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第1章 異世界転生と魔の森
1-8 狼煙をあげろ!
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今日はついに、聖域外遠征の記念すべき第1回目である。
「セレーネ大将。せっかくなので一言お願いするっす」
「そうだな、一声かけるか」
今、俺の目の前には、聖域内に住むすべての契約精霊たちがいる。みんな、主たる俺の言葉を待っているようだ。
演説の経験なんで前世から一度もなく、自信もまったくないので、言いたいことだけでも言おう。
「みんな。まずは今日という日に集まってくれてありがとう。改めて、こんなにも俺には仲間がいるのか、自分がどれだけ幸せ者なのかを痛感するよ」
「俺が地球の日本で亡くなって、この世界に転生してから約5年が経った。
初めは右も左もわからなかった。異世界転生なんて非現実的だし、目の前にいたルクスなんてただの変質者だったからね。
あの時は真っ先に警察に110番するところだったよ」
精霊たちから笑い声が聞こえる。
「その後はルクスと一緒に、生きるための術を身につけ続けた。ゴーレムを作りまくって戦闘をしたり、新しい魔法を開発したり。
それらは全て、いつか外の世界へ飛び出すための準備だった。
何度か自分を追い込みすぎて死にかけたこともあったけど、俺にとっては毎日が新鮮でとても楽しかった」
「そして俺たちのところに、仲間達も集ってくれた。
ルクスと二人っきりの時もよかったが、みんなと過ごす時間も本当に良い。みんなもここでの生活を楽しんでくれているようで、俺は主人としてとても嬉しく思う」
始めは漆葉が仲間になった。その後は一気に増えたが、全員の名前は俺たちがつけたからもちろん覚えているし、 全員とは顔を合わせて、こまめに直接会話するようにしている。
精霊との契約という表面だけの関係にしたくはなかったから。俺という主を選んだ仲間達を後悔させたくなかったから。
「そして今日、ようやく俺たちは外の世界へと足を踏み入れる!今まで、そしてこれからも辛いことはたくさんあるだろう。でも俺たちなら絶対にやり遂げられる!きっとこの森を踏破することができる!今日はその第一歩を踏み出す時だ!」
「さあ!外へと飛び出そう!そして俺と一緒に、この世界の景色を見に行こう!!」
「「「「おおおおおおおお!!!!」」」」
ようやく大きく動き出すんだ。セレーネ・ユグドラシルの物語が。
「ふむ。俺はこういうの向いてないってことがわかったわ」
『すごく単純でわかりやすかったよ!』
「馬鹿でもわかるってことね。褒められている気がまったくしないっ」
『ともかく、ようやく第一歩ってとこだね』
「ああ。チュートリアルが長すぎたよ。
普通ここまで、キャラメイク等やって5分だぞ。
単位を間違えすぎでしょうが」
『大丈夫!その代わりレベルはめっちゃ上がっているから!
ラスボスどころか裏もいけるから!」
まあ…、この世界は本当に命が懸かってるから、オーバーキルくらいがちょうどいいと思ってもいいかな…。
「あっ…、ちょっと鼻血がっっ!」
「どうしました~漆葉さん~?」
「申し訳ないです。ご主人様があまりにも格好良すぎて……!」
「なるほど~これは重症ですね~」
「今日はいつもよりも念入りに、ご主人様と一緒に寝なければ…!」
「念入りに一緒に寝るってどのような現象なんでしょうかね~?」
―――そんな中、漆葉はパナケアから治療を受けていた。
________________________________________
~Side エルメス~
ようやく始まったっすね、聖域外遠征。
メンバーは隊長の俺と副隊長マッドカエデを含んだエルメス隊全員と、サポート役としてシャルロット隊からパナケア。そして総括としてセレーネ大将とルクス様、漆葉の姐さんって感じっす。
いや~メンツは結構豪華っすね~。というか大将単騎でどうにでもなるとは思うんすけど。あの人は常に最悪の場合を想定して、保険をかけまくる主義っすからね。
まあ、俺たちの安全を第一に考えてくれるのはありがたいっす。
「なによそ見してるんですか、隊長」
「いやいや、ようやく始まったと思っただけっすよ」
「まあ、そうですね。セレーネ大将のもとについてから、ひたすら訓練でしたからね……」
そう。訓練が大変なんす。セレーネ式ブートキャンプは俺たちを殺しにくるっすから。おかげ様で結構強くなったとは思うんすけどね。
セレーネ大将とルクス様の鉄壁の護りと高速魔法、大規模殲滅までなんでもござれの戦術は対処しきれないっす。
――もし今後、固有能力でも覚醒したのなら本当に手が付けられないっすね。まあ十中八九覚醒すると思うっすけど。
