【第二章連載中】妹?義妹ですらありませんけど?~王子様とは婚約破棄して世界中の美味しいものが食べたいですわ~

井上 佳

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第一話 エリシャ・エストルム

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わたくしの通う学園は、歴史ある王立のセントリュッツ学園です。王族貴族、教育水準を満たしている商家の子や平民も通っています。
一応、学生は平等と謳っていますが、それは表面上のこと。現在在籍している第二王子が通れば皆が道を譲り頭を下げますし、男爵令息と伯爵令息の諍いは、男爵令息の判定負けとなります。
それでもさすがに、成績については家の爵位や寄付金額でどうにもならないよう対策がなされています。学園の最高責任者には代々王族が、現在は現王弟殿下が着任されております。お金にも権力にも屈さないという適任者です。まあ、時代時代の最高責任者が皆公明正大であったかどうかはわかりまねますが。

そんな学園で、間もなく修了する18歳の今年。現在起こっている問題と言えば、婚約初期から続く第二王子の浮気疑惑でしょうか。平和なものです。


「平和か……」

「平和でしょう。国を揺るがすような問題ではありませんもの」

「だが、きみの婚約者だろう?」

「ああ、そうでしたわね。そのことに触れられる機会がないので忘れかけていましたわ」

「エリシャ……」


昼食を食べ終わり、いつものように生徒会室で書類と格闘していたら食後の差し入れを持ってきてくださったグイスト殿下が窓から外を見下ろして言います。目線の先には甥っ子殿下がいらっしゃる模様。


「人目を気にする様子もないのはどうかと思うがな」

「忍んでならいいというわけではありませんでしょう?」

「それはそうだが」


わたくしは差し入れのドーナッツを口に入れ咀嚼し、その後ストレートティーを口に含み甘さと苦みの波を堪能します。ほんとうに美味しいですわ。このモチモチとしたドーナッツを開発した方に賞賛を送りましょう。あて先はどちら?


「だいたい、彼女はシュトルポジウム侯が連れてきた……」

「お父様が連れてきた居候さん、ですわ」

「未だに謎のままか? では平民の、後妻ではなく……愛人の連れ子、になるのか?」

「そうですわね。パニラさんもピオミルさんも、我が家の籍には入っていませんので……そうなりますかしら? 愛人というには、会っている気配はまったくありませんけれど」

「……ギースは大丈夫なのか…………」

「大丈夫ではないでしょう。ポジウム侯爵令嬢であるエリシャ・エストルムと婚約しておきながらほかの女子生徒と人目も気にせず仲良くしているのですから。よかったですわ。王太子殿下が優秀な方で」

「……確かに。ギザークは優秀だからな」

「この国は安泰ですわね」

「その様子では、婚約破棄を狙ってわざと放置しているようだな」

「…………」


そう、わたくしは、ここジャービー国の第二王子であるギース・ジャビウス殿下との婚約を、お断りしたいと思っているのです。理由はたくさんあります。顔が好みじゃない、お勉強ができない、頭の回転が悪い、運動もだめ、剣技なんてもってのほか、顔が好きじゃない、胸元を見る目がキモい、仕草がキモい、声がよくない、顔がよくない、とにかく尊敬できない、ほかにも上げたらキリがないくらい、嫌いなところだらけです。特に顔。

そんな人と婚約していますのよ? 毎日が地獄ですわ。王太子であられるギザーク・ジャビウス殿下はとても尊敬できるお方です。王妃様の御子様で、早いうちから立太子が決まっていました。それもあってか、大した後ろ盾のない側妃様は、御子様であられるギース殿下の将来を憂いて我が家との婚約を陛下に切望なさったのです。我が家はそれなりに歴史の長い名家ですから。

王家から望まれた縁談ですが、最初はお断りしていたそうです。しかし、我が家にもいろいろあり、お父様もいろいろ言われ続けて根負けしたのか、13の時ついに、わたくしとギース殿下の婚約は結ばれました。


見目が良く、発育もよかったわたくしのことを気に入ったらしいギース殿下は、婚約して早々に、わたくしに触れようとなさいました。それ以降、もう、つまり婚約早々、わたくしはこの婚約をどう解消したらいいのかを考えに考えることになったのです。




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