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1章 害悪貴族、ウロボロス教団と共に
4話 天の使者とウロボロス教団
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俺の頭のなかは今、アスカの発言を理解できず、いや理解したくないのか真っ白になっていた。さらにはアスカが見知らぬ男性と唇を重ね、お互いの愛を誓い合った際に鳴らされる教会の重く鈍いウェディングベルの音が脳裏に響き渡っている。
その場に茫然と立ち尽くす俺を見てアスカは笑いかけながら、
「ふふふっ! 冗談ですよ」
こいつ俺をからかってるな。なんとなく話し方でわかる。まあ、冗談ならよかったのだが、念のため再度聞いてみるか。
「本当か? 冗談なのか?」
「ええ冗談です。私はあなたから離れようとは思っていません。想い人がいるのは事実ですけど」
「今、最後なんて言った?」
「離れようとは思っていませんって言いました。それと誰ですか? 用があるなら入りなさい」
俺はなんのことかと疑問に思ったが自室のドアがゆっくりと開き始める。そして扉の隙間から顔を出したのは可愛らしい桃色のドレスを着用した我が義妹エリスの姿だった。
「ああ、すみませんエリス様でしたか。どうかなさいましたか? 私は今多忙ですので他のメイドにでもお申し付けください」
はぁ、なんでアスカはエリスに冷たくするんだよ。仕方ないな。ここは兄である俺の出番か!
「どうしたんだい? エリス」
「え、ええと、そのね」
「なんですか? 用がないなら――」
「お庭に怪しい人がいるの! なんか屋敷に向かって手を振ってるの」
「行くぞアスカ」
「はい、クズト様は私の後ろに」
俺はエリスの頭を撫でた後、アスカと二人で自室を飛び出した。俺とアスカが屋敷中の廊下を疾走している姿を見た仕事中のメイドたちは慌てた様子であたふたしている姿が目立つ。
それにしても庭でメイドでもない何者かがいるようだが、一体何者なんだ? 敷地内は警備が完璧なはずだ。それに今は以前の手薄な警備とは違ってそれなりの練度がある者たちが警備に就いてくれているはずだ。それなのにどうして……? どうやって侵入した?
そして屋敷の出入り口の扉を開けると、庭にはシスターのような格好した金髪の女性にその女性に祈りを捧げているのか? はわからないが両膝を地に着け、手には小動物の頭蓋骨にも見える首飾りを持っている。
何かの宗教団体なのだろうか? 転生する前の世界でもさまざまな宗教が存在していたが、まさかこの世界でもそういった宗教が存在しているのか?
まあ、どちらにせよ。ここでの宗教活動はお断りしなければ、後々厄介ごとに巻き込まれても困るしな。どうお断りするべきか……うーん、「神なんて存在しないから解散」ダメだ、却下だ。「神は存在します」と信者も含めて怒らせてしまう危険性がある。
なら「今すぐ俺の敷地内から立ち去れ」っていうのはどうだ? いやいや、これも却下だ。この世界のことまだあまり詳しくはないが、このローズウェル王国が宗教で発展してきた国という設定だったらどうする。宗教すらも受け入れられない器の小さい貴族としてこれから嫌がらせを受ける可能性すらある。
ああ! 思いつかん! 宗教関係は敵に回すと色々と怖いからな。多勢に無勢の言葉通りというか……どうするべきなんだ? ここは話し合ってみるしかないか……。
「アスカ俺は今から彼女と話してくる。絶対に手を出すなよ、絶対だ。後々が怖いからな」
「承知しました。気をつけてください。あの女の周りにいる者もなかなかの手練れです。もちろんあの女も……」
俺は恐る恐るシスターのような格好の女性に声を掛けた。
「あ、あのここは俺の敷地内――」
「あ、ああ、あなた様は天からの使者様! わたくしの名はセリカと申します。皆さん! 集合です! 我々の信仰する死と再生の神〝ウロボロス神〟の使者様がいらっしゃいましたよ! 早速ですが使者様、我らウロボロス教団にどうかご命令を!」
「はぁ? 一体何を言って?」
そのセリカと名乗る女性とその後ろに控える信仰者と思わしき人たちが俺の側まで駆け寄り足元に跪いた。自室からはあまり見えなかったが、多くの人たちが敷地内に忍び込んでいたようだ。
暑っ苦しい男連中や華やかな女性たち、そして可愛らしい子供の姿まである。
ウロボロスって言ってたっけ。名前ぐらいは聞いたことがある。たしかヨルムンガンドの原型とも言われていたような……。ゲームやアニメにもよく登場する名前だからな。ということは、このウロボロス教団は蛇を祀っているのか? それとも竜になるのか?
