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王都編下

第91話 仮面の数は合計3枚

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 山積みのチップ(ドン)
 ドン引きのライアー(ドン)
 ドヤ顔の私 (ドン)

「勝利」
「お前ほんっっっっとえぐいわ」


 ポーカーは得意だって言ったじゃん。


 多額のチップを賭けながらハイカードで全員フォールドさせた瞬間は快感でしたよね。スレッスレの勝負するの好きみたい。
 私は細々としたチップはあるけれど、最高額チップ(レートは1枚で金貨10枚分)を100枚。つまりはまぁ、金貨1000枚分は手に入れたという事だ。

 まともに金を稼ぐのが馬鹿らしく思えてくるよ全く。

「俺の見てた範囲だけど、お前フォールドしなかったよな」
「ギリギリまで勝負ぞしたきタイプです」

 フォールドというのはこれ以上チップを消費しないように勝負を降りるということ。
 だって、つまんないじゃん。

「可能ですたらもう少し大きい金額ぞ賭けたいですけど……」

 手持ちのチップを全て投じたら他の客はフォールドしやすいし。
 これはもう純粋に私の好みとしか言えないんだけど、一か八かの大勝負、好き。
 このまま大きな金額を賭け続けたらもっと大きい裏カジノに案内されるだろうか。
 ディーラー、引き攣ってたし。

 ごめんね、ワンペア程度で勝負に出れて。フルハウスの時はちゃんと怖々賭けるからさ!

「ま、こっちもぼろ儲けだがな」
「何故ルーレットでそこまで稼ぐが可能です?????」

 スピニングアップした瞬間に賭けるから多分ディーラーの投げる手の動き見て賭けてるよね。

「まぁ多分何も考えずに置いても勝てるだろうが」
「何故???」
「言ったろ、俺は運が良いって。俺の人生で最も不運だと思った瞬間は随時更新されているがお前と関わってから爆速で更新されているり。つまり総じてお前のせい」

 否定出来ない。
 私のせいではないけど、私の運が悪いから一緒に巻き込まれている感はある。

「私の人生最大の幸運はきっとライアーと会うしたことだと思うです」

 そこそこ性格も合致して利用出来る人間に、所持金ゼロのタイミングで出会えたのは私の中の運を使い切ったとすら思う。


「…………運なさすぎてお前可哀想だな」
「同情ぞするな」
「俺程度で最大の幸運とか、お前本当可哀想」

 2回言うな。

「……んで、収穫はあったのか?」
「──もちろん」

 机の上で顔を付き合わせたまま、声を小さくして返す。

「このカジノ、下があるです」
「……はぁー。土地の高低差を使った地下か」

 貴族街は高い位置に作られてあるからね、そうじゃないかとは睨んだけど。

「下がなにか分かりませぬが、VIP室にぞ連れていくされた貴族は決まるして──」

 私は机を見た。山積みになったチップを。

「100枚使うしてます」

 わざと外れるところに。100枚賭けていた。
 恐らくオーナーとそれに準じる様な人間達だろう、彼らは100枚スった人にこう言った。『手痛い損失でしたね。ご安心ください、貴方さえよければもっと賭けが大きくなるゲームにご案内致しますよ』と。

