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断章 母なる想いは国か、それとも娘か
33話 邪魔者と王との謁見(ネム編)
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本当にアイツは空気が読めないのね。
なぜ、こんな奴とリーゼが仲良くしているのか? と疑問が次々と心の内から湧き出てくるようだった。
そもそも二人の出会いも知らない、詳しい関係性も知らない、リーゼがそそのかされている可能性すらあり得る。ここでわたくしが先に潰すのもアリかもしれない。
「何だ、ユーシス・メルトリー」
「はっ! リンス様とネムの戦闘をじっくりと拝見した上で言わせていただきます。最後双方倒れることなくリンス様がネムを合格にされたと思うのですが、何か深い訳でもあるのでしょうか?」
そんなユーシスの質問にリンスとラピスは堂々としながら、
「ああ、見ていた者にはあまり実感が湧かないだろう。しかしだ、あの衝撃波を受け止めた者は今までわたしが出会った中で一人しかいない。それがわたしが忠誠を誓うユリア陛下だ。まあ、わたしも驚いたよ。あの衝撃波を受け止めるならまだしも、斬り裂く者が現れるとは」
「ユーシス・メルトリー、この子の衝撃波受けてみる?」
「いえ、俺はそんなつもりで言った訳では……」
「そう、度胸のないやつ」
「な、なな、何を! ラピス様今度胸がないと仰りましたか? なら受けて立ちましょう」
しかし結果は予想通りと言うべきか、それ以上に酷い結果だった。
リンスの衝撃波を直に受けたユーシスは自身の盾でも防ぎ切れず、ショボンと落ち込んでいるようだった。
身体全体傷だらけで、おまけに手首の骨が折れるといった重症。こんな貧弱にも関わらず、度胸だけは据わっているようだった。
もっと鍛え上げたらリーゼの守護者としては申し分ないほどまでには成長するだろう、そんなわたくしの予感が当たったら良いが……さて、リーゼも喜ぶだろうからユーシスをわたくしの相棒として迎え入れるのも良いかもしれないわね。いざとなったらユーシスはリーゼを血眼になってでも守ってくれるだろうし、訓練生の他の者よりかは幾分かは信用できる。
二人が仲良くしているのだけは気に入らないが……。
――――――――
試験を終了し、無事娘の従者としての資格は手にした。しかしながら今宵は現国王であるルーデルとセレスとの謁見。
複雑な気分だ。
今まで自分が座っていた玉座にルーデルが腰掛け、その隣にはわたくしを陥れたセレスが立っているのだから。
立場が逆になるだけで、こうも気持ちが違うとは……。
いや、そんな雑念忘れてしまえ。わたくしはネム・エドワーズとして生まれ変わった。
もう娘の役にも立たないユリアはこの世に存在しない。
ここからまた新しい二人の思い出を築いて行けば良い。
だから心を落ち着かせるのよ、わたくし。
「あなたがネム・エドワーズなの?」
そうわたくしの名を聞いてきたのは、紛れもないあの性悪女のセレスだった。
「はい、そうですが……何か問題でもございましょうか?」
わたくしがそう問うとセレスは、
「いいえ、陛下の御前であるにも関わらずその兜を外さないとは、とんだ礼儀も知らない騎士が来たのだと感心しているのよ」
「失礼ながらわたくしはこの兜を着けたくて着けている訳ではありません。どうしても外せない理由があってのことです」
「なら仕方ないわね、これからあなたには出来損ないの姫、いえ失礼口が悪くて。リーゼ姫の従者としてこれからの人生を全うしていただくわ。何か異論は?」
「いえ、特には……」
先程から話しているのはセレスばかり。
ルーデルは所詮権力だけを手にしたお飾りに過ぎないということかしら。
はぁ、すでにこの国はセレスに掌握されている、と言っても過言ではない。
「ネム・エドワーズ早くワタクシの前から消えなさい。あなたにはお飾り姫の面倒があるのですから」
「はっ! 承知しました」
平常心、平常心よ。
娘のことを馬鹿にされて許せるはずもない。
しかしここで少しでも問題を起こせば、間違いなく計画はすべて水の泡となり、リーゼにまで危険が及ぶ可能性がある。
