実は聖女だったわけですが今更助けてなんて言わないですよね

星里有乃
恋愛
『お久しぶりですわ、バッカス王太子。ルイーゼの名は捨てて今は洗礼名のセシリアで暮らしております。そちらには聖女ミカエラさんがいるのだから、私がいなくても安心ね。ご機嫌よう……』 悪役令嬢ルイーゼは聖女ミカエラへの嫌がらせという濡れ衣を着せられて、辺境の修道院へ追放されてしまう。2年後、魔族の襲撃により王都はピンチに陥り、真の聖女はミカエラではなくルイーゼだったことが判明する。 地母神との誓いにより祖国の土地だけは踏めないルイーゼに、今更助けを求めることは不可能。さらに、ルイーゼには別の国の王子から求婚話が来ていて……? * この作品は、アルファポリスさんと小説家になろうさんに投稿しています。 * 2025年2月1日、本編完結しました。予定より少し文字数多めです。番外編や後日談など、また改めて投稿出来たらと思います。ご覧いただきありがとうございました!

【完結】婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜

平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。 だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。 流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!? 魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。 そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…? 完結済全6話

訳ありヒロインは、前世が悪役令嬢だった。王妃教育を終了していた私は皆に認められる存在に。でも復讐はするわよ?

naturalsoft
恋愛
私の前世は公爵令嬢であり、王太子殿下の婚約者だった。しかし、光魔法の使える男爵令嬢に汚名を着せられて、婚約破棄された挙げ句、処刑された。 私は最後の瞬間に一族の秘術を使い過去に戻る事に成功した。 しかし、イレギュラーが起きた。 何故か宿敵である男爵令嬢として過去に戻ってしまっていたのだ。

公爵令嬢の一度きりの魔法

夜桜
恋愛
 領地を譲渡してくれるという条件で、皇帝アストラと婚約を交わした公爵令嬢・フィセル。しかし、実際に領地へ赴き現場を見て見ればそこはただの荒地だった。  騙されたフィセルは追及するけれど婚約破棄される。  一度だけ魔法が使えるフィセルは、魔法を使って人生最大の選択をする。

【完結】キズモノになった私と婚約破棄ですか?別に構いませんがあなたが大丈夫ですか?

なか
恋愛
「キズモノのお前とは婚約破棄する」 顔にできた顔の傷も治らぬうちに第二王子のアルベルト様にそう宣告される 大きな傷跡は残るだろう キズモノのとなった私はもう要らないようだ そして彼が持ち出した条件は婚約破棄しても身体を寄越せと下卑た笑いで告げるのだ そんな彼を殴りつけたのはとある人物だった このキズの謎を知ったとき アルベルト王子は永遠に後悔する事となる 永遠の後悔と 永遠の愛が生まれた日の物語

処理中です...