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11.「まずは握ってみろ」※
しおりを挟む執務室の破壊された窓枠を見て、身がすくむような嫌悪感に陥るシュテファニ。
まだ正式に婚約破棄には至っていないが、昨日追い出したはずのフーゴだ。
なぜ彼が、という思いと、窓枠が壊れるほどの衝撃波を撃つという、冷静ならありえないほど乱暴な手段に出てまで自分の前に現れるとはいったいなぜなのか……という恐怖を感じた。
しかしシュテファニは、恐怖を抑え、なるべく毅然として見えるよう背筋を伸ばし姿勢を正してから、目線をフーゴに移して問いかける。
「何を、なさっているの?」
「いやあ兵たちがぜんっぜん屋敷に入れてくれなくて。何でなんだ? 当主が帰ってきたというのに……お前が、何か言ったのか?」
「っ……」
まだ自分が当主だなどと意味不明のことを言っているフーゴが、一歩足を前に出す。その顔を見てゾッとしたシュテファニは一歩下がった。
「仕方ないから以前見つけた柵が外れるところ、あそこから入ったんだ。あれは賊が侵入すると危ないからな、きちんと修理させておけよ?」
「なんの、用ですか。」
「何って? 俺はお前の婚約者だしここは俺の家だろう。ただ帰ってきただけさ。」
至極当然のように言うフーゴに、恐怖が募る。
昨日シュテファニは、フーゴがずっとウーラと関係を持っていたことを知ったので、出ていけ、婚約破棄だ、確かにそう言った。なのにまだここが自分の家だと言っているフーゴ。
ここまで話が通じていなかったのか? とまたしてもフーゴのことが理解できない状況だった。
「婚約は破棄すると、すでに神殿には書類を提出しました。」
「そうなのか? それは困るな……。まあ、いい。お前と性交すれば、俺は晴れて侯爵だ。」
「なっ……!」
「ああそうだ。よかったな、良いことだ。俺に抱かれてお前は幸せになるんだから、有難く思え。」
そう言うと、フーゴはシュテファニに掴み掛かった。肩に手を置き無理やり服を脱がせようと手を掛けると、いくつかボタンが飛んで床に転がった。
「ほらぁ、きれいなドレスが台無しじゃないか。大人しくしていろ。
……いや、これもいいな。いいかもしれんな。破けたドレスもそそるものだ。それでいこう。」
「なっ、なにを……!」
「何を? だから、性交するんだよこれから。性交。ああ、お前は初めてだからよく意味がわからないか? 性交、房事、男女の契りだよ。服を脱いで肌を合わせるんだ。俺の出っぱったモノを――」
「や……やめてっ!」
自分に触れそうになるフーゴの手に危機を感じたシュテファニは、フーゴに向かって前蹴りを繰り出した。二人の距離は一旦開いたが、フーゴは蹴りを受けた腹を擦りながらゆっくり近づいてくる。
「ぐっ……ぐぐぐぐぐっ……」
「何をっ」
「ぐふっ、こんなもの、痛くも痒くもない。本当はお前も望んでいるんだろう? 嫌がる振りなどしなくていいんだ。」
「振りって……!」
「ああそうか、そういう無理やりみたいなのが好きなのか? 初めてなのに、なかなかやるな。」
言動に統一性がなく、もはや話が通じない相手にさらに恐怖をつのらせていくシュテファニ。なんとか隙を突いて逃げ出そうと様子を窺うが、もう、することしか頭にないフーゴを見て、もはや隙があるのか無いのか異常だということしかわからない。
「あの時も、俺のモノに釘付けだったろう? コレを入れてもらえるウーラが、羨ましかった。ちがうか? 大丈夫だ。今日は気が済むまでお前に入れてやるからな。さあこっちへこい。ほら、握ってみろ。」
言いながら、服を脱ぎつつじりじりと、シュテファニに向かって詰め寄るフーゴ。完全に悦に入っているようで、興奮し瞳孔が開いている。加速して発言が気持ち悪くなっていく。
後ろは壁、行く手も阻まれ隙がない。無理やり通り抜けようとしても捕まるのがオチだ。もし肉体関係を持ってしまったら、結婚せざるを得ない状況に陥ってしまう。何とか破棄できても、その後の相手が見つからないだろう。
「ほらほらほら、今からコレが、お前を啼かせるんだよく見ておけ。ああ大丈夫。痛くないように、たくさんたくさん舐めてやろうレロレロレロレロレロ」
超キモチワルイ!
どうしよう、あと少しで捕まってしまう……!
シュテファニ、絶体絶命の大ピンチ!!
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