【第二章連載中】妹?義妹ですらありませんけど?~王子様とは婚約破棄して世界中の美味しいものが食べたいですわ~

井上 佳

文字の大きさ
上 下
9 / 48

第九話 別れと

しおりを挟む
「王弟殿下、お迎えに上がりました」

「ああ……」


しばらくして、兄から指示された国事騎士団の送迎・護衛任務を担う第二隊が迎えに来た。

束の間の休息の終わり。

しかし、王宮に戻っても私は生き抜いてみせる。

決意の表情で空を見上げる。すると、心配したのか、エリシャが私の手を握ってくれた。


「エリシャ……」

「帰るの?」

「ああ」

「ずっとここにいてもいいのよ?」

「私はね、楽しい未来を想像することができるようになったんだ」

「楽しい?」

「そう。エリシャのおかげでね。だからまた……、自由の身になったらまた、ここにきていいか?」

「もちろんよ。またきてね」


そういうと、エリシャは私の手をキュッと握って笑顔を見せてくれた。


「まってるね」


可愛かった。


顔が可愛いのはもちろんだが、それだけじゃなく、すべての仕草が可愛いんだ。そして内面も可愛いんだ。お菓子が大好きだけど自分だけじゃなく皆でそれを共有するのが好きだから絶対独り占めしないし、猫が大好きだからって膝に乗っている猫が寝てしまったらどれだけ足がしびれても起きるまで我慢していたり。エリシャ可愛いエピソードを語り出したら時間がいくらあっても足りないからそれはまた今度にしよう。


その後、剣術も魔法も必死で勉強し、毒に怯えなくてすむよう進んで毒物を体内に取り込んで耐性をつけた。もちろん解毒魔法も習得した。その甲斐あって、毒殺を免れ暗殺者は返り討ち、令嬢によるハニートラップも、エリシャでない限り私には効かなかった。

学園ではトップに君臨し続け、生徒会長にも就任した。

気づくのが遅かったが、実はエリシャの上の兄が同学年にいた。2年目に同じクラスになったとき、再会したのだ。
エリシャと同じプラチナブロンドで、瞳の色は彼女より濃いネイビーブルー。私は将来のために、エドガーとは仲良くしておこうと思い彼に近づいた。


「久しぶりだな、エドガー・エストルム」

「王弟殿下、お久しぶりです」

「昨年は妹君に大変世話になった。グイストと呼んでくれ」

「グイスト様、ありがとうございます。私のことはエドガーと」

「ああ、エドガー。それでエリシャのことなんだが――」


私がシュトルポジウム領で世話になっていたとき、その本邸に来ていたのはエリシャとメルディ様だけだった。エドガーと会うのは母のお茶会以来だ。私は昨年、エリシャにどれだけ心を救われたか、またそのときのエリシャの可愛い様子を延々とエドガーに語って聞かせた。
そうしたら彼は、さすがに私がエリシャに抱いた恋心を察してくれたらしく、兄として応援する、と約束してくれた。味方をひとりゲットした。

そうして、学業に鍛錬に実戦に忙しく過ごしていたところ、あの訃報が飛び込んで来たんだ。


"ポジウム侯爵夫人、メルセデュース・エストルム様死去" ……と。




しおりを挟む
感想 79

あなたにおすすめの小説

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました

常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。 裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。 ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

元婚約者は戻らない

基本二度寝
恋愛
侯爵家の子息カルバンは実行した。 人前で伯爵令嬢ナユリーナに、婚約破棄を告げてやった。 カルバンから破棄した婚約は、ナユリーナに瑕疵がつく。 そうなれば、彼女はもうまともな縁談は望めない。 見目は良いが気の強いナユリーナ。 彼女を愛人として拾ってやれば、カルバンに感謝して大人しい女になるはずだと考えた。 二話完結+余談

ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?

ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。 一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?

ある愚かな婚約破棄の結末

オレンジ方解石
恋愛
 セドリック王子から婚約破棄を宣言されたアデライド。  王子の愚かさに頭を抱えるが、周囲は一斉に「アデライドが悪い」と王子の味方をして…………。 ※一応ジャンルを『恋愛』に設定してありますが、甘さ控えめです。

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。

西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。 私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。 それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」 と宣言されるなんて・・・

【完結】婚約破棄されたけど、なぜか冷酷公爵が猛アプローチしてきます

21時完結
恋愛
婚約者である王太子からの突然の婚約破棄。 「お前とは政略結婚だったが、本当に愛する人と結婚する」 そう言われた公爵令嬢のエリスは、社交界の前で屈辱を味わう。だが、そこで思いがけない人物が口を開いた。 「ならば、俺と結婚しよう」 冷酷と名高い公爵、アレクシスが突如彼女に求婚したのだ。戸惑うエリスだったが、彼の真剣な眼差しに流されるように婚約を承諾することに。 しかし、結婚後の彼はなぜか溺愛モード全開! 「お前は俺のものだ。他の男に微笑むな」 「昔からお前が欲しくてたまらなかった」 冷徹な仮面を外し、愛を隠そうとしない公爵に、エリスは困惑するばかり。 さらには、婚約破棄したはずの王太子が、彼女を取り戻そうと動き出して…? これは、婚約破棄から始まる、冷酷公爵の一途な溺愛物語。 「もう絶対に離さない」 ――愛を隠していた男の、猛攻が今始まる!

妹と婚約者が結婚したけど、縁を切ったから知りません

編端みどり
恋愛
妹は何でもわたくしの物を欲しがりますわ。両親、使用人、ドレス、アクセサリー、部屋、食事まで。 最後に取ったのは婚約者でした。 ありがとう妹。初めて貴方に取られてうれしいと思ったわ。

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

処理中です...