「そういえば、うちの隊に人里を通ったことがあるってやついたっすよね」
「あ、それ自分です~!どうかしましたか?」
「いや、俺たちはどの程度強いのかなって疑問に思ったんすよ。セレーネ大将がもし弱い方に入るのなら、俺もやばいなと思っただけっす」
「私は戦争っぽいのを実際に見たんですよ。どこの国が争っているとかはまったくわからなかったですが。なんか片方は人間だけで、もう片方は獣人みたいでした」
うわ~。ラノベの異世界物みたいに人種間の差別とかあるかもって大将は言ってたっすけど本当にありそうっすね。
「その時に、全線で敵を倒しまくってる人や、大規模魔法を撃ったりしている人は見ましたよ。
ただ直接比較できるわけじゃないんで推測ですけど、セレーネ大将なら片手間で対処できると思います。
何十人もの魔術師が協力して撃っていた魔法なんて、大将が遊びで撃っている魔法くらいだったと記憶してますね」
やっぱりあの人おかしいっすよね。膨大で濃密な魔力と、地球の知識を組み合わせた多彩な魔法の数々。
大規模から単発高速魔法まで幅広い上に、ルクス様の魔法分析による【術式破壊】による妨害と、分厚い障壁による完全防御。あれはマジで抜けないっす。
本人は、「俺はまだまだだ」なんて言ってるんすけどね。
「まあ、大将は絶対に自分の力を過信しないっすからね。精霊部隊のトップって立場からすれば部下思いの良き上司っす」
「本当ですね。遠くからでもあの魔力を見つけてこれて本当に良かったです」
ここにいる精霊達はみな、聖域にいた大将の魔力に導かれてきた奴らっす。
大将と契約させてもらって、ヒト型となってみんなと生活してある程度経つっすけど、後悔は今までもこれからも絶対に無いっすね。
もし、大将に会わずに、今もちっちゃい玉の状態でうろうろしていたら…、なんて想像するだけで怖いっす。
「よし!総員最後のチェックに入るっす!今回は一応セレーネ大将も来るっすけど、絶対に俺たちだけで対処していくっすよ!エルメス隊の意地を見せるっす!!」
「「「「了解!!」」」」
さて、外の世界には何が待ってるっすかね?
「セレーネ大将。せっかくなので一言お願いするっす」
「そうだな、一声かけるか」
今、俺の目の前には、聖域内に住むすべての契約精霊たちがいる。みんな、主たる俺の言葉を待っているようだ。
演説の経験なんで前世から一度もなく、自信もまったくないので、言いたいことだけでも言おう。
「みんな。まずは今日という日に集まってくれてありがとう。改めて、こんなにも俺には仲間がいるのか、自分がどれだけ幸せ者なのかを痛感するよ」
「俺が地球の日本で亡くなって、この世界に転生してから約5年が経った。
初めは右も左もわからなかった。異世界転生なんて非現実的だし、目の前にいたルクスなんてただの変質者だったからね。
あの時は真っ先に警察に110番するところだったよ」
精霊たちから笑い声が聞こえる。
「その後はルクスと一緒に、生きるための術を身につけ続けた。ゴーレムを作りまくって戦闘をしたり、新しい魔法を開発したり。
それらは全て、いつか外の世界へ飛び出すための準備だった。
何度か自分を追い込みすぎて死にかけたこともあったけど、俺にとっては毎日が新鮮でとても楽しかった」
「そして俺たちのところに、仲間達も集ってくれた。
ルクスと二人っきりの時もよかったが、みんなと過ごす時間も本当に良い。みんなもここでの生活を楽しんでくれているようで、俺は主人としてとても嬉しく思う」
始めは漆葉が仲間になった。その後は一気に増えたが、全員の名前は俺たちがつけたからもちろん覚えているし、 全員とは顔を合わせて、こまめに直接会話するようにしている。
精霊との契約という表面だけの関係にしたくはなかったから。俺という主を選んだ仲間達を後悔させたくなかったから。
「そして今日、ようやく俺たちは外の世界へと足を踏み入れる!今まで、そしてこれからも辛いことはたくさんあるだろう。でも俺たちなら絶対にやり遂げられる!きっとこの森を踏破することができる!今日はその第一歩を踏み出す時だ!」
「さあ!外へと飛び出そう!そして俺と一緒に、この世界の景色を見に行こう!!」
「「「「おおおおおおおお!!!!」」」」
ようやく大きく動き出すんだ。セレーネ・ユグドラシルの物語が。
「ふむ。俺はこういうの向いてないってことがわかったわ」
『すごく単純でわかりやすかったよ!』
「馬鹿でもわかるってことね。褒められている気がまったくしないっ」
『ともかく、ようやく第一歩ってとこだね』
「ああ。チュートリアルが長すぎたよ。
普通ここまで、キャラメイク等やって5分だぞ。
単位を間違えすぎでしょうが」
『大丈夫!その代わりレベルはめっちゃ上がっているから!
