【第二章連載中】妹?義妹ですらありませんけど?~王子様とは婚約破棄して世界中の美味しいものが食べたいですわ~

井上 佳

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第三話 私はピオミル・エストルム

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私はピオミル・エストルム。侯爵令嬢よ。10歳の時に、お母さんに連れられてやってきた貴族の家の子供になったの。恋人は王子様なのっ!



ずっと、妬ましかった。

生まれた時からお金持ちで、何一つ苦労していないようなお嬢様。エリシャが、妬ましかった。きれいな指先、つやつやのプラチナブロンドの髪、磨き上げられたスタイルも洗練されたドレスも……私にはないものばかりだった。

だから、奪ってやろうと思ったの。

まずはそのきれいな髪。

あれはこの家に連れてこられてどれくらい経ったときだったかしら? 私は火魔法が使える。髪なんてポッと火をつければ一瞬で燃えてしまうでしょう? あわよくばそのきれいな顔にも火傷を、って思ってチャンスを窺ってた。でも、ないのよ隙が。ぼーっとしているようで周りをつねに警戒しているの、あの女。
それでも、何日も観察して、もう我慢できなくて強行したら、エリシャの護衛の一人が指をパチンって弾いただけで私の火を消しちゃったの。なにあれ、どうなってるの? というかあの護衛……なんてイケメンなの! ずるいわ!


火魔法で髪燃やし作戦が失敗しちゃったから、次はドレスをズタズタにしてやろうと思って部屋に忍び込んだわ。さすがに燃やしちゃったら邸中に被害が出るかもしれないから火はやめたわ。ハサミを持って衣裳部屋に入ると、豪華なドレスが並んでいて……なんであの女ばっかり! 私だって侯爵令嬢になったのよ?! なんで私には買ってくれないの? パニラお母様は、なんか、ふっつーうのワンピースとかは買ってくれるけど、それも可愛くて好きだけど、でもこれじゃあお城の舞踏会には出られないわ!
とにかく憎くて、ハサミを心のままに動かしてやった。ジョキジョキと音を立てて細かくなっていく豪華なドレスを見て、私の心はスーッと落ち着いていった。


そう、細かく切り刻んだはず……なのに! なんで?


なんでか、あの女の12歳の誕生日パーティ用のドレス……それも確かにこの手でギタギタにしたのに!

当日何食わぬ顔で、手触りが良くしなやかで、高級なレースがふんだんにあしらわれたフェアリーピンクの特別なドレスを身にまとっているじゃない! なんで!?!?!?

ほかの日にも、確かに切り刻んだドレスを着ているあいつを、何度も見かけたわ……一体どうなっているの?


髪も燃やせない、ドレスを切り刻んでも元通り、階段の上から突き飛ばしても落ちない、なりふり構わず小屋に閉じ込めて火を放っても傷ひとつなく邸に戻っている。あの女、化け物じゃないの? それとも、護衛がイケメンだからなの?

それなら、とイケメン騎士を私のものにしようとしたら、あの男、なんて言ったと思う? 「俺を雇う金があんたにあるとは思えないんだけど?」ですって! 失礼しちゃうわ! 世の中お金じゃない、愛、愛なのよーって教えてあげようとしたのに、「ガキが……」ですって! さ、さすがにイケメンの目力には、ちょっと、ちょっとだけ、チビっちゃったけど!


そんな日々を過ごしていたら、あの女の婚約が決まったという。

相手は、この国の王子様。

王子様ってことは、王様になる人よね?

そんなのずるい!

私だって侯爵家の娘よ!!

絶対絶対奪い取ってやる!!




そう決意して数年、今では王子様は私の と・り・こっ♡

ちょーっと胸押し付けるだけで、初対面だったのに簡単に落とせたわっ

ふふふっ

チョロすぎて心配だけど、すでにエリシャの婚約者は私のものになっているの。

貴女は惨めに婚約破棄されて落ちぶれていくしかないのよ!


ははっ!

あー楽し…………




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