【完結】出ていってください。ここは私の家です。〜浮気されたので婚約破棄してお婿さん探します!〜

井上 佳

文字の大きさ
上 下
31 / 34

28.「おめでとう!」

しおりを挟む


「おめでとう!」

「おめでとうございます!」

「おめでと~!!」

「いやほんとうにめでたい!」


シュテファニ・アイブリンガーと、ルトガー・バルシュミーデは今日、王都の中心街にある教会で結婚式を挙げた。
二人が教会から出てくると、集まっている貴族や民たち皆が祝いの言葉を口にした。

数時間前、王宮に報告が上がったボーブムの施設の件は、二人の耳にも届いた。
お祝いムードの中にあって大変遺憾だったが、起こってしまったものは仕方ないと対策を立てることになった。


「近衛を?」

「はい。使者殿は、国王が出席する式で何かあったらまずいからって近衛を寄越してくれたって言ってましたよ。」

「まあ。」


ザビが受け取った報告を伝えると、シュテファニもルドガーも驚いた。王を守るためでもあるだろうが、式の警備に近衛を使えとは。


「ではバルシュミーデの兵も借りよう。オーラフ、近衛の配置も含めて頼まれてくれるか。」

「へいへい」


すでに式場入りして家族も揃い、準備をしていたところに知らせが来たのでルトガーはオーラフに兵の指揮を任せた。


「配置についている我が家の皆さんにも、気を配るように伝えてちょうだい。」

「了解。」

「よろしくね、ザビ。」


シュテファニは、報告を受け取ったザビにそのまま外にも伝えるよう頼んだ。


「何事もなければいいのですが……。」

「あなたは私が守る。」

「ありがとうございます。でも――」


シュテファニは、式の参列者や、お祝いに集まってくれる民衆に何もなければいいけど……と心配していた。


そして、準備が出来て式が始まる直前に、教会の控え室にアイブリンガー家の兵が駆け込んできた。


「捕らえました! フーゴ・バーデンを近衛騎士団が捕らえました!!」


悩みの種はあっさり捕まった。



――そして冒頭に戻る。

皆を悩ませていたフーゴの強制施設脱走の知らせは呆気なく幕を閉じた。渦中の人はもう捕らえられたので、憂いなく式を終えたあと民衆の前に姿を現すシュテファニとルトガー。

たくさんの祝いの言葉が掛けられた。


「これからもよろしくお願いしますね。」

「ああ。こちらこそ。」


式のあと行われた王宮での披露パーティーでは、豪快に酒をあおる国王が主役二人に浴びせるほどのませるから、王妃に叱られていた。
浴びるほどのんだはずなのにケロッとしているシュテファニとルトガーを見て、周りはドン引きだったが。

この日、王都ではたくさんの食事や酒が無料で振る舞われ、皆が笑顔で、たくさんの笑い声に包まれた。













皆が出払っていて、ほかに誰もいないじめじめした警備隊詰所の地下牢で、その男は叫んでいた。


「おい! ふざけるな!! 俺は強くなったんだ!! こんな、簡単に……っ!! 捕まるわけないだろう!! 出せ! ここから、出せ!!!」


そう、フーゴはあれだけ何かやらかしそうな雰囲気でいたのに、今日近衛にあっさり捕まった。


それにはこんなカラクリがある。


平民と貴族の素質は大きく異なる。だから力をつけた侯爵令息のフーゴは、ボーブムの施設ではその辺のゴロツキには負けなかったのだ。
しかし、それはあくまで対平民であって、しかも一朝一夕で手に入ったような筋肉だけだ。如何に怨みをつのらせそれを糧にしようとも、日々鍛錬を積んでいる貴族だらけの近衛に適うわけがないのだ。
つまり、フーゴは所詮猿山の大将でしかなかったというわけだ。恐らくルトガーひとりでも取り押さえられただろう。


一生に一度の晴れの舞台を台無しにしようとしたフーゴを、ルトガーは許しはしないだろう。ここから出せと喚き散らすが、出た先には後悔しかないのではないだろうか。


「なんで……! なんでだ!! 俺は! あいつの、泣き喚いたツラを見るまで諦めないぞ!!!」


そんな宣言も、喜びに沸き上がる王都では、誰の耳にも届かないのであった。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した

基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。 その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。 王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。

生命(きみ)を手放す

基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。 平凡な容姿の伯爵令嬢。 妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。 なぜこれが王太子の婚約者なのか。 伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。 ※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。 にんにん。

婚約者様。現在社交界で広まっている噂について、大事なお話があります

柚木ゆず
恋愛
 婚約者様へ。  昨夜参加したリーベニア侯爵家主催の夜会で、私に関するとある噂が広まりつつあると知りました。  そちらについて、とても大事なお話がありますので――。これから伺いますね?

婚約破棄した令嬢の帰還を望む

基本二度寝
恋愛
王太子が発案したとされる事業は、始まる前から暗礁に乗り上げている。 実際の発案者は、王太子の元婚約者。 見た目の美しい令嬢と婚約したいがために、婚約を破棄したが、彼女がいなくなり有能と言われた王太子は、無能に転落した。 彼女のサポートなしではなにもできない男だった。 どうにか彼女を再び取り戻すため、王太子は妙案を思いつく。

【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?

ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。 卒業3か月前の事です。 卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。 もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。 カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。 でも大丈夫ですか? 婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。 ※ゆるゆる設定です ※軽い感じで読み流して下さい

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

妹を叩いた?事実ですがなにか?

基本二度寝
恋愛
王太子エリシオンにはクアンナという婚約者がいた。 冷たい瞳をした婚約者には愛らしい妹マゼンダがいる。 婚約者に向けるべき愛情をマゼンダに向けていた。 そんな愛らしいマゼンダが、物陰でひっそり泣いていた。 頬を押えて。 誰が!一体何が!? 口を閉ざしつづけたマゼンダが、打った相手をようやく口にして、エリシオンの怒りが頂点に達した。 あの女…! ※えろなし ※恋愛カテゴリーなのに恋愛させてないなと思って追加21/08/09

虐げられた令嬢は、耐える必要がなくなりました

天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私アニカは、妹と違い婚約者がいなかった。 妹レモノは侯爵令息との婚約が決まり、私を見下すようになる。 その後……私はレモノの嘘によって、家族から虐げられていた。 家族の命令で外に出ることとなり、私は公爵令息のジェイドと偶然出会う。 ジェイドは私を心配して、守るから耐える必要はないと言ってくれる。 耐える必要がなくなった私は、家族に反撃します。

処理中です...