 つまり、裏カジノは参加費に100枚最高額チップを払わなければならない、ということ。

「……あぁそれと」

 多分条件がもう一つある。
 彼らには連れが居たんだよね。

 このカジノが第2王子誘拐に絡んでいるのか分からないが、探るなりした方が良さそう。
 色々と大きな情報がありそうだから。

「──奴隷ぞいますた」
「奴隷?」
「はい、多分。従者では無きでしょう」

 いーち、にー、さーん。
 チップをご機嫌に数えながらライアーに情報を渡す。

 すると、1人の男が近付いた。

「おやぁ! どなたかと思えば今回のトーナメントの準優勝者じゃないですか!」

 ニコニコと嬉しそうに握手を無理矢理してくる。

「いやー、初めまして。私はティンバー男爵と申します。トーナメント見ましたよ、いやー素晴らしかった!」
「ど、どうも」

 貴族の使者ならまだしも貴族を雑に扱えないから苦笑いを浮かべたまま手を振り回される。
 んぇ、手のひらに金貨入れられたな。賄賂か。

「リィンさんはお若いというのに素晴らしい魔法の腕だ! どうだろうか、よければ我が家に招待しよう!」

 わざとらしく友好的な様子を見せながらも瞳が語っている。
 政治利用する気満々。
 家に魔法職を置いておきたいのか、それとも養子にするのがステータスなのか。

 うーん、目的が分からないけど、ただ普通に不愉快だよね。

「お話ぞ、ありがたきですが」
「おやぁ! 引き受けてくれるのですかそりゃまた嬉しい!」
「ピギャ」

 そうじゃねぇ! 返事を分かっておきながら無理矢理決行する気だな!

「もちろんライアーさんも我が家の警備として雇いたいと思って」

「ああーーーーーー!! おやめくださいおやめ下さいーーー!!」
「なっ、な、んだ君は」
「なんだ君はってか! そうです私が彼女のナイトです!」
「あ、認めるした事実は一切無きです」

 自称ナイトが駆けつけた。
 私はティンバー男爵に向けてブンブンと手を振る。違います。一切そんなことは無いです。
 貴族の保護は嬉しいけどクロロスの家はなんか嫌な予感するから絶対嫌です。家名すら聞きたくない。

「失礼男爵、この子は既に「グリーン子爵」家の預りで……、え、今なんて言いました?」

 クロロスの言おうとしたセリフに被せた名前をもう一度言った。

「グリーン子爵」

 クロロス、猫かぶりやめてから感情表現が自然になったな。
 見るからに動揺しています、って顔している。

「え、なんで?」
「袖振り回し引きちぎるも盗賊の仲って言うでは無きですか」
「言いません」
「言わないだろ」
「いや、言いませんよね」

 総否定食らった。

「私ぞ倒す希望なればグリーン子爵を倒すして貰うぞ! ふふふ、奴は四天王最弱」
「それ子爵倒されてるセリフだが」

 昨日見つけた『TS大賢者の幼女な人生(ファンタジー小説)』って作品の冒頭が頭に残ってて……。

 私は幼女とギリギリ言える年齢だけど感覚的にはもう少女だからなぁ……! 幼女、なんてイージーモード……!
 私の不思議語も幼女の頃ならもっと受け入れられてた……!

「えっと、故に

 ワタワタと困りながら返事の言葉を探す。

 今更だけど、私は学園に通い始めたら否応がなしに王都での生活となる。
 深窓の令嬢と冒険者。この2人の使い分けをしなければ、まずいというわけ。冒険者の私は別に変装とかしてないしね……。クロロスにリアスティーンとして出会ってもリィンだとバレないように。


 だからリィンは、口に手を当てて首を傾げながら。

「ごめんぞ?」

 鼻で笑い謝った。


「(あっ、今めちゃくちゃ綺麗に喧嘩売ったな)」
「(貴族にも積極的に喧嘩売るその度胸is何)」

 なんか男共が失礼なこと思っている気がした。

 深窓の令嬢の私についてあるイメージはきっと病弱で妖精みたいな繊細な存在だろうから。
 冒険者の私は図太くズカズカと可愛さを分かっているプライド高い厚かましい存在で行く。

 プライド高いのは元からだけど。

「ぐ、グリーン子爵の保護があるのでしたら安心で、すね……」

 動揺しながらも安心したポーズを取ったまま貴族が笑った。苦笑い。引き攣り笑い。その笑顔に付けられる名前はこんなところだろう。

 これでキレない辺り結構良さげの男爵かもしれない。リアスティーンの時は気にしておこう。

「そういえばエリィ」
「寝ました」

 …………。

 そろそろ切り上げるかとは思っていたし、まぁ夜中のカジノはバブちゃんにはキツいよね。


 そういえばカジノではペイン達の姿を見なかったな、なんて思っていた。
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