「使者様、どうかご命令を!」
「いやいやいや、なんの話かもわからないのに何を命令しろって言うんだよ」
「わたくしはあの日、星々が照らす夜空を見つめていました……」
「えっと、なんの話ですか?」
俺の言葉に耳を傾けることなくこの金髪巨乳のセリカは淡々と話し続ける。
「わたくしはその時ふと手を合わせたのです。自分でもわかりませんでした。なぜ夜空に向かって手を合わせているのかすらも……ですがその瞬間ある場所に光の柱が現れ天からお告げが聞こえてきたのです。『信仰者よ。我がウロボロスの使者と共にこの穢れた世界を変えて見せよ』と。わたくしはそれから故郷の村を捨て、教会本部で聖女の名を賜り、使者様を探す旅に出たのです。そこから各国、村々を回りウロボロス神の布教活動を行ってきました。そして信仰者も徐々に増え、その方たちと共に今ここに辿り着いたのです」
「うえええぇぇええん! なんていい話なんだ。ぐすっ」
「さすがはセリカ様だ。ぐすっ」
老若男女関係なく子供含めてセリカの話で泣き出してしまった。どこにそんな泣く要素があったのかはわからない。全然わからない。まったくもってわからない。そもそも理解しようとも思わない。俺が言えるのはただ一つ。
「どうか早く帰ってください。お願いします」
その場に茫然と立ち尽くす俺を見てアスカは笑いかけながら、
「ふふふっ! 冗談ですよ」
こいつ俺をからかってるな。なんとなく話し方でわかる。まあ、冗談ならよかったのだが、念のため再度聞いてみるか。
「本当か? 冗談なのか?」
「ええ冗談です。私はあなたから離れようとは思っていません。想い人がいるのは事実ですけど」
「今、最後なんて言った?」
「離れようとは思っていませんって言いました。それと誰ですか? 用があるなら入りなさい」
俺はなんのことかと疑問に思ったが自室のドアがゆっくりと開き始める。そして扉の隙間から顔を出したのは可愛らしい桃色のドレスを着用した我が義妹エリスの姿だった。
「ああ、すみませんエリス様でしたか。どうかなさいましたか? 私は今多忙ですので他のメイドにでもお申し付けください」
はぁ、なんでアスカはエリスに冷たくするんだよ。仕方ないな。ここは兄である俺の出番か!
「どうしたんだい? エリス」
「え、ええと、そのね」
「なんですか? 用がないなら――」
「お庭に怪しい人がいるの! なんか屋敷に向かって手を振ってるの」
「行くぞアスカ」
「はい、クズト様は私の後ろに」
俺はエリスの頭を撫でた後、アスカと二人で自室を飛び出した。俺とアスカが屋敷中の廊下を疾走している姿を見た仕事中のメイドたちは慌てた様子であたふたしている姿が目立つ。
それにしても庭でメイドでもない何者かがいるようだが、一体何者なんだ? 敷地内は警備が完璧なはずだ。それに今は以前の手薄な警備とは違ってそれなりの練度がある者たちが警備に就いてくれているはずだ。それなのにどうして……? どうやって侵入した?
そして屋敷の出入り口の扉を開けると、庭にはシスターのような格好した金髪の女性にその女性に祈りを捧げているのか? はわからないが両膝を地に着け、手には小動物の頭蓋骨にも見える首飾りを持っている。
何かの宗教団体なのだろうか? 転生する前の世界でもさまざまな宗教が存在していたが、まさかこの世界でもそういった宗教が存在しているのか?
まあ、どちらにせよ。ここでの宗教活動はお断りしなければ、後々厄介ごとに巻き込まれても困るしな。どうお断りするべきか……うーん、「神なんて存在しないから解散」ダメだ、却下だ。「神は存在します」と信者も含めて怒らせてしまう危険性がある。
なら「今すぐ俺の敷地内から立ち去れ」っていうのはどうだ? いやいや、これも却下だ。この世界のことまだあまり詳しくはないが、このローズウェル王国が宗教で発展してきた国という設定だったらどうする。宗教すらも受け入れられない器の小さい貴族としてこれから嫌がらせを受ける可能性すらある。
ああ! 思いつかん! 宗教関係は敵に回すと色々と怖いからな。多勢に無勢の言葉通りというか……どうするべきなんだ? ここは話し合ってみるしかないか……。
「アスカ俺は今から彼女と話してくる。絶対に手を出すなよ、絶対だ。後々が怖いからな」
「承知しました。気をつけてください。あの女の周りにいる者もなかなかの手練れです。もちろんあの女も……」
俺は恐る恐るシスターのような格好の女性に声を掛けた。
「あ、あのここは俺の敷地内――」
「あ、ああ、あなた様は天からの使者様! わたくしの名はセリカと申します。皆さん! 集合です! 我々の信仰する死と再生の神〝ウロボロス神〟の使者様がいらっしゃいましたよ! 早速ですが使者様、我らウロボロス教団にどうかご命令を!」
「はぁ? 一体何を言って?」
そのセリカと名乗る女性とその後ろに控える信仰者と思わしき人たちが俺の側まで駆け寄り足元に跪いた。自室からはあまり見えなかったが、多くの人たちが敷地内に忍び込んでいたようだ。
暑っ苦しい男連中や華やかな女性たち、そして可愛らしい子供の姿まである。
ウロボロスって言ってたっけ。名前ぐらいは聞いたことがある。たしかヨルムンガンドの原型とも言われていたような……。ゲームやアニメにもよく登場する名前だからな。ということは、このウロボロス教団は蛇を祀っているのか? それとも竜になるのか?
「使者様、どうかご命令を!」
「いやいやいや、なんの話かもわからないのに何を命令しろって言うんだよ」
「わたくしはあの日、星々が照らす夜空を見つめていました……」
「えっと、なんの話ですか?」
俺の言葉に耳を傾けることなくこの金髪巨乳のセリカは淡々と話し続ける。
「わたくしはその時ふと手を合わせたのです。自分でもわかりませんでした。なぜ夜空に向かって手を合わせているのかすらも……ですがその瞬間ある場所に光の柱が現れ天からお告げが聞こえてきたのです。『信仰者よ。我がウロボロスの使者と共にこの穢れた世界を変えて見せよ』と。わたくしはそれから故郷の村を捨て、教会本部で聖女の名を賜り、使者様を探す旅に出たのです。そこから各国、村々を回りウロボロス神の布教活動を行ってきました。そして信仰者も徐々に増え、その方たちと共に今ここに辿り着いたのです」
「うえええぇぇええん! なんていい話なんだ。ぐすっ」
「さすがはセリカ様だ。ぐすっ」
老若男女関係なく子供含めてセリカの話で泣き出してしまった。どこにそんな泣く要素があったのかはわからない。全然わからない。まったくもってわからない。そもそも理解しようとも思わない。俺が言えるのはただ一つ。
「どうか早く帰ってください。お願いします」
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