ラスボスどころか裏もいけるから!」
まあ…、この世界は本当に命が懸かってるから、オーバーキルくらいがちょうどいいと思ってもいいかな…。
「あっ…、ちょっと鼻血がっっ!」
「どうしました~漆葉さん~?」
「申し訳ないです。ご主人様があまりにも格好良すぎて……!」
「なるほど~これは重症ですね~」
「今日はいつもよりも念入りに、ご主人様と一緒に寝なければ…!」
「念入りに一緒に寝るってどのような現象なんでしょうかね~?」
―――そんな中、漆葉はパナケアから治療を受けていた。
________________________________________
~Side エルメス~
ようやく始まったっすね、聖域外遠征。
メンバーは隊長の俺と副隊長マッドカエデを含んだエルメス隊全員と、サポート役としてシャルロット隊からパナケア。そして総括としてセレーネ大将とルクス様、漆葉の姐さんって感じっす。
いや~メンツは結構豪華っすね~。というか大将単騎でどうにでもなるとは思うんすけど。あの人は常に最悪の場合を想定して、保険をかけまくる主義っすからね。
まあ、俺たちの安全を第一に考えてくれるのはありがたいっす。
「なによそ見してるんですか、隊長」
「いやいや、ようやく始まったと思っただけっすよ」
「まあ、そうですね。セレーネ大将のもとについてから、ひたすら訓練でしたからね……」
そう。訓練が大変なんす。セレーネ式ブートキャンプは俺たちを殺しにくるっすから。おかげ様で結構強くなったとは思うんすけどね。
セレーネ大将とルクス様の鉄壁の護りと高速魔法、大規模殲滅までなんでもござれの戦術は対処しきれないっす。
――もし今後、固有能力でも覚醒したのなら本当に手が付けられないっすね。まあ十中八九覚醒すると思うっすけど。
「そういえば、うちの隊に人里を通ったことがあるってやついたっすよね」
「あ、それ自分です~!どうかしましたか?」
「いや、俺たちはどの程度強いのかなって疑問に思ったんすよ。セレーネ大将がもし弱い方に入るのなら、俺もやばいなと思っただけっす」
「私は戦争っぽいのを実際に見たんですよ。どこの国が争っているとかはまったくわからなかったですが。なんか片方は人間だけで、もう片方は獣人みたいでした」
うわ~。ラノベの異世界物みたいに人種間の差別とかあるかもって大将は言ってたっすけど本当にありそうっすね。
「その時に、全線で敵を倒しまくってる人や、大規模魔法を撃ったりしている人は見ましたよ。
ただ直接比較できるわけじゃないんで推測ですけど、セレーネ大将なら片手間で対処できると思います。
何十人もの魔術師が協力して撃っていた魔法なんて、大将が遊びで撃っている魔法くらいだったと記憶してますね」
やっぱりあの人おかしいっすよね。膨大で濃密な魔力と、地球の知識を組み合わせた多彩な魔法の数々。
大規模から単発高速魔法まで幅広い上に、ルクス様の魔法分析による【術式破壊】による妨害と、分厚い障壁による完全防御。あれはマジで抜けないっす。
本人は、「俺はまだまだだ」なんて言ってるんすけどね。
「まあ、大将は絶対に自分の力を過信しないっすからね。精霊部隊のトップって立場からすれば部下思いの良き上司っす」
「本当ですね。遠くからでもあの魔力を見つけてこれて本当に良かったです」
ここにいる精霊達はみな、聖域にいた大将の魔力に導かれてきた奴らっす。
大将と契約させてもらって、ヒト型となってみんなと生活してある程度経つっすけど、後悔は今までもこれからも絶対に無いっすね。
もし、大将に会わずに、今もちっちゃい玉の状態でうろうろしていたら…、なんて想像するだけで怖いっす。
「よし!総員最後のチェックに入るっす!今回は一応セレーネ大将も来るっすけど、絶対に俺たちだけで対処していくっすよ!エルメス隊の意地を見せるっす!!」
「「「「了解!!」」」」
さて、外の世界には何が待ってるっすかね?
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