この場を早く去るとしましょうか。
「では失礼します、陛下、そして王妃様」
わたくしは大きな扉を開け、謁見の間を後にした。
なぜ、こんな奴とリーゼが仲良くしているのか? と疑問が次々と心の内から湧き出てくるようだった。
そもそも二人の出会いも知らない、詳しい関係性も知らない、リーゼがそそのかされている可能性すらあり得る。ここでわたくしが先に潰すのもアリかもしれない。
「何だ、ユーシス・メルトリー」
「はっ! リンス様とネムの戦闘をじっくりと拝見した上で言わせていただきます。最後双方倒れることなくリンス様がネムを合格にされたと思うのですが、何か深い訳でもあるのでしょうか?」
そんなユーシスの質問にリンスとラピスは堂々としながら、
「ああ、見ていた者にはあまり実感が湧かないだろう。しかしだ、あの衝撃波を受け止めた者は今までわたしが出会った中で一人しかいない。それがわたしが忠誠を誓うユリア陛下だ。まあ、わたしも驚いたよ。あの衝撃波を受け止めるならまだしも、斬り裂く者が現れるとは」
「ユーシス・メルトリー、この子の衝撃波受けてみる?」
「いえ、俺はそんなつもりで言った訳では……」
「そう、度胸のないやつ」
「な、なな、何を! ラピス様今度胸がないと仰りましたか? なら受けて立ちましょう」
しかし結果は予想通りと言うべきか、それ以上に酷い結果だった。
リンスの衝撃波を直に受けたユーシスは自身の盾でも防ぎ切れず、ショボンと落ち込んでいるようだった。
身体全体傷だらけで、おまけに手首の骨が折れるといった重症。こんな貧弱にも関わらず、度胸だけは据わっているようだった。
もっと鍛え上げたらリーゼの守護者としては申し分ないほどまでには成長するだろう、そんなわたくしの予感が当たったら良いが……さて、リーゼも喜ぶだろうからユーシスをわたくしの相棒として迎え入れるのも良いかもしれないわね。いざとなったらユーシスはリーゼを血眼になってでも守ってくれるだろうし、訓練生の他の者よりかは幾分かは信用できる。
二人が仲良くしているのだけは気に入らないが……。
――――――――
試験を終了し、無事娘の従者としての資格は手にした。しかしながら今宵は現国王であるルーデルとセレスとの謁見。
複雑な気分だ。
今まで自分が座っていた玉座にルーデルが腰掛け、その隣にはわたくしを陥れたセレスが立っているのだから。
立場が逆になるだけで、こうも気持ちが違うとは……。
いや、そんな雑念忘れてしまえ。わたくしはネム・エドワーズとして生まれ変わった。
もう娘の役にも立たないユリアはこの世に存在しない。
ここからまた新しい二人の思い出を築いて行けば良い。
だから心を落ち着かせるのよ、わたくし。
「あなたがネム・エドワーズなの?」
そうわたくしの名を聞いてきたのは、紛れもないあの性悪女のセレスだった。
「はい、そうですが……何か問題でもございましょうか?」
わたくしがそう問うとセレスは、
「いいえ、陛下の御前であるにも関わらずその兜を外さないとは、とんだ礼儀も知らない騎士が来たのだと感心しているのよ」
「失礼ながらわたくしはこの兜を着けたくて着けている訳ではありません。どうしても外せない理由があってのことです」
「なら仕方ないわね、これからあなたには出来損ないの姫、いえ失礼口が悪くて。リーゼ姫の従者としてこれからの人生を全うしていただくわ。何か異論は?」
「いえ、特には……」
先程から話しているのはセレスばかり。
ルーデルは所詮権力だけを手にしたお飾りに過ぎないということかしら。
はぁ、すでにこの国はセレスに掌握されている、と言っても過言ではない。
「ネム・エドワーズ早くワタクシの前から消えなさい。あなたにはお飾り姫の面倒があるのですから」
「はっ! 承知しました」
平常心、平常心よ。
娘のことを馬鹿にされて許せるはずもない。
しかしここで少しでも問題を起こせば、間違いなく計画はすべて水の泡となり、リーゼにまで危険が及ぶ可能性がある。
この場を早く去るとしましょうか。
「では失礼します、陛下、そして王妃様」
わたくしは大きな扉を開け、謁見の間を後